43 / 61
バスは来ない
部屋に戻りたくない
しおりを挟む部屋に戻りたくはないな。もう少しここでゆっくりとしていたい。今、『部屋』と考えただけで、ゾクゾクしてきた。
だって、また里美が部屋の扉を開けたら、わたしはどうしたらいいの?
嫌な鼓動がしてきた。ゾワゾワゾワゾワと体の奥からじわじわじわじわと……。
考えると考えるだけおかしくなりそうだ。
ああ、気持ちが悪くなってきた。嫌な汗もかいてきた。じわりじわりと里美がわたしを追いつめているのかもしれない。
里美がわたしを苦しめる。
「未央ちゃん、未央ちゃん……」
「え、?」
「リンゴがテーブルの上に落ちているよ」
すみれの声に反応して、テーブルの上を確認すると、リンゴがころりんと転がっていた。
「あ、……。落としてた」
「絶対に未央ちゃん変だよ、どうしてしまったの?」
すみれが呆れた顔でわたしを見る。
本当ならばここから逃げ出して、部屋に帰りたいけれど、部屋に戻るとさらに恐ろしい。どうすることもできない。
「えへへっ」わたしは曖昧な笑顔を作る。
「やっぱり、未央ちゃん早く寝た方がいいよ」
やっぱりこう言われるよね。
「あ、あのすみれ、お願いがあるの。すみれの部屋にお泊まりしてもいいかな?」
「え、!!」
すみれは一瞬びっくりした表情になったけれど、すぐに、「いいよ」と言ってくれた。
「すみれ、ありがとう。さっき幽霊を見た気がしたの。だから少し怖くて、あ、でも夢かもしれないけれど……」
夢だとは思っていないけれど、幽霊というか里美を見たんだけど、なんだか上手く言葉が見つからない。
リンゴの甘さと酸っぱさを口の中に残し、すみれの部屋に行く。すみれは、「じゃあ、おいでよ」と快くわたしを部屋に招き入れてくれた。
すみれの部屋もわたしの部屋と似たような造りだった。わたしは、部屋から掛け布団を持ってきてソファーで寝ることにした。
すると、すみれが、
「未央ちゃん、何やってるのよ。このベッド大きいから二人で寝れるよ。わたしも未央ちゃんも細身だから大丈夫、一緒に寝よう」
すみれは優しい。
有り難くベッドで一緒に眠らせてもらうことにした。
「ねえ、久しぶりじゃない? 同じ部屋で寝泊まりするのなんて」
すみれは、パジャマに着替えながら笑顔で話す。すみれのパジャマは猫さんの柄がちりばめられていて可愛い。
「だよね、高校の修学旅行以来かな?」
「あの頃は楽しかったよね」
「そうだね」
「枕投げしたよね。そしたら先生がやって来て、こらーって凄い剣幕で怒っていたよね」
すみれの瞳は高校時代を眺めている。
「そうだね。それで、今度は先生が来たら寝たふりをして楽しかったね」
忘れかけていたけれど楽しい時代があったね。
それから暫くの間、わたしとすみれは楽しい思い出話に花をさかせた。
悩みはたくさんあったけれど、難しいことはあまり考えなくても良かった学生時代。あの頃が懐かしくてあの頃に戻りたい。
すみれと懐かしい話をたくさんして、笑いあった。
気がつくとすみれは話疲れたのか、スヤスヤと寝息をたてていた。
もう、人が話している途中で寝るなんて、すみれ酷いぞとわたしは心の中で呟いた。
だけど、すみれ、ありがとう。すみれのお陰で、心がずいぶん穏やかになったよ。
さあ、わたしもそろそろ眠ろうかな。
電気を消して、がさごそと布団に入る。すみれは、う~んと言って寝返りを打つ。
おやすみなさい。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
皆さんは呪われました
禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか?
お勧めの呪いがありますよ。
効果は絶大です。
ぜひ、試してみてください……
その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。
最後に残るのは誰だ……
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
霊和怪異譚 野花と野薔薇[改稿前]
野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。
静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。
『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。
一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。
語られる怪談はただの物語ではない。
それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。
やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。
日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。
あなたも一席、語りを聞いてみませんか?
完結いたしました。
タイトル変更しました。
旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる
※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。
本作は改稿前/改稿後の複数バージョンが存在します
掲載媒体ごとに内容が異なる場合があります。
改稿後小説作品はカイタとネオページで見られます
【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~
榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】
ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。
八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。
===
エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中
【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】
【怖さレベル】
★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度
★★☆ ふつうに怖い話
★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話
※8/2 Kindleにて電子書籍化しました
『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる