生まれ変わったらもふもふ猫に囲まれて暮らしたいと言ったよ。だけど猫だけの世界に俺一人だけ人間なんだ！

ベレー帽のアメリカンショートヘアの店員

「あ、えっと先日『不思議な家へようこそ』さんのカフェでお茶を飲みました」

「ついこの前来てくださいましたよね」

  ベレー帽を被ったアメリカンショートヘアの店員さんはトレーとトングの補充をしながら言った。

「覚えて頂いてたんですね」

「それは覚えていますよ。だって、人間のお客様は珍しいですから……それに三毛猫さんに追放されているのを見ましたので」

  ベレー帽を被ったアメリカンショートヘアの店員さんはちらっと俺に視線を向け目が合うとパッと逸らしトレーとトングの補充作業に戻った。

「そりゃ人間なんて珍しいんだから覚えているよな」

  猫助は俺の顔を見てそれからトレーとトングの補充作業中のベレー帽を被ったアメリカンショートヘアの店員さんに視線を移した。

「そうだね。人間なんて俺だけだもんな。それと……もう一人いるかもしれないけどさ」

  そのもう一人の人間が俺の前世でのお母さんだとしたら嬉しいのと同時に不思議な気持ちになる。

  恐ろしい目に遭ってなければいいのだけど……。

  目の前にいるこの店員さんはあの三毛猫と違い恐ろしくはなさそうだけど、果たして俺以外の人間のことを話してくれるのだろうか？

「パンを買いに来てくれたんですよね？」

  ぼんやり突っ立っている俺達にベレー帽を被ったアメリカンショートヘアの店員さんが聞いてきた。

「あ、はい！  パンを買いに来ました」

  俺はこれは話を聞くチャンスだと思いながら答えた。

「はいは～い！  どのパンも美味しそうですね。あ、カレーパンがいいかな？  いやいやシナモンロールも美味しそう～」

「ちょっと、猫助君ってばヨダレを垂らしちゃダメだよ」

  にゃんぴがぽすんと猫助の頭を叩いた。


「あ、何するんだよ～にゃんぴの鬼～」


  猫助は頭を押さえた。

  そんな猫助とにゃんぴのやり取りをベレー帽を被ったアメリカンショートヘアの店員さんは微笑ましそうに眺めていた。