オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしの笑顔と恐怖

なかじまあゆこ

文字の大きさ
77 / 87
オレンジ色の世界と恐怖

小説のツインテールの女の子は美奈?

しおりを挟む
「かなちゃん、久しぶりだね~元気だった?」

『うん、めちゃくちゃ元気だよ』

  高校時代の友達は何年会っていなくてもすぐにあの頃に戻れる。

「良かった」

「ねえねえ、亜沙美ちゃん小説家になったんだね。本屋さんで偶然見つけてびっくりしたよ。早速買ったよ」

「え!  ありがとう~。一年くらい前になるよ」

「わたし、小説読んだよ。そしたらびっくりしたよ。あの小説のツインテールの女の子は美奈ちゃんだよね?」

「えっ?  美奈ちゃん?」

「違うの?  わたしてっきり美奈ちゃんかなと思ったよ」

  わたしは美奈をモデルにして小説を書いたつもりはなかったけれど、無意識に美奈をモデルにしていたのだろうか。

「美奈ちゃんをモデルにしたつもりは無いけど似ていたかな?」

「うん……」

  一瞬沈黙がありそれから「悲しみを乗り越えるために書いたのかなと思ったよ。わたし思わず泣いてしまったもん……あれ?  違ったんだね」とかなは言った。

「悲しみを乗り越える?」

  なんだかとても嫌な予感がしてきた。胸をグイグイとナイフでえぐられるそんな思いになった。

「だって、美奈ちゃんが死んでしまったから」

「!!  か、かなちゃん今、なんて言ったの?  美奈ちゃんだったら今ここにいるよ。同窓会中だよ」

  自分の声が震えていることに気がついた。

『同窓会中ってどういうことなのかな?』

「高校三年生の同窓会だよ。かなちゃんのところにも美奈ちゃんから同窓会の案内状が届いたよね?」

「ねえ、亜沙美ちゃん何を言っているのかな?」

「何をってだから同窓会だよ!」

  わたしは思わず大きな声を出してしまった。お願いだから届いたと言ってよ。

『……届いていないよ。と言うか届くわけないよ。だって、美奈ちゃんはもう……』

  かなはそう言って言葉を詰まらせた。

「か、かなちゃんは冗談を言うために電話をかけてきたんじゃないよね」

『冗談ってまさか。わたしは亜沙美ちゃんの小説に感動したのと美奈ちゃんのことを思い出したからだよ』

  かなの声に嘘はないようだ。でも、わたしは信じることなんて出来ない。だって、目の前に美奈がいるんだよ。

  笑顔の美奈がいるんだからね。

「ねえ、かなちゃんが話していることは本当のことなの?」

『こんなこと冗談で言えないでしょ』

「……うん、それはそうだけど」

『美奈ちゃんは高校三年生の時に事故で亡くなったよね。亜沙美ちゃんもみんなも目を真っ赤にして泣いていたじゃない』

「こ、高校三年生の時に!!」

  とその時、

「亜沙美ちゃ~ん、電話中なのかな?  早く行くよ~」美奈の元気な声が聞こえてきた。

  とても死んでいるなんて思えない。

「うん、美奈ちゃん待って~あ、かなちゃんまた後で電話するね」

  わたしはそう言って通話終了のボタンを押した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

七竈 ~ふたたび、春~

菱沼あゆ
ホラー
 変遷していく呪いに終わりのときは来るのだろうか――?  突然、英嗣の母親に、蔵を整理するから来いと呼び出されたり、相変わらず騒がしい毎日を送っていた七月だが。  ある日、若き市長の要請で、呪いの七竃が切り倒されることになる。  七竃が消えれば、呪いは消えるのか?  何故、急に七竃が切られることになったのか。  市長の意図を探ろうとする七月たちだが――。  学園ホラー&ミステリー

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

視える僕らのシェアハウス

橘しづき
ホラー
 安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。    電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。    ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。 『月乃庭 管理人 竜崎奏多』      不思議なルームシェアが、始まる。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/12/14:『さむいしゃわー』の章を追加。2025/12/21の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/13:『ものおと』の章を追加。2025/12/20の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/12:『つえ』の章を追加。2025/12/19の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/11:『にく』の章を追加。2025/12/18の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/10:『うでどけい』の章を追加。2025/12/17の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/8:『そうちょう』の章を追加。2025/12/15の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/7:『どろのあしあと』の章を追加。2025/12/14の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...