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15話

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 無事に王城まで到着することができました。

 やっとである。危うく精神メンタルライフが0ゼロになることころでした。

 あと、ルージャの件で一悶着がありました(駄犬のくせに……。byルイ王子)

 なんせルージャは、あれでも神獣様。

 神獣様って、とても神秘的な存在なんですって。あれですよ、神出鬼没って奴。出会えたら超ラッキーって感じ。

 ここ数百年、目撃されていなかったらしく、そんな神獣様が一国の少年の契約獣となったものだから、国の重臣達もびっくり仰天。
 ルイ王子のお父上である国王陛下は、レオン君曰く「ルイ、よくやった。流石私の自慢の息子だ」とキラキラの笑みを浮かべ、親指を立てていたそうです。

 とてもいいお父様ですね。

 で、王城では変な話が飛び交っていました。

「第一王子のルイ殿下が行方不明になった今、第二王子のハルス王子を次の国王に……」といった話です。
 行方不明になっていたといっても、一日~二日です。

 そんな話になりますか? そんな暇あるなら探せよ、と思わず突っ込んでしまいました。

「やはり、あの女が動いたか……」

 ルイ王子がボソリと呟く。

「あの女?」

 私がそう問いかけると、ルイ王子はどこか渋い顔をした。

 梅干しでも食べてしまったのだろうか?

「な、なんでもないよ、ユウリ」

 慌てて顔を逸らすルイ王子。

 多分話したくないことなんだと思う。

 悠理は、ルイ王子の心をすぐに察した。
 人は誰でも一つや二つ、話したくないことがある。悠理も同じだ。踏み込まれたくない話がたくさんある。
 だから、悠理は聞かなかったことにする。
 それが一番の最善策だと思うから……。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「あ、ユウリ。今日から一週間後、ルージャのお披露目会が開かれることになったんだ。そのとき、ユウリは私のパートナーとして出席して貰えるかな?」

「ブフッ!?」

 お茶を優雅に・・・飲んでいた悠理に、ルイ王子が言葉の爆弾を投げ込む。
 おかげで悠理は飲んでいたお茶を吹き出してしまった。牛乳瓶眼鏡もビショビショだ。
 悠理は、近くのナフキンを手に取り、眼鏡を外す。度は入っていないので、牛乳瓶眼鏡を外しても生活に支障はない。
 あー、前髪までビショビショだ。まるでワカメ……。

「ユウリ、ごめんね。顔もビショビショになってる」

 ルイ王子はそう言い、自分のナフキンを手にした。そして、悠理の前に跪き、ナフキンをそっと悠理の顔に近づける。

「ル、ルイッ!? 私、汚い!」

 慌てふためく悠理を無視して、ルイ王子は悠理の濡れた前髪をかき分けた。

「え……」

 ルイ王子の口から戸惑いの声が漏れる。

「わ、分かってるから! 自分がブスなことぐらい!!」

 悠理はルイの王子の胸を力一杯押し返す。

 美形家族の中で、一人だけ異質な自分。

 悠理はずっと自分に問いかけてきた。

 どうして自分だけが醜いのだろう、と。

「お願い…見ないで。私に、触らないで……」

 悠理は自分の醜い顔をルイ王子に見られたくなくて、両手で顔を覆った。
 ルイ王子は、相手に触れることで、その相手の考えや気持ちを読み取ることができる。
 だから、悠理は知られたくなかった。自分の身に巣食うこの醜い思いを……。

「……ユウリ」

 ルイ王子が優しく悠理に呼びかける。

「いや……」

 悠理は、イヤイヤと首を横に振った。

「ユウリ、どうして隠すの?」

「──にくいから……」

 悠理はボソリと呟いた。

「え? ごめん、よく聞こえなかった」

「醜いからッ!! 私は醜いの!」

 悠理はそう言って、顔を覆っていた自分の手を外した。

 これで全てが終わりになる。

 ……ルイ王子は自分から離れていくかもしれない。

 どうしてこんなにも心が痛いのだろう。もう慣れたことではないか……人が自分から離れていくことなど……。

「ユウリは、とても綺麗だ」

「そんなの分かって……え?」

 悠理は自分の耳を疑った。

「ユウリは、綺麗だよ。私がびっくりするぐらい……」

 ルイ王子は、悠理の頬に自分の手を沿わせた。

「……お世辞でも、ありがとう」

 ルイ王子は優しい。

 そんなルイ王子に、自分は一体何を期待しているのだろう? 

 同情? 哀れみ? そんなのじゃない。
 私はルイ王子と……。
 言葉にするのも烏滸がましい。

「ユウリ、オセジって何?」

「……え?」

 はて、この人は何を言っているのだろう?

「ルイ、冗談はよして。自分のことぐらい、自分が一番分かっているわ」

 悠理は、頬に添えられたルイ王子の手に自分の手を重ねた。これで最後になるかもしれない。だから、今のうちにルイ王子にたくさん触れておこうと思ったのだ。

「ふふ、ユウリは可笑しなことを言うね。私はいつも本気だよ」

 ルイ王子の目が怪しく光った。人を惹きつけて止まないその瞳が、悠理に向けられる。それだけで、動悸が早まった。

「ユウリ、顔を上げて」

 ルイ王子は優しくそう促す。これはお願いではない、いわば命令である。悠理はルイ王子の言葉に逆らうことができない。

 意を決して、目の前の彼を見つめた。すると、優しい口付けが悠理の涙で濡れた頬に落とされる。

「や、やめて……」

 どうしよう。ルイ王子にバレてしまう。一時でもルイ王子の側にいたいと願ってしまった、自分勝手な願いが……。

「私はずっと自分の力が嫌で嫌で堪らなかった……でも、今は違う。ユウリに触れるだけで、ユウリの考えや気持ちが分かるのだから。相手の考えや気持ちが分かると、とても安心するんだ。だから、私はこれから包み隠さず、ユウリに自分の考えや気持ちを話していくことを誓おう」

 悠理の手の甲に口付けを落としながら、ルイ王子はそう告げた。


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 やっと女同士の、血で血を洗うバトルへと突入します(近いけど、嘘です。悠理の一人勝ちです)。
 そろそろ、ルイ王子の視点を入れておきたいと思います。
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