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泊まりがけの同窓会とオレンジ色

もう安心だよね

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  お茶の時間が終わり部屋に戻った。もうオレンジ色の提灯キーホルダーのことで悩まされることはないのだなと思うとほっとする。

  わたしは部屋に入り明かりをつける。

  部屋の中はしんと静まりかえっていた。ベッド、テレビ、小型の冷蔵庫が置かれている部屋の中をわたしは眺めた。

  そして、わたしは視線を木製のテーブルに移した。オレンジ色の提灯キーホルダーは無かったし特に変わったこともない。そのことにわたしはほっとした。

「良かった~」と思わず声を出してしまった。

  そうだ、久しぶりに小説でも書いてみようかな。先ずは案からだ。わたしは鞄の中からノートと筆記用具を取り出し木製のテーブルに置く。

  オレンジ色の提灯キーホルダーが置かれていたテーブルを使うのはちょっと嫌だなと思ったけれど、この木製のテーブルしかないのだから仕方がない。

  わたしはペンを握った。

  同窓会、楽しかったあの日の思い出にまた出会えた。懐かしい友達の笑顔。揺れるツインテール。

  とここまで書いて、駄目だなと思った。

  ツインテールだなんて美奈の後ろ姿を思い出してしまうしオレンジ色の提灯キーホルダーと繋がってしまいそうだ。

  それに真っ赤な血も……。

  わたしは、小説を書くことを諦めてノートを閉じた。

  お風呂に入ってゆっくりしようかなと思いわたしは立ち上がる。


  わたしは部屋を出て薄暗い廊下を歩きお風呂に向かった。

  女湯と書かれた暖簾をくぐる。レトロな懐かしい雰囲気が漂うお風呂だ。脱衣場には木製の古めかしいロッカーが並んでいる。

  わたしは適当にロッカーを選び脱いだ服を入れた。タオルを持って浴室の扉をガラガラと開け中に入った。

  レトロだけど掃除が行き届いている清潔感のあるタイル張りの浴室だった。なんだか昔にタイムトリップした感覚になる。

  わたしは体を洗い湯船に浸かった。一日の疲れがふわふわと和らぐ感じだ。湯気で満たされて幸せだ。

  温かいお湯に全身浸かるとリラックスできる。うふふ、このまま眠ってしまいそうなほど心地よい。

  オレンジ色の提灯キーホルダーにさようならも出来たし明日は町田に帰るんだもんね。

  もう何も恐れることはない。わたしは温かいお湯に包まれた。

  わたしは幸せな気分で湯槽から出た。

  服を着てふんふんと鼻歌を歌いながら髪の毛をドライヤーで乾かした。

 さてと、部屋に戻ろう。わたしは風呂場から出た。

  すると、美奈が扉の前に立っていた。

「あ、美奈!」

「亜沙美ちゃん!  わっ、しまった~」

  美奈は慌てたように髪の毛を触った。

「美奈、ツインテールじゃないんだね」

  そうなのだ。美奈はツインテールをほどいていたのだ。

「あはは、お風呂に入ろうと思ってほどいてしまったよ~ああ、ツインテールじゃない姿を亜沙美ちゃんに見られてしまったよ……」

  美奈はそう言って悔しそうな顔をした。

「美奈ちゃんってばそんなにツインテールに拘りがあるの?」

  わたしは悔しそうに唇を噛んでいる美奈の顔を見てなんだかちょっと可笑しくて笑ってしまった。

「別に拘りはないけど、今回泊まりの同窓会でツインテール姿を貫くと決めていたからね」

  美奈は「まあいっか」と言ってニカッと笑った。

  ツインテール姿でもそうじゃなくても美奈は可愛らしくてあの頃とほとんど変わらない童顔だった。

「どっちでも可愛いからいいんじゃない?」

「わっ、可愛いってそれは嬉しいよ。じゃあ、亜沙美ちゃんわたしはお風呂に行くよ」

「うん、いってらっしゃい」

  わたしは、女湯の暖簾をくぐる美奈の背中を見送った。そのツインテールじゃない少し茶色っぽい髪の毛はキラキラ輝いていた。

  懐かしい少女の頃の美奈と少しだけ大人になった美奈が重なって見えた。

『亜沙美ちゃん、こっちにおいでよ』

  あの日の美奈が笑っていた。
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