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第19章:母親
15話
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『気にしちゃだめよ』
「古々さん、いたんですか?」
階段を上る途中で話しかけられて真由美は驚き、声のほうに向き直る。
「あんまり響かないみたいですね、私の言葉」
『大人になったらみんなそんなもんよ。言葉だけで変わるなら、あんなに苦しんでいない……まぁ、なんだ。あなたの言う通り、これでカウンセリングにでも真面目に通って、性格というか、心の病を治せば幸せになれるかもしれないけれど』
「やっぱり、心の病なんですか?」
『表現しづらいけれど、あれは……人を全く信用できない感じ。自分のことすら信じていないし、自分がすがれる価値観がないから、自分が幸せなのかすらよくわかっていない』
「でも、お金だったら別に……風俗で稼げばいいわけですし、今回は裕也先輩を求めてきたって感じだと考えると、あの人が満たされないのは、寂しいのが原因なのでは?」
『一口に寂しいと言っても、求められる関係性は違う。例えばそれは親子かもしれないし、友達かもしれないし、主従かもしれないし、恋人かもしれないし、夫婦かもしれない。優菜は……どんな関係性を望んでいるのか、それすら自分でよくわかっていないんじゃないかな? わかったとしても、そういう関係性を築くことはきっとできない。まぁ、手遅れだと思うよ、普通に』
「じゃあ、私が声をかけたのは、無駄だったんですかね?」
『無駄でもいいじゃない。そんな何日も何ヶ月も時間をかけて説得しようとしたわけじゃない。この程度の無駄なら、可愛いものでしょ? それでも、言わなかったら後悔したかもしれないんだから』
「……そうですね」
身も蓋もない古々の言葉に、真由美はくすっと笑う。
社務所に戻ってみると、結局一切手を付けられなかった茶菓子を裕也が無言で食べている。少し様子がおかしいあたり、彼にも思うところがあったらしい。
「……俺も、祖父と祖母に会ったことがある。母方の両親だな……父方のほうはまず父親自体が誰だかわからないから、当然祖父母もわからなくてさ」
戻ってきた真由美を見て裕也は目も合わせずに語りだす。
「表情、匂い、体型、服装。何をどう見ても、本能的にかかわりたくないやつだって感じた……自分の娘が逮捕されたっていうのに、その身も案じずに俺のことを疎ましく思っているだけでさ。まぁ、なんだ……こいつに引き取られたら、今と同じかそれ以上にやばいんじゃないかっていうのは肌で感じるような奴だった」
「初めて聞く話ね。具体的にどんな匂いだったの?」
「タバコと酒と、風呂に入っていない匂いだよ。俺のことも、まるで蠅でもみるかのような目で……まぁ、アレに育てられた母親がまともに育たないってのはよくわかる……母親も被害者なんだ。母親はきっと……明日香に出会えなかった俺の未来の姿なのかもしれない」
裕也がため息をつく。
「古々さん、いたんですか?」
階段を上る途中で話しかけられて真由美は驚き、声のほうに向き直る。
「あんまり響かないみたいですね、私の言葉」
『大人になったらみんなそんなもんよ。言葉だけで変わるなら、あんなに苦しんでいない……まぁ、なんだ。あなたの言う通り、これでカウンセリングにでも真面目に通って、性格というか、心の病を治せば幸せになれるかもしれないけれど』
「やっぱり、心の病なんですか?」
『表現しづらいけれど、あれは……人を全く信用できない感じ。自分のことすら信じていないし、自分がすがれる価値観がないから、自分が幸せなのかすらよくわかっていない』
「でも、お金だったら別に……風俗で稼げばいいわけですし、今回は裕也先輩を求めてきたって感じだと考えると、あの人が満たされないのは、寂しいのが原因なのでは?」
『一口に寂しいと言っても、求められる関係性は違う。例えばそれは親子かもしれないし、友達かもしれないし、主従かもしれないし、恋人かもしれないし、夫婦かもしれない。優菜は……どんな関係性を望んでいるのか、それすら自分でよくわかっていないんじゃないかな? わかったとしても、そういう関係性を築くことはきっとできない。まぁ、手遅れだと思うよ、普通に』
「じゃあ、私が声をかけたのは、無駄だったんですかね?」
『無駄でもいいじゃない。そんな何日も何ヶ月も時間をかけて説得しようとしたわけじゃない。この程度の無駄なら、可愛いものでしょ? それでも、言わなかったら後悔したかもしれないんだから』
「……そうですね」
身も蓋もない古々の言葉に、真由美はくすっと笑う。
社務所に戻ってみると、結局一切手を付けられなかった茶菓子を裕也が無言で食べている。少し様子がおかしいあたり、彼にも思うところがあったらしい。
「……俺も、祖父と祖母に会ったことがある。母方の両親だな……父方のほうはまず父親自体が誰だかわからないから、当然祖父母もわからなくてさ」
戻ってきた真由美を見て裕也は目も合わせずに語りだす。
「表情、匂い、体型、服装。何をどう見ても、本能的にかかわりたくないやつだって感じた……自分の娘が逮捕されたっていうのに、その身も案じずに俺のことを疎ましく思っているだけでさ。まぁ、なんだ……こいつに引き取られたら、今と同じかそれ以上にやばいんじゃないかっていうのは肌で感じるような奴だった」
「初めて聞く話ね。具体的にどんな匂いだったの?」
「タバコと酒と、風呂に入っていない匂いだよ。俺のことも、まるで蠅でもみるかのような目で……まぁ、アレに育てられた母親がまともに育たないってのはよくわかる……母親も被害者なんだ。母親はきっと……明日香に出会えなかった俺の未来の姿なのかもしれない」
裕也がため息をつく。
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