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Step2 胡蝶蘭男子の部下になりました
ムラサキケマン③
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いきなりスンと冷えた心。
今度は私の方から室長の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「ありがとうございます。でも、特別待遇は嫌です。社員になるなら、正式に手続きを踏んで社員になりたいです。この会社にその道はありますか?」
私の反撃のような答えに、高梨室長が驚いたような顔になった。
そして、また辛そうな顔になる。
「……今は無い。申し訳ない」
「別に、高梨室長のせいじゃありません。今までがそうだったというだけですよね。でも、それなら作ってください」
その言葉に、高梨室長が弾かれたような表情になった。
そして、今度は嬉しそうに笑った。
本当に、表情がコロコロ変わる人。高梨室長って、心の振れ幅が少ないイケメンかなと思っていたけれど、違ったんだわ。
また一つ、誤解が解けて、嬉しいような申し訳ないような気持ちになる。
そんな私の心の内に関係なく、高梨室長が決意するように呟いた。
「そうだな。俺もがんばって作ればいいんだ。そういうシステムを」
「はい。よろしくお願いします」
「ははは、返り討ちにあった気分だ」
「あはは、すみません」
「いや、いい。こうでなくっちゃ」
満足そうに頷いた後、ググっと一気に距離を詰めてきた室長の息が、私の右耳にふっとかかった。
あ!
思わず声を上げそうになって、慌てて口元を抑える。
くすぐったい。
「約束。俺もがんばるから、水樹さんもがんばって」
「……はい」
私の小さな声を聞いて、また楽しそうに笑った室長。颯爽とドアの向こうへと消えていった。
あ、また置いてきぼり―――
イケメンの無自覚な行動って、本当にはた迷惑だわ。
心の中で悪態をつく。
だって、胸のドキドキがなかなか治まらないんだもの。
今日も公園に行こう。こんな落ち着かない心のままじゃいられないわ。
温かな日差しにほっとする。
いつも通り『ひなたぼっこ』さんを覗きながら、変わり映えのないお弁当をパクリ。
おお! 新しい写真が上がっているわ。
何々、今日は『ムラサキケマン』?
―――今日の花は『ムラサキケマン』。花言葉は『あなたの助けになる』『助力』『喜び』
誰かのために役立てる、そのことに喜びを感じられるなんて、なんて優しいんだろう。
俺はついつい自分のことばかり考えてしまうから。
でも、できることなら、どちらか一方が助けてばかりじゃない方がいいかな。
互いに助け合える。それが一番落ち着く―――
今日もまた、心に沁みる言葉だったわ。
思わずポロリと涙がこぼれた。
なんで、こう、いつもいつも『ひなたぼっこ』さんは私の気持ちがわかるのかな。
そうなのよ。誰かの助けになることって、とっても嬉しいの。
嬉しくって、それで私の存在意義を感じることができて……だからがんばれるんだけれど。
でもね、本当は助けてあげるばっかりはつまらないんだよね。
私、ちょっと高梨室長にカッコつけちゃったの。
影でいいなんて、本当はこれっぽっちも思っていない。
本当は社員になって、私もみんなと同じ土俵に立ちたい。そうして、みんなに認めてもらいたい。
だから、社員にしてくれるって言ってくれた時、本当は凄く嬉しかったんだ。
でも、なんか意地はって、正式な仕組み作ってくださいなんて、偉そうなこと言っちゃった……
それなのに、高梨室長、怒らなかった。
むしろ、頑張るって言ってくれた。
凄く良い方だった―――
今度は私の方から室長の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「ありがとうございます。でも、特別待遇は嫌です。社員になるなら、正式に手続きを踏んで社員になりたいです。この会社にその道はありますか?」
私の反撃のような答えに、高梨室長が驚いたような顔になった。
そして、また辛そうな顔になる。
「……今は無い。申し訳ない」
「別に、高梨室長のせいじゃありません。今までがそうだったというだけですよね。でも、それなら作ってください」
その言葉に、高梨室長が弾かれたような表情になった。
そして、今度は嬉しそうに笑った。
本当に、表情がコロコロ変わる人。高梨室長って、心の振れ幅が少ないイケメンかなと思っていたけれど、違ったんだわ。
また一つ、誤解が解けて、嬉しいような申し訳ないような気持ちになる。
そんな私の心の内に関係なく、高梨室長が決意するように呟いた。
「そうだな。俺もがんばって作ればいいんだ。そういうシステムを」
「はい。よろしくお願いします」
「ははは、返り討ちにあった気分だ」
「あはは、すみません」
「いや、いい。こうでなくっちゃ」
満足そうに頷いた後、ググっと一気に距離を詰めてきた室長の息が、私の右耳にふっとかかった。
あ!
思わず声を上げそうになって、慌てて口元を抑える。
くすぐったい。
「約束。俺もがんばるから、水樹さんもがんばって」
「……はい」
私の小さな声を聞いて、また楽しそうに笑った室長。颯爽とドアの向こうへと消えていった。
あ、また置いてきぼり―――
イケメンの無自覚な行動って、本当にはた迷惑だわ。
心の中で悪態をつく。
だって、胸のドキドキがなかなか治まらないんだもの。
今日も公園に行こう。こんな落ち着かない心のままじゃいられないわ。
温かな日差しにほっとする。
いつも通り『ひなたぼっこ』さんを覗きながら、変わり映えのないお弁当をパクリ。
おお! 新しい写真が上がっているわ。
何々、今日は『ムラサキケマン』?
―――今日の花は『ムラサキケマン』。花言葉は『あなたの助けになる』『助力』『喜び』
誰かのために役立てる、そのことに喜びを感じられるなんて、なんて優しいんだろう。
俺はついつい自分のことばかり考えてしまうから。
でも、できることなら、どちらか一方が助けてばかりじゃない方がいいかな。
互いに助け合える。それが一番落ち着く―――
今日もまた、心に沁みる言葉だったわ。
思わずポロリと涙がこぼれた。
なんで、こう、いつもいつも『ひなたぼっこ』さんは私の気持ちがわかるのかな。
そうなのよ。誰かの助けになることって、とっても嬉しいの。
嬉しくって、それで私の存在意義を感じることができて……だからがんばれるんだけれど。
でもね、本当は助けてあげるばっかりはつまらないんだよね。
私、ちょっと高梨室長にカッコつけちゃったの。
影でいいなんて、本当はこれっぽっちも思っていない。
本当は社員になって、私もみんなと同じ土俵に立ちたい。そうして、みんなに認めてもらいたい。
だから、社員にしてくれるって言ってくれた時、本当は凄く嬉しかったんだ。
でも、なんか意地はって、正式な仕組み作ってくださいなんて、偉そうなこと言っちゃった……
それなのに、高梨室長、怒らなかった。
むしろ、頑張るって言ってくれた。
凄く良い方だった―――
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