真理子とみどり沖縄で古書カフェ店をはじめました~もふもふや不思議な人が集う場所

なかじまあゆこ

文字の大きさ
48 / 75
第五章 吉田さん

4 たまにはゆっくりしよう

しおりを挟む

  わたしは堤防によじ登ろうとしたけれど上手くよじ登れない。

「ははっ、俺の手につかまってください」と吉田さんは笑いながら手を差し伸べた。

  この手につかまって良いのかなと一瞬考えたけれど自力で堤防に登ることは無理だと諦め差し伸べられたその手につかまった。

  吉田さんの手は温かくてぽかぽかしていてなんだか優しさがふわりと伝わってきた。わたしは助けを借りなんとか堤防に登ることに成功し吉田さんの隣に腰を下ろした。

ゴーヤの入っているスーパーの袋もドーンと置いた。「すみません、ありがとうございます」

「いえいえ。それはそうと、俺の背後にずっと怪しげな気配を感じていたんですよ。その正体は梅木さんだったんですね」

  吉田さんはそう言ってにやりと笑った。

「えっ、怪しげな気配って……気がついていたんですか?」

「いえ、何となく誰かが俺の後ろを歩いてるなとは思っていてちょっと怪しげな気配だなと感じていましたがでも気のせいかなとも思っていましたよ」

  吉田さんは眉根を寄せそれから可笑しそうにクスクスと笑った。

「ごめんなさい。何となく声を掛けることが出来なくて……」

   わたしは、手を合わせて謝った。

  

「まあいいですけどね。それはそうと梅木さん、古書カフェ店の仕事はどうしましたか?」

  吉田さんは少し長めの前髪をかきあげ笑った。

「……えっ、あ、その……み、みどりちゃんが頑張っているかな~うん、そうですよ。きっと……」

  わたしは、貼り付けたような笑顔を浮かべた。

「へーっ、並木さんが一人でお仕事を頑張られているんですね。ふーん、なるほどそうなんすね」

  吉田さんはなんて意地悪なんだろう。わたしはサボっていますよ。仕事をサボりお買い物と吉田さんの尾行をしましたよ。

「梅木さん、何を一人でブツブツ話されているんですか?」

「あ、いえ、海が綺麗だな。沖縄っていいなと呟いていました」

  なんて苦しい言い訳をわたしはしているのかなと思うと可笑しくなってくる。ああもう嫌になってくる。

「面白い方ですね。たまにはサボるのもいいかもですよ。毎日頑張ると疲れますからね」

  吉田さんは、わたしの顔をちらりと見て言った。それからゆっくりと視線を海に移し「どうして梅木さんは沖縄に来られたんですか?  出身は東京なんですよね?  東京にはなんでもあるのに」と言った。

「みどりちゃんに誘われて沖縄に住んで働いてみるのもいいかなと思って来ました」

  そうだった。わたしはみどりちゃんに誘われて沖縄に来た。みどりちゃんの沖縄でリゾート派遣の仕事をしない?  その言葉に魅力を感じた。

  亜熱帯気候の沖縄でのんびり働くことが出来たら幸せかなと考えた。特にこれと言った目標もなかった。

  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

白苑後宮の薬膳女官

絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。 ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。 薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。 静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...