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俺達がこの世界にやって来たのは意味があるのかもしれない

空にぷかぷか浮かんでいますね

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「おい、成行も笑っていないで助けてくれよ」

  貧神が見上げる俺に向かって言った。

「すまないが俺は魔法使いじゃないからな……」

「なあ、成行それはわかったけど笑うなよ」

「あはは、ごめんよ~」

  俺は笑いを堪えようと唇をギュッと噛む。だがしかし何故か笑うなと言われると笑いが込み上げてきて吹き出してしまいそうになる。

「成行もチャーミにゃんもなんて酷い奴なんだろうな」

  空にぷかぷか浮かんでいるパジャマ姿の貧神は大きな溜め息をついた。なんだか、空に浮くパジャマ姿の貧神がアニメか映画の世界の登場人物に見え遠くに感じた。

「貧神、ごめんにゃん。しばらく空の世界をお楽しみくださいにゃん」

  チャーミにゃんはしょぼい棒切れみたいな杖をくるくる振り回しながらぺこりと頭を下げた。そして、顔を上げにゃぱーと笑った。

「ふざけるなよ。チャーミにゃん」

  貧神は空の上で足をバタバタさせて暴れ「わっ!  びっくりした。ヒューッと落っこちそうな感覚になったじゃないか」と声を上げた。

「では、成行、行きましょうかにゃん」

「えっ?  何処にだ?」

   俺が首を横に傾げるとチャーミにゃんは「もふもふ楽園の散歩の続きですにゃん」と当たり前のように言った。

   そう言ったかと思うとチャーミにゃんは俺の返事も待たずにゃんにゃんと歩き出した。

「あ、おい、チャーミにゃん待てよ」

「お、おい、ふざけるなよチャーミにゃん。俺を空中に置き去りにするのかよ」

   俺は空の上でジタバタ暴れるパジャマ姿の貧神とマイペースに歩くチャーミにゃんの後ろ姿を交互に眺めた。

「貧神悪いけどもふもふ楽園を散歩してくるな」

  俺は空にぷかぷか浮かんでいる貧神に挨拶をしてチャーミにゃんの後を追いかけた。

「ふ、ふざけるなよ~成行!  お前も俺を置いていくのかよ~」

  貧神の叫び声が背中に聞こえてくるけれど、「ごめんよ~」と俺は言って一度だけ振り返り貧神に手を振り歩き出した。
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