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番外編1
しおりを挟む「ママ~~!!」
可愛い男の子が女性に抱きつく。
「ノルエ、危ないから走っちゃダメよ?」
女性はそう言って、男の子の頭を撫でた。
愛しい人に似た漆黒の髪に、自分の瞳と同じ琥珀色の瞳を持つこの男の子は、エレナとハルトの愛の結晶である。
結婚式を挙げてから10日間、ハルトとエレナは寝室にずっと篭った。
正直言って、凄かったです。でも……全身でハルトの愛を感じることができた。
そして、エレナは無事にハルトの子供を身篭った。
元々竜族は、子供ができにくい体質らしいのだが、僅か10日間でできてしまうとは……これこそ運命というものなのだろうか?
「ノルエ、私のエレナを独り占めするな。お前は、庭で遊んでいなさい」
……どうしてこうなるのかしら?
父親であるハルトが、エレナに抱きつこうとするノルエの首根っこを掴まえ威嚇している。
「む~~~~っ!! 僕もママに触りたい!!」
興奮した所為でノルエの姿が人型から竜へと変化した。竜といってもまだ幼い子供なので、幼児と同じくらいの大きさである。
「ハルト、ノルエをいじめちゃダメ」
エレナはそう言って、ノルエの体をそっと抱き上げる。
「僕、ママの匂いが大好きっ!!」
ノルエはそう言って、エレナの首に手を回してギュッと抱きつく。
「ふふ、私もノルエのことが大好きよ」
「……パパよりも?」
ノルエがそう口にした瞬間、ハルトから殺気が放たれた。
「ハルトもノルエも同じくらい大好きよ。でも……」
エレナは一度言葉を切って、ハルトをじっと見つめる。
「ママにとっての王子様はパパなの。ママを救ってくれた人、それがあなたのパパよ。だから、ノルエもパパみたいな素敵な王子様になってね?」
「うん!! パパを越すぐらい、素敵な王子様になるね!」
満面な笑みを浮かべるノルエの頬に、エレナは口付けを落とした。
いつか……そう、遠くない未来、ノルエは自分の下から飛び立っていくことだろう。それがとても楽しみに思うと同時に、寂しい気持ちになる。
「……ママ、目からお水が出てるよ?」
遠くない未来を想像していたエレナの頬を涙が伝う。
「ノルエ、ごめんなさい。なんでもないわ」
息子の目の前では強い母をいたい。それなのに、涙が止まらない。
「エレナは俺が慰める。ノルエはお庭で遊んでおいで」
「うん、分かった。ここはパパに任せる!!」
ノルエはそう言って、お庭に勢いよく走っていく。それを見送ったハルトが、エレナの身体をそっと抱きしめる。
「エレナ、何を恐れている?」
ハルトがエレナに優しく問いかける。
「……ごめんなさい。私、怖いの。また大切な人を失うんじゃないかって……」
とうとうエレナの涙腺が崩壊する。
記憶に刻まれたエレナのトラウマ。
記憶は、死ぬまでずっとエレナに付き纏う。
「そうか……でも、俺が生きている限り、そんなことはさせない。エレナの敵は、俺の敵でもある。エレナを苦しめる奴は、誰でも許さない」
エレナに向けるハルトの愛は、狂気に近い。エレナはそれが心地良いと思ってしまう。自分の頭もかなり狂っていると思う。
「ありがとう……、それと愛してる」
エレナがそう言うと、ハルトの目元が緩んだ。
「俺も愛してる」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
短くてすみません!!
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ご指摘、ありがとうございます!
早速訂正させていただきました!