私の推しは雑草男子

涼月

文字の大きさ
21 / 62
Step2 胡蝶蘭男子の部下になりました

ムラサキケマン②

しおりを挟む
 本当のことなんだけれど、こんなにすまなそうな顔されたら、言った私の方が罪悪感感じちゃうんですけれど……
 だから、敢えて明るい声で言ったの。

「私、陰でいいんです。それでも十分嬉しいんです」
「……欲がないな」

 今度は驚いたような顔になった高梨室長。
 でも、少し気分が上向いてくれたようで良かったわ。
 ほっと胸を撫でおろす思いで続ける。
 
「影でも、必要とされればそれだけで充分嬉しいんですよ。派遣社員は元々会社の外の人間ですから。それでもその会社の役にたてたら嬉しいですし、お仕事ってお給料だけじゃないし」
「でも、安定収入ってやっぱり必要だろ」
「そりゃそうですけど……でも、陰ってなんかカッコいいじゃないですか。歴史上の人物になったみたいで」
「なにそれ?」
「有名な歴史上の武将のところにも、ブレインがいたりするじゃないですか」
「ブレイン?」
「あ……調子に乗りました」

 今度はプッと吹き出した室長。
 あれ? 案外笑いのツボ浅いのかな?
 それに、さっきからコロコロ表情が変化して。面白い。

「ははは、まいったな」

 楽しそうに笑ってくれた高梨室長が真っ直ぐにこちらを見つめ返してきた。
 そして、私の頬にそっと手を添えてきた。

 え! えええー!

「影か……俺も欲しいな」
「え、えっと……私でよければ、なんなりとお申し付けください」

 思わずしどろもどろで返事する。

「キミって人は……ますます手放したくなくなるじゃないか」
 涼やかな瞳で見つめられたら……もう、反則だよ。
 イケメンの武器って、どうしてこう殺人的に人の心臓を破壊しそうになるのよ。

 でもでも、私の推しは『雑草男子』!
 これくらいのことでは、推し変なんてしないんですから。

 『ひなたぼっこ』さんのことを思い出したら、ちょっと落ち着くことができた。

「あ、ありがとうございます。そうおっしゃっていただけたら、派遣社員冥利につきます」

 また高梨室長がプッて笑った。
 もう、笑い過ぎ。

「派遣社員冥利って面白い。可愛いなー」

 ぬ、ぬあんですって。か、かか、可愛いですって!

 アタフタしている私を横目に見て、今度はいたずらっ子のように口角を上げた。
 

「どうだろう。君さえよければ俺の権限で社員になるように手続きしよう」

 でも、その言葉に私の心が警告音を発したの。
 甘い話には気をつけろって!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

★【完結】棘のない薔薇(作品230327)

菊池昭仁
恋愛
聡と辛い別れをした遥はその傷が癒えぬまま、学生時代のサークル仲間、光一郎と寂しさから結婚してしまい、娘の紅葉が生まれてしあわせな日々を過ごしていた。そんな時、遙の会社の取引先の商社マン、冴島と出会い、遙は恋に落ちてしまう。花を売るイタリアンレストラン『ナポリの黄昏』のスタッフたちはそんな遥をやさしく見守る。都会を漂う男と女。傷つけ傷つけられて愛が加速してゆく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

還暦妻と若い彼 継承される情熱

MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。 しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。 母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。 同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。

処理中です...