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Step6 胡蝶蘭男子と約束しました
スズメノエンドウ①
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二日後の夜。怜さんの実家にて、社長とお会いすることになったの。
本当は震えるほど怖い。こんな風に乗り込んで行って、かえって悪い結末になってしまうかもしれない。社長の逆鱗に触れて、怜さんともう二度と会えなくなってしまうかもしれない。
それでも……何もしないよりはマシ。
今の私はそう思っている。
―――『スズメノエンドウ』。花言葉は『手を繋いで歩こう』『望みは大きい』。
手を繋いでいたら、心細くない。
手を繋いでいたら、どんな困難が待ち受けていても怖くない。
手を繋いでいたら、絶対に二人を離すことなんてできないから。
だから、絶対望みはある。俺はそう思っている―――
『ひなたぼっこ』さんの写真と言葉を見て、エネルギーをチャージする。
今日もありがとう!
よし! がんばるぞっ。
堀井さんの運転で、吸い込まれるように社長宅へ到着。
玄関を開ける時、怜さんが私の右手を取ったの。
「花乃ちゃん、何があってもこの手は離さないから。俺を信じて欲しい」
「怜さん、私も絶対に離しません」
怜さんの嬉しそうな顔が、私の勇気になる。
私の笑顔が怜さんの力になって欲しいから、とびきりの笑顔を見せなくちゃ。
二人で頷きあって、重い扉を押しあけた。
怜さんのお父様である高梨裕《たかなしゆう》社長は、リビングのソファにゆったりとした表情で座っていた。もっと厳しい方だと思っていたし、今日の訪問は望まれていないものだと思っていたので、ちょっと拍子抜けしてしまう。
「水樹さんですね。先日はあまりお話できなかったので、今日は来ていただいて良かったです」
怜さんと似ている穏やかな声。筋の通った鼻筋。瞳が怜さんよりも切れ長で、シルバーグレイの混ざった頭髪は年齢と威厳を感じさせるけれど。
でもやっぱり、お二人は親子なんだなとしみじみ思う。
「父さん、ご報告があります。先日の誕生パーティーの席でも紹介しましたが、俺はこの水樹花乃さんと真剣にお付き合いをしています。いずれ結婚したいと思っているので、父さんや会社が望むような、ご令嬢との結婚は受け入れられません。ご了承いただきたく……いや、ただ報告に来ただけです」
怜さんの言葉に、社長の眉がピクリとした。
「それは、こちらの水樹さんも同じ気持ちなのかね」
「はい、もちろんです」
「私は水樹さんに聞いているんだよ。怜が答える話ではない」
声に厳しさが戻っている。私の心臓が緊張で跳ね上がった。
怜さんの心配そうな視線に、あえて笑顔で答える。
「はい。私も怜さんのことが好きです。いずれ……結婚できたら嬉しいです」
社長は無言で私の瞳を射抜くように見つめてきた。
「失礼ながら色々調べさせてもらった」
「父さん、それは人権侵害だよ! 勝手に人のことを調べるなんて」
「だが、わが社は大きな企業だからな。社会に顔向けできないような事態にならないように、常に気を付けていなければいけないのだ。どんなに小さなほころびにも気を配り、事前に排除しておくことは、大切なことだ。お前もそれくらいのことは分っているだろう?」
氷のように冷たい声音で、社長が怜さんに釘をさした。
本当は震えるほど怖い。こんな風に乗り込んで行って、かえって悪い結末になってしまうかもしれない。社長の逆鱗に触れて、怜さんともう二度と会えなくなってしまうかもしれない。
それでも……何もしないよりはマシ。
今の私はそう思っている。
―――『スズメノエンドウ』。花言葉は『手を繋いで歩こう』『望みは大きい』。
手を繋いでいたら、心細くない。
手を繋いでいたら、どんな困難が待ち受けていても怖くない。
手を繋いでいたら、絶対に二人を離すことなんてできないから。
だから、絶対望みはある。俺はそう思っている―――
『ひなたぼっこ』さんの写真と言葉を見て、エネルギーをチャージする。
今日もありがとう!
よし! がんばるぞっ。
堀井さんの運転で、吸い込まれるように社長宅へ到着。
玄関を開ける時、怜さんが私の右手を取ったの。
「花乃ちゃん、何があってもこの手は離さないから。俺を信じて欲しい」
「怜さん、私も絶対に離しません」
怜さんの嬉しそうな顔が、私の勇気になる。
私の笑顔が怜さんの力になって欲しいから、とびきりの笑顔を見せなくちゃ。
二人で頷きあって、重い扉を押しあけた。
怜さんのお父様である高梨裕《たかなしゆう》社長は、リビングのソファにゆったりとした表情で座っていた。もっと厳しい方だと思っていたし、今日の訪問は望まれていないものだと思っていたので、ちょっと拍子抜けしてしまう。
「水樹さんですね。先日はあまりお話できなかったので、今日は来ていただいて良かったです」
怜さんと似ている穏やかな声。筋の通った鼻筋。瞳が怜さんよりも切れ長で、シルバーグレイの混ざった頭髪は年齢と威厳を感じさせるけれど。
でもやっぱり、お二人は親子なんだなとしみじみ思う。
「父さん、ご報告があります。先日の誕生パーティーの席でも紹介しましたが、俺はこの水樹花乃さんと真剣にお付き合いをしています。いずれ結婚したいと思っているので、父さんや会社が望むような、ご令嬢との結婚は受け入れられません。ご了承いただきたく……いや、ただ報告に来ただけです」
怜さんの言葉に、社長の眉がピクリとした。
「それは、こちらの水樹さんも同じ気持ちなのかね」
「はい、もちろんです」
「私は水樹さんに聞いているんだよ。怜が答える話ではない」
声に厳しさが戻っている。私の心臓が緊張で跳ね上がった。
怜さんの心配そうな視線に、あえて笑顔で答える。
「はい。私も怜さんのことが好きです。いずれ……結婚できたら嬉しいです」
社長は無言で私の瞳を射抜くように見つめてきた。
「失礼ながら色々調べさせてもらった」
「父さん、それは人権侵害だよ! 勝手に人のことを調べるなんて」
「だが、わが社は大きな企業だからな。社会に顔向けできないような事態にならないように、常に気を付けていなければいけないのだ。どんなに小さなほころびにも気を配り、事前に排除しておくことは、大切なことだ。お前もそれくらいのことは分っているだろう?」
氷のように冷たい声音で、社長が怜さんに釘をさした。
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