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さあ、歌いますよ

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「あ、満里奈ちゃんに唯奈ちゃん~」

  ミケにゃんがパタパタにゃんと足音を鳴らしこちらにやって来た。

「ミケにゃんどうしたの?」

「唯奈ちゃんの歌が楽しみだにゃん。早く聴きたいなと思ったんだにゃん」

「ミケにゃんちゃん、わたしの歌を楽しみにしてくれているの?」

  唯奈ちゃんは目を細め嬉しそうにミケにゃんの顔を見た。

「うん、楽しみだにゃ~ん!  唯奈ちゃんの歌とそれからシロッコちゃんがホットレモンを作ってくれるんだにゃん」

  ミケにゃんはそう言って肉球のある可愛らしい手を口元に当てて笑った。

  もしかしたら唯奈ちゃんの歌よりホットレモンを楽しみにしているのではないかなんて考えた。食いしん坊のミケにゃんのことだから十分あり得る。

  まあ、それでも唯奈ちゃんの歌をきっと楽しみにしてくれているはずなので嬉しいのだ。

「ミケにゃんは、歌を聴くドレスに着替えてくるにゃん」

「えっ? 歌を聴くドレス?」

「うん、やっぱり可愛らしいドレスを着て歌を聴かなきゃにゃん」

  ミケにゃんはにゃぱーとひまわりの花が咲いたような笑顔を浮かべた。その顔はキュートで可愛らしい。

  そして、ミケにゃんは「お着替えしてくるにゃん」と言って『ミケにゃんのお部屋ですにゃん』と書かれたルームプレートの掛かっているドアを開けて部屋に入った。

「ミケにゃんちゃんってばお着替えをするんだね。唯奈ちゃんは着替えないのにね」

「あはは、そうだね。ミケにゃんちゃん可愛らしいね。でもドレスに着替えるなんて面白いね」

  わたしと唯奈ちゃんは顔を見合わせ笑った。

  きっと、これから楽しい歌の時間が待っていることでしょう。わたしはわくわくして頬がゆるりと緩んだ。

「唯奈ちゃ~ん!  そろそろ歌の時間だにゃ~ん」

  階下からシロッコの声が聞こえてきた。
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