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豆腐チャンプルー
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「いらっしゃいませ~」
中に入ると店員さんの元気な声が聞こえてきた。
わたしは入ってすぐの食券機に美川さんから貰った『無料のお食事券』のパスポートを挿入した。
今日は何を食べようかな? 沖縄そばもいいけれど他の物も食べたい。食券機にメニューの名前と値段が書かれたボタンがずらずらと並んでいるので迷ってしまう。
うーん、どうしようかなと迷っていると夢の中に出てきたおばあちゃんの豆腐チャンプルーを思い出した。
決めた。豆腐チャンプルーにしよう。わたしは、えいゃと『豆腐チャンプルー定食』と書かれているボタンを押した。
わたしは食券を握り外の景色が見えるカウンター席に座った。窓の外を行き交う人達を眺めていると、
「いらっしゃいませ~。幸川さん」
元気な声が聞こえてきた。この声は斎川さんだ。わたしはその声に振り向いた。
「あ、斎川さん!」
「うふふ。幸川さん。いらっしゃいませ。豆腐チャンプルー定食ですね。あらあらどうかしましたか?」
斎川さんはわたしから食券を受け取りながら首を傾げた。
「あ、いえ。斎川さん、こんにちは。あの……」
「はい。何でしょうか?」
「つかぬことをお聞きしますが……その紫色の割烹着はどなたからのプレゼントなんでしょうか?」
わたしは失礼だとは思うけれど聞かずにはいられなかった。だって、斎川さんは紫色の割烹着を着ているのだから。
「あら、この割烹着のことね。これは美川さんからプレゼントして頂いたんですよ」
斎川さんはそう言って柔らかい笑みを浮かべた。
「……美川さんからなんですね」
わたしは、やっぱりと思いながら笑いそうになってしまった。どうして美川さんの紫色の割烹着とお揃いなのよ。
「似合っていませんか? 白色の割烹着も素敵ですが紫色の割烹着も着てみませんかと仰って美川さんが今朝プレゼントしてくれたんですよ」
「今朝ですか。とても似合っていますよ」
わたしはそう答えながら笑ってしまった。
「幸川さん。ありがとうございます。あら、でもどうして笑っていらっしゃるのかしら?」
斎川さんは、口元に手を当ててうふふと笑いそして、首を傾げた。
「いえ、何でもありませんよ」
だって、美川さんがあの紫色の割烹着を選びそして、朝から斎川さんに渡している姿を想像するとやっぱり笑ってしまうではないか。
「そうですか。豆腐チャンプルー定食楽しみにしてくださいね。それと、きらりのこと詳しく話していなくてすみません」
斎川さんは申し訳なさそうに手を合わせた。
「あ、いえ。それは……構わないですが」
と答えながらもきらりちゃんの憎たらしい顔を思い出すと先に言ってほしかったなとは思うのだけれど、わたしは笑顔を作った。
「あの子は気難しい子ですがよろしくお願いします」
斎川さんはぺこりと頭を下げた。
「そんなとんでもないです」
わたしも慌てて椅子から立ち上がりぺこりと頭を下げた。
「幸川さん、座ってください。では、豆腐チャンプルー定食を作ってきますね」
斎川さんは柔らかい笑みを浮かべた。
「はい、楽しみにしていますね」
わたしはそう答え椅子に腰かけた。
「では、少々お待ちくださいね」
斎川さんはパタパタと厨房に戻って行った。斎川さんの紫色の割烹着を着た後ろ姿をわたしはぼんやりと眺めた。
それからわたしは店内をぐるりと見渡した。今日も店内は多くの人で賑わいを見せていた。沖縄そば定食を食べている男性やサバ味噌定食を食べている女性に、ゴーヤチャンプルー定食を食べているおばあさんなど様々だ。
きらりちゃんは部屋に戻ったのか姿が見えない。わたしの仕事はきらりちゃんに笑顔になってもらうことだけどきらりちゃん本人が登場しないと仕事にならないな。
まあ、それもそうだけど今は何よりも豆腐チャンプルーが楽しみだ。
「お待たせしました~豆腐チャンプルー定食です」
豆腐チャンプルーをウキウキしながら待っているわたしの目の前に豆腐チャンプルー定食が置かれた。
「ありがとうございます」
わたしは顔を上げ斎川さんにお礼を言ってからテーブルの豆腐チャンプルーに視線を戻した。
真っ白なお皿に大きく切られた島豆腐がごろごろ入っていてそれからたっぷりなもやしとニラに豚肉の豆腐チャンプルーだ。
大盛ご飯にお味噌汁も付いている。
「美味しそうです~」
わたしは食べる前から笑顔になった。
中に入ると店員さんの元気な声が聞こえてきた。
わたしは入ってすぐの食券機に美川さんから貰った『無料のお食事券』のパスポートを挿入した。
今日は何を食べようかな? 沖縄そばもいいけれど他の物も食べたい。食券機にメニューの名前と値段が書かれたボタンがずらずらと並んでいるので迷ってしまう。
うーん、どうしようかなと迷っていると夢の中に出てきたおばあちゃんの豆腐チャンプルーを思い出した。
決めた。豆腐チャンプルーにしよう。わたしは、えいゃと『豆腐チャンプルー定食』と書かれているボタンを押した。
わたしは食券を握り外の景色が見えるカウンター席に座った。窓の外を行き交う人達を眺めていると、
「いらっしゃいませ~。幸川さん」
元気な声が聞こえてきた。この声は斎川さんだ。わたしはその声に振り向いた。
「あ、斎川さん!」
「うふふ。幸川さん。いらっしゃいませ。豆腐チャンプルー定食ですね。あらあらどうかしましたか?」
斎川さんはわたしから食券を受け取りながら首を傾げた。
「あ、いえ。斎川さん、こんにちは。あの……」
「はい。何でしょうか?」
「つかぬことをお聞きしますが……その紫色の割烹着はどなたからのプレゼントなんでしょうか?」
わたしは失礼だとは思うけれど聞かずにはいられなかった。だって、斎川さんは紫色の割烹着を着ているのだから。
「あら、この割烹着のことね。これは美川さんからプレゼントして頂いたんですよ」
斎川さんはそう言って柔らかい笑みを浮かべた。
「……美川さんからなんですね」
わたしは、やっぱりと思いながら笑いそうになってしまった。どうして美川さんの紫色の割烹着とお揃いなのよ。
「似合っていませんか? 白色の割烹着も素敵ですが紫色の割烹着も着てみませんかと仰って美川さんが今朝プレゼントしてくれたんですよ」
「今朝ですか。とても似合っていますよ」
わたしはそう答えながら笑ってしまった。
「幸川さん。ありがとうございます。あら、でもどうして笑っていらっしゃるのかしら?」
斎川さんは、口元に手を当ててうふふと笑いそして、首を傾げた。
「いえ、何でもありませんよ」
だって、美川さんがあの紫色の割烹着を選びそして、朝から斎川さんに渡している姿を想像するとやっぱり笑ってしまうではないか。
「そうですか。豆腐チャンプルー定食楽しみにしてくださいね。それと、きらりのこと詳しく話していなくてすみません」
斎川さんは申し訳なさそうに手を合わせた。
「あ、いえ。それは……構わないですが」
と答えながらもきらりちゃんの憎たらしい顔を思い出すと先に言ってほしかったなとは思うのだけれど、わたしは笑顔を作った。
「あの子は気難しい子ですがよろしくお願いします」
斎川さんはぺこりと頭を下げた。
「そんなとんでもないです」
わたしも慌てて椅子から立ち上がりぺこりと頭を下げた。
「幸川さん、座ってください。では、豆腐チャンプルー定食を作ってきますね」
斎川さんは柔らかい笑みを浮かべた。
「はい、楽しみにしていますね」
わたしはそう答え椅子に腰かけた。
「では、少々お待ちくださいね」
斎川さんはパタパタと厨房に戻って行った。斎川さんの紫色の割烹着を着た後ろ姿をわたしはぼんやりと眺めた。
それからわたしは店内をぐるりと見渡した。今日も店内は多くの人で賑わいを見せていた。沖縄そば定食を食べている男性やサバ味噌定食を食べている女性に、ゴーヤチャンプルー定食を食べているおばあさんなど様々だ。
きらりちゃんは部屋に戻ったのか姿が見えない。わたしの仕事はきらりちゃんに笑顔になってもらうことだけどきらりちゃん本人が登場しないと仕事にならないな。
まあ、それもそうだけど今は何よりも豆腐チャンプルーが楽しみだ。
「お待たせしました~豆腐チャンプルー定食です」
豆腐チャンプルーをウキウキしながら待っているわたしの目の前に豆腐チャンプルー定食が置かれた。
「ありがとうございます」
わたしは顔を上げ斎川さんにお礼を言ってからテーブルの豆腐チャンプルーに視線を戻した。
真っ白なお皿に大きく切られた島豆腐がごろごろ入っていてそれからたっぷりなもやしとニラに豚肉の豆腐チャンプルーだ。
大盛ご飯にお味噌汁も付いている。
「美味しそうです~」
わたしは食べる前から笑顔になった。
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