猫屋敷先輩の怪奇奇譚

MOKO

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夏休みに入ってすぐ
図書委員会の、集まりがあった。

風邪をこじらせてたとかで
幼なじみで親友の同級生
吉田が休んだ。

委員会の課題
図書だよりの原稿と、
夏休み明けにある文化祭準備として
栞の制作、これは個人のノルマがあって
その資料と材料を渡すってことで
同中おなちゅうで親友の僕が吉田の家に持って行くお使いを
たのまれた。

まぁ少し遠回りだけど、しゃーない。

吉田の分のノルマ
もしも吉田に渡せなかったら
次の集まりまでに
自分が作っといてって言われたし

そんなのめんどくさい
もちろん
これから帰りに寄って渡すのが1番楽だ

ついでにお見舞いも
兼ねて様子みてくるか


きっと帰宅する頃は日が落ちてるなぁ。


冷房の効いた図書室を出て
うだった蒸し暑さに襲われうんざりしたところ

猫屋敷先輩に肩をぽんぽんと叩かれた。


「あ、猫屋敷先輩、お疲れ様っす。」

慌てて挨拶する

「ちょっといいかな?」

肩を叩かれるまで気が付かなかったけど

猫屋敷先輩がずっと僕の後ろに付いてき
ていた様だ。

相変わらず存在感が無いというか
気配が無いというか
ほんとに影が薄い….。

「今日、これから吉田くんの所に行くんだよね? 僕もついて行くよ。」


はっ?


思っきり顔に出たかも知れない

怪訝な顔



なんだ?





先輩と吉田との個人的な接点が
思いつかない

そんな親しい訳でもないはずなのに
僕についてくる理由を聞いてみたい


「吉田になんか用あるんですか?」

「いや、ちょっと、うん...あるんだ。」

猫屋敷先輩は明らかに挙動不審で、渡したい物があるのだとかなんとか…。

代わりに僕が渡しときますよって言ったけど
モゴモゴと口ごもるだけで、明確な理由は聞けなかった。


さすがに吉田ん家に本人に確認せず連れてくって
個人情報になるので、ちょっと

「急だと吉田も困るんじゃないですか?」

って言ったら、

「吉田くんには、これから行くって
SMで連絡してるから大丈夫。」

だと言われた。

断る理由が消滅した。



…解せぬ





どうしても自分で渡したい物があって

取り扱いに注意が必要だから

吉田に説明しときたいんだそうだ。


いや、普通に今体調不良な吉田に
説明なんて出来んだろ…。


そう思ったが

それでも
渡すのは早い方が良いからって
大きな紙袋を見せてくれた。

中身が気になる…。生物なまもの


まぁ、仕方ないので
とりあえず一緒に電車に乗る事にした。

電車の待ち時間にコンビニでお見舞いのスポーツドリンクや、ゼリーなんかを買った。

吉田の家へ道中の会話といえば

「今日は少し蒸し暑いですね….。」

「そうだね。」

のみ


なんにも話す事は
ないっちゃないけど
気まずいな

ホントよく分からんなぁ。


電車の中で男2人はひたすら寡黙
普段の猫屋敷先輩はあまりにも影が薄いから
うっかり存在すら忘れてしまいそうなのに、
気になるってしょうがない
もんもんと考えてたら 先輩が


「次だよね駅を降りるの?」

「えっええ、はい。」

危うく降りそびれるところだった。


先輩は大事そうに紙袋を胸に抱いて

電車を降りた。








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