9 / 97
ならまちに住む町屋奈夜
わっ! 狛犬達が……
しおりを挟むぽんぽん、ぽんぽん、ぽむぽむっ、ぽむぽむっと狛子と狛助は五歳くらいの人間の女の子と男の子の姿から狛犬に変身したのだから。
いやいや元の姿に戻ったと言う方が正しいのだろうか。石製の獅子や犬に似た獣の姿に戻り狛子と狛助はニコニコ笑っているのだった。
「えっ!? わっ! わわわっーー!」
おばあちゃんは狛子と狛助を指差し口をぱくぱくさせながら叫んだ。
「おばあちゃんどうしたのかな?」と狛子は首を傾げた。石製なのに体が柔らかいなと思う。
「おばあちゃん大丈夫ですか」狛助も石製の狛犬の姿なのに首を横に傾げおばあちゃんの顔をじっと見ている。
「わたしは夢を見ているのかしら?」
「そ、そうだよ。おばあちゃんこれは夢なんだよ」とわたしが言ったのにもかかわらず狛子と狛助が「おばあちゃん夢じゃないよ~」と声を合わせて言った。
「……夢じゃないのかね? 狛子ちゃんと狛助君は狛犬なんだね」
おばあちゃんは目を大きく見開き狛犬姿の二匹(二人)を眺めている。
「うん、わたしは狛犬で~す!」
「はい、僕も狛犬で~す!」
狛子と狛助はニコニコと笑っている。
狛犬が歯を見せて笑っているその姿はほっこりと可愛らしくファンタジーの世界に見える。それと同時にホラー映画の世界のようにも見えるのだった。
「うふふ、狛子ちゃんと狛助君は狛犬さんなのね」
おばあちゃんは落ち着きを取り戻したのか緑茶をずずっと啜り微笑みを浮かべた。
「そうだよ。おばあちゃん、わたし達は神様に奈夜ちゃんの願いを叶えてあげてと頼まれたんだよ」
狛子はそう言って胸を張る。
「奈夜ちゃんの願いを叶えてくれるの?」
「はい、奈夜ちゃんの願いを叶えてあげるよ。だって、わたし達奈夜ちゃんの夢を叶えないと神社に帰れないかもしれないんだもん」
「あらそうなのね?」
「はい、だからしばらくの間おばあちゃんよろしくお願いしま~す」、「よろしくお願いしま~す!」と言った二匹(二人)はぺこりと頭を下げた。
それって……。まさかですか?
「この家に住むってことなのかしら?」
おばあちゃんが聞くと狛子と狛助は元気よく「はい」と声を合わせて返事をした。
「それって居候するってことじゃない!」
わたしは思わず叫んでしまった。
「奈夜ちゃんよろしくね」
「奈夜ちゃんよろしくお願いします」
二匹(二人)はそう言ってにっこりと笑った。
「よろしくってちょっと何よそれは」
わたしは、ニコニコと笑っている狛子と狛助の顔を見てなんだか呆れてしまった。
「今日の夕飯は何だろうね?」
「うん、奈夜ちゃんのおばあちゃん料理上手そうだから楽しみだね」
狛子と狛助は顔を近づけ合い楽しそうに話をしている。
「奈夜ちゃんの小さな可愛らしい狛犬のお友達だからおばあちゃん腕を振るってご飯を作ろうかな」
なんて言っておばあちゃんは腕まくりをしたではないか。このとんでもない状況をおばあちゃんは楽しんでいるように見える。
信じられない。けれど、おばあちゃんが楽しそうにしているのだからまあいいかなとわたしは思うことにした。
おばあちゃんの心からの笑顔を見ると、わたしの心は喜びでいっぱいになる。
「うふふ、奈夜ちゃんってばなんだか楽しそうね」
気がつくとおばあちゃんがにっこりと笑いわたしの顔をじっと見ていた。
「えっ、うん楽しいよ」わたしは笑顔で答えた。あの呑気で食いしん坊な狛犬達はわたしとおばあちゃんに笑顔をプレゼントしてくれているのかもしれない。
「ニヒヒッ、夕飯まだかな~」
「楽しみだ~」
なんて狛子と狛助が話すことはご飯やお菓子のことばかりではあるけれどね。
「さてと、庭の掃き掃除をしてこようかしら。その後美味しいご飯を作るわよ」
おばあちゃんはそう言ってにっこり微笑みパタパタと歩き庭に向かった。
そんなおばあちゃんの少し丸くなった後ろ姿をわたしはぼんやりと眺めた。
0
あなたにおすすめの小説
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる