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「お雪!大地!2人とも無事だったのか?」
殺されたはずのお雪と行方不明の息子大地が鬼の傍に座っていた。
彼らは男の顔を見ると弾かれた様に立ち上がり駆け寄った。
「忠恭様!」「父上!」
しかし、男は2人を抱きしめたい衝動を抑え
こちらに向き座っている鬼に語りかけた。
「貴方方が助けてくれたのですか?
お雪は死んだはず…。それともこれは幻覚?」
男は深妙な顔をして鬼を見た。
鬼達もまた男の顔を見た。
鬼はその言葉を否定せず、首を盾に振った。
「そう…幻覚に等しい。」
「この怒塚山に迷い込んで来た傷ついた童を我らが見つけ保護した。
それが大地だった。
大地は今、怒塚山の鬼の里にいる。
我らが大地を保護した時にはお雪さんは既に殺されいた。
今、招魂の儀で魂を呼び寄せているに過ぎない。」
「だから、あんたもお雪さんも大地も魂は本物だが、幻覚に等しい。
今、人は寝る時間だろ?」
男の側に立ち尽くしたお雪は泣き崩れ、大地は悲痛な顔をした。
「忠恭様…うっ…うう…。」
涙に濡れたぐちゃぐちゃな顔のお雪と大地
男はお雪の頬を手で包み涙を拭うと大地を引き寄せ2人を抱きしめた。
「…お雪…。大地…。すまない。私が守ってやれなかった…。」
「ううっ…も申し訳ございません。
だ…大地を逃がすことしか、出来ませんでした。」
「父上…お…私が、弱くて母さんを守れなかった…ま…守れなかった…。」
抱きしめた温もりが嘘だとは思えない程しっかり熱を感じているのに…。
もしかしたら鬼が嘘をついているかも知れない
そう思っていた。
疑いの念が消え去る。
男は力を込め2人を抱きしめた。
「いや…良いのだ。大地が生きていると知れただけでも
しかし、どうしてこうなったのだ?
なぜ、そなた等は、少人数で城を出た?」
「…近く戦が有るやも知れぬ、忠恭様がご出陣されると聞き…。
ご無事を祈るため
大地を連れ御忍びで城の近くの寺社へお参りしに行ったのです。
2人で一つの籠を使いました。
しばらくは気にもせず2人でおしゃべりをしていたのですが
籠は何故か近いはずの寺社に一向に着かず
そればかりか、城からどんどん遠くへと運ばれ
様子がおかしいと思った時は既に私達は人気のない場所に
お共をしてくれた者も襲われましたが…。
彼らの中に「約束が違う奴らだけ殺すはずだったろう! 」
と喚いていた者が数名おりました。
私達を謀った彼らも騙され殺された様でした。
城を出てお参りに行く事を知っていたのは
極僅かな者達だけでした。」
「謀られたな!戦など無い!誰から聞いた?」
「……。」
お雪は言葉を濁した。
「どうせあの女だろう…。絶対に許さん!」
「しかし、何の証拠も…。」
「大丈夫だ、証拠は何としてでもこちらで探す!探し出してみせる!」
会話を黙って聞いていた鬼が
「すまぬが…我等は人の政には口を挟まぬ。
「ただ大地を今、城に返して大丈夫かどうかだけが気になる。」
沈痛な面持ちで男は言った。
「…いや、今は危ない…。2人は毒を盛られた事が何度か有る。
毒に詳しく、いつも事前に助けてくれていた者も
お雪と一緒に死んでいた。」
「短い間なら我らの元で匿う事が出来る。ただし条件が一つある」
「何と!本当ですか?条件…とは?」
「大地には法力と剣を教える。ここの暮らしにおいて
少なからず妖魔と付き合わなければならない。
自分の身を守れるだけの力を持って貰わねばならん。」
「それは…むしろお願いしたいくらいです。」
「まぁ、ざっと100年くらい修行したら空も飛べるまでになるよなぁ?」
「おいおい天河…。100年ともなれば童も爺さんになってるか死んでると思うが…。
母と仇を討つと言うなら5~10年くらいでいいんじゃないか?」
「大地を早々に迎えに来れる様尽力します。」
「父上、私も必ず力を付け、父上の元へ帰ります。」
「では、大地は我らの元でしばらく暮らし力をつける。
貴殿は女狐とやらの尻尾を掴んだなら我らに連絡をつけてくれ。
この羽を持たせる。月明かりの浮かぶ水の中へ浮かべるが良い
迎えを寄こそう。」
「我々の話は終わった。
我々は隣にいる。夜が明けるまでの間親子で過ごされるが良かろう。」
そう言うと2人の鬼は部屋から出て行った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
薄明かりの中
来た時同様に烏の背に乗り家路につくのかと思っていたが
お雪と大地と語り明かし
暁の光が窓から差し込み始めた。
男は強い眠気を覚える。
薄れゆく意識の中お雪と大地にしばしの別れを伝えた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
空も飛べられる…か…。
母と共に命を失っていたかも知れないと思っていた息子
鬼に育てられる運命を持つとは、強運としか言いようがないかも知れない。
目が覚めると布団の中、枕元には
お雪の簪と鬼に渡された銀色の羽が置いてあった。
殺されたはずのお雪と行方不明の息子大地が鬼の傍に座っていた。
彼らは男の顔を見ると弾かれた様に立ち上がり駆け寄った。
「忠恭様!」「父上!」
しかし、男は2人を抱きしめたい衝動を抑え
こちらに向き座っている鬼に語りかけた。
「貴方方が助けてくれたのですか?
お雪は死んだはず…。それともこれは幻覚?」
男は深妙な顔をして鬼を見た。
鬼達もまた男の顔を見た。
鬼はその言葉を否定せず、首を盾に振った。
「そう…幻覚に等しい。」
「この怒塚山に迷い込んで来た傷ついた童を我らが見つけ保護した。
それが大地だった。
大地は今、怒塚山の鬼の里にいる。
我らが大地を保護した時にはお雪さんは既に殺されいた。
今、招魂の儀で魂を呼び寄せているに過ぎない。」
「だから、あんたもお雪さんも大地も魂は本物だが、幻覚に等しい。
今、人は寝る時間だろ?」
男の側に立ち尽くしたお雪は泣き崩れ、大地は悲痛な顔をした。
「忠恭様…うっ…うう…。」
涙に濡れたぐちゃぐちゃな顔のお雪と大地
男はお雪の頬を手で包み涙を拭うと大地を引き寄せ2人を抱きしめた。
「…お雪…。大地…。すまない。私が守ってやれなかった…。」
「ううっ…も申し訳ございません。
だ…大地を逃がすことしか、出来ませんでした。」
「父上…お…私が、弱くて母さんを守れなかった…ま…守れなかった…。」
抱きしめた温もりが嘘だとは思えない程しっかり熱を感じているのに…。
もしかしたら鬼が嘘をついているかも知れない
そう思っていた。
疑いの念が消え去る。
男は力を込め2人を抱きしめた。
「いや…良いのだ。大地が生きていると知れただけでも
しかし、どうしてこうなったのだ?
なぜ、そなた等は、少人数で城を出た?」
「…近く戦が有るやも知れぬ、忠恭様がご出陣されると聞き…。
ご無事を祈るため
大地を連れ御忍びで城の近くの寺社へお参りしに行ったのです。
2人で一つの籠を使いました。
しばらくは気にもせず2人でおしゃべりをしていたのですが
籠は何故か近いはずの寺社に一向に着かず
そればかりか、城からどんどん遠くへと運ばれ
様子がおかしいと思った時は既に私達は人気のない場所に
お共をしてくれた者も襲われましたが…。
彼らの中に「約束が違う奴らだけ殺すはずだったろう! 」
と喚いていた者が数名おりました。
私達を謀った彼らも騙され殺された様でした。
城を出てお参りに行く事を知っていたのは
極僅かな者達だけでした。」
「謀られたな!戦など無い!誰から聞いた?」
「……。」
お雪は言葉を濁した。
「どうせあの女だろう…。絶対に許さん!」
「しかし、何の証拠も…。」
「大丈夫だ、証拠は何としてでもこちらで探す!探し出してみせる!」
会話を黙って聞いていた鬼が
「すまぬが…我等は人の政には口を挟まぬ。
「ただ大地を今、城に返して大丈夫かどうかだけが気になる。」
沈痛な面持ちで男は言った。
「…いや、今は危ない…。2人は毒を盛られた事が何度か有る。
毒に詳しく、いつも事前に助けてくれていた者も
お雪と一緒に死んでいた。」
「短い間なら我らの元で匿う事が出来る。ただし条件が一つある」
「何と!本当ですか?条件…とは?」
「大地には法力と剣を教える。ここの暮らしにおいて
少なからず妖魔と付き合わなければならない。
自分の身を守れるだけの力を持って貰わねばならん。」
「それは…むしろお願いしたいくらいです。」
「まぁ、ざっと100年くらい修行したら空も飛べるまでになるよなぁ?」
「おいおい天河…。100年ともなれば童も爺さんになってるか死んでると思うが…。
母と仇を討つと言うなら5~10年くらいでいいんじゃないか?」
「大地を早々に迎えに来れる様尽力します。」
「父上、私も必ず力を付け、父上の元へ帰ります。」
「では、大地は我らの元でしばらく暮らし力をつける。
貴殿は女狐とやらの尻尾を掴んだなら我らに連絡をつけてくれ。
この羽を持たせる。月明かりの浮かぶ水の中へ浮かべるが良い
迎えを寄こそう。」
「我々の話は終わった。
我々は隣にいる。夜が明けるまでの間親子で過ごされるが良かろう。」
そう言うと2人の鬼は部屋から出て行った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
薄明かりの中
来た時同様に烏の背に乗り家路につくのかと思っていたが
お雪と大地と語り明かし
暁の光が窓から差し込み始めた。
男は強い眠気を覚える。
薄れゆく意識の中お雪と大地にしばしの別れを伝えた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
空も飛べられる…か…。
母と共に命を失っていたかも知れないと思っていた息子
鬼に育てられる運命を持つとは、強運としか言いようがないかも知れない。
目が覚めると布団の中、枕元には
お雪の簪と鬼に渡された銀色の羽が置いてあった。
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