オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしの笑顔と恐怖

なかじまあゆこ

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泊まりがけの同窓会とオレンジ色

オレンジ、オレンジ

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  オレンジ、オレンジ、オレンジ色の提灯がわたしを追いかけてくる。逃げても無駄だよと言わんばかりに。

  わたしはこれまでのことを思い出す。

  最初は夢を見た。オレンジ色の提灯に明かりが灯る定食屋でわたしは包丁を握りしめていた。その包丁からぽたり、ぽたり、ぽたりと血が滴り落ちる。そんな夢を……。

  それから真由香が店先にオレンジ色の提灯が吊るされオレンジ色の暖簾がかけられている定食屋のチラシを見せてきた。

  そして、このコテージのこの部屋にオレンジ色の提灯キーホルダーが落ちていた。

  そのオレンジ色の提灯キーホルダーを床に投げ捨てたが部屋に戻ってくると木製のテーブルの上に置かれていた。


  お土産屋では多香子のオレンジの提灯のポストカード。

  そして現在……。

  ごみ箱に捨てたはずのオレンジ色の提灯キーホルダーが木製のテーブルの上にある。

  思い出すだけで不気味で仕方がない。

  どうしてオレンジ色の提灯がわたしにまとわりついてくるの?

  ねえ、どうしてどうして……。

  どうして?  ねえ、どうしてなの?

  わたしは丸くて見た感じは可愛いオレンジ色の提灯キーホルダーに尋ねた。

  もちろん返事はない。



  わたしは恐ろしくて見たくもないオレンジ色の提灯キーホルダーを見ている。

  ねえ、お願いだからわたしの前から消えてよ。お願いだから消えてください。

  丸くて可愛らしい形のキーホルダーなのに今のわたしは恐怖を感じる。

  わたしはブルブルと恐怖に震えながらオレンジ色の提灯キーホルダーを眺め続けた。

  ずっと、眺め続けていると恐ろしくて恐怖を感じるけれど、わたしはその恐怖に少しだけ慣れてきた。

  このオレンジ色の提灯キーホルダーは、わたしに何かを訴えかけているのだろうか。

  そんなことを考えていると、「みんな~お茶を淹れたよ~」と美奈の明るい声が聞こえてきた。

  わたしは現実に引き戻されそれから、不気味なオレンジ色の提灯キーホルダーに視線を戻した。

  そして、わたしは木製のテーブルに近づいた。足はガクガク震えるけれど、この提灯キーホルダーをみんなに見せてみようと思ったのだ。

  木製のテーブルの前に辿り着いたわたしは、オレンジ色の提灯キーホルダーに手を伸ばした。



  心臓が震えるくらいにドキドキドキドキする。オレンジ色の提灯キーホルダーに伸ばしたこの手を引っ込めたくなる。

  だけど、引っ込めては駄目だ。わたしは、そう思い勇気を出してオレンジ色の提灯キーホルダーを掴んだ。

 ざらっとした触り心地にドキッとして背筋が寒くなった。

  今、わたしの手の中にオレンジ色の提灯キーホルダーがある。その現実に恐怖を感じながら部屋のドアを開けた。

  みんなにこのオレンジ色の提灯キーホルダーを見てもらおう。

  わたしは、ちょっと薄暗い長い木目調の廊下を歩いた。早く明るいリビングに行ってお茶を飲みたい。

  手の中にあるオレンジ色の提灯キーホルダーがざらりとした。

  リビングに行くとすでにみんなが八人掛けのテーブルにこのコテージでのいつもの席に座っていた。

  わたしも席に腰を下ろした。テーブルには紅茶とコーヒーが並べられていてわたしの目の前には湯気の立った紅茶のティーカップが置かれていた。

  わたしは、紅茶の湯気をじっと眺めた。オレンジ色の提灯キーホルダーは膝の上に置き紅茶のティーカップのハンドルをつかみ口に運んだ。

  紅茶は温かくて体をじわじわぽかぽかとあたためてくれて心がホッと落ち着いた。

  そして、わたしは膝の上にある提灯キーホルダーを握り「みんな見て」と言った。

  みんなの視線が一斉にわたしに集まった。
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