19 / 43
15話
しおりを挟む無事に王城まで到着することができました。
やっとである。危うく精神ライフが0になることころでした。
あと、ルージャの件で一悶着がありました(駄犬のくせに……。byルイ王子)
なんせルージャは、あれでも神獣様。
神獣様って、とても神秘的な存在なんですって。あれですよ、神出鬼没って奴。出会えたら超ラッキーって感じ。
ここ数百年、目撃されていなかったらしく、そんな神獣様が一国の少年の契約獣となったものだから、国の重臣達もびっくり仰天。
ルイ王子のお父上である国王陛下は、レオン君曰く「ルイ、よくやった。流石私の自慢の息子だ」とキラキラの笑みを浮かべ、親指を立てていたそうです。
とてもいいお父様ですね。
で、王城では変な話が飛び交っていました。
「第一王子のルイ殿下が行方不明になった今、第二王子のハルス王子を次の国王に……」といった話です。
行方不明になっていたといっても、一日~二日です。
そんな話になりますか? そんな暇あるなら探せよ、と思わず突っ込んでしまいました。
「やはり、あの女が動いたか……」
ルイ王子がボソリと呟く。
「あの女?」
私がそう問いかけると、ルイ王子はどこか渋い顔をした。
梅干しでも食べてしまったのだろうか?
「な、なんでもないよ、ユウリ」
慌てて顔を逸らすルイ王子。
多分話したくないことなんだと思う。
悠理は、ルイ王子の心をすぐに察した。
人は誰でも一つや二つ、話したくないことがある。悠理も同じだ。踏み込まれたくない話がたくさんある。
だから、悠理は聞かなかったことにする。
それが一番の最善策だと思うから……。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「あ、ユウリ。今日から一週間後、ルージャのお披露目会が開かれることになったんだ。そのとき、ユウリは私のパートナーとして出席して貰えるかな?」
「ブフッ!?」
お茶を優雅に飲んでいた悠理に、ルイ王子が言葉の爆弾を投げ込む。
おかげで悠理は飲んでいたお茶を吹き出してしまった。牛乳瓶眼鏡もビショビショだ。
悠理は、近くのナフキンを手に取り、眼鏡を外す。度は入っていないので、牛乳瓶眼鏡を外しても生活に支障はない。
あー、前髪までビショビショだ。まるでワカメ……。
「ユウリ、ごめんね。顔もビショビショになってる」
ルイ王子はそう言い、自分のナフキンを手にした。そして、悠理の前に跪き、ナフキンをそっと悠理の顔に近づける。
「ル、ルイッ!? 私、汚い!」
慌てふためく悠理を無視して、ルイ王子は悠理の濡れた前髪をかき分けた。
「え……」
ルイ王子の口から戸惑いの声が漏れる。
「わ、分かってるから! 自分がブスなことぐらい!!」
悠理はルイの王子の胸を力一杯押し返す。
美形家族の中で、一人だけ異質な自分。
悠理はずっと自分に問いかけてきた。
どうして自分だけが醜いのだろう、と。
「お願い…見ないで。私に、触らないで……」
悠理は自分の醜い顔をルイ王子に見られたくなくて、両手で顔を覆った。
ルイ王子は、相手に触れることで、その相手の考えや気持ちを読み取ることができる。
だから、悠理は知られたくなかった。自分の身に巣食うこの醜い思いを……。
「……ユウリ」
ルイ王子が優しく悠理に呼びかける。
「いや……」
悠理は、イヤイヤと首を横に振った。
「ユウリ、どうして隠すの?」
「──にくいから……」
悠理はボソリと呟いた。
「え? ごめん、よく聞こえなかった」
「醜いからッ!! 私は醜いの!」
悠理はそう言って、顔を覆っていた自分の手を外した。
これで全てが終わりになる。
……ルイ王子は自分から離れていくかもしれない。
どうしてこんなにも心が痛いのだろう。もう慣れたことではないか……人が自分から離れていくことなど……。
「ユウリは、とても綺麗だ」
「そんなの分かって……え?」
悠理は自分の耳を疑った。
「ユウリは、綺麗だよ。私がびっくりするぐらい……」
ルイ王子は、悠理の頬に自分の手を沿わせた。
「……お世辞でも、ありがとう」
ルイ王子は優しい。
そんなルイ王子に、自分は一体何を期待しているのだろう?
同情? 哀れみ? そんなのじゃない。
私はルイ王子と……。
言葉にするのも烏滸がましい。
「ユウリ、オセジって何?」
「……え?」
はて、この人は何を言っているのだろう?
「ルイ、冗談はよして。自分のことぐらい、自分が一番分かっているわ」
悠理は、頬に添えられたルイ王子の手に自分の手を重ねた。これで最後になるかもしれない。だから、今のうちにルイ王子にたくさん触れておこうと思ったのだ。
「ふふ、ユウリは可笑しなことを言うね。私はいつも本気だよ」
ルイ王子の目が怪しく光った。人を惹きつけて止まないその瞳が、悠理に向けられる。それだけで、動悸が早まった。
「ユウリ、顔を上げて」
ルイ王子は優しくそう促す。これはお願いではない、いわば命令である。悠理はルイ王子の言葉に逆らうことができない。
意を決して、目の前の彼を見つめた。すると、優しい口付けが悠理の涙で濡れた頬に落とされる。
「や、やめて……」
どうしよう。ルイ王子にバレてしまう。一時でもルイ王子の側にいたいと願ってしまった、自分勝手な願いが……。
「私はずっと自分の力が嫌で嫌で堪らなかった……でも、今は違う。ユウリに触れるだけで、ユウリの考えや気持ちが分かるのだから。相手の考えや気持ちが分かると、とても安心するんだ。だから、私はこれから包み隠さず、ユウリに自分の考えや気持ちを話していくことを誓おう」
悠理の手の甲に口付けを落としながら、ルイ王子はそう告げた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
やっと女同士の、血で血を洗うバトルへと突入します(近いけど、嘘です。悠理の一人勝ちです)。
そろそろ、ルイ王子の視点を入れておきたいと思います。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
1,962
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる