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チラシ配り
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「よろしくお願いしま~す。おばぁと一緒にちんすこう作りを体験しませんか~」
今、わたし達はおばぁの店の前で美川さんが作成したチラシを道行く人々に配っている。
小学生や子供を連れたお母さんにチラシを配り受け取ってもらうと「ありがとうございます」と声をかける。
チラシは受け取らずに逃げるように歩き去る人もいれば受け取ったチラシに目を落としてくれる人もいる。
「良かったら是非ちんすこう作りを体験してみてくださいね」
わたしは笑みを浮かべた。
こうして、何人かに声をかけていると反応してくれる人も出てきた。
「ちんすこう作り楽しそう~」
ランドセルを背負った小学生の女の子がニコニコしながらチラシを眺めている。
「もし良かったら来てね」
「うん、お母さんに聞いてみるね。あ、お姉さんその割烹着可愛いね」
「あ、えっ? この割烹着可愛いかな?」
「うん、可愛いよ」
女の子はにっこりと笑った。
そうなのだ。わたし達はユニフォームである紫色の割烹着を着込みチラシを配っていたのだった。
「じゃあね!」と言って手を振り歩いていく女の子のランドセルがカタカタ揺れる後ろ姿をわたしはじっと眺めていた。
「愛可さん。この紫色の割烹着褒められましたね」
振り返ると紫色の割烹着を着た美川さんがニッと笑っていた。
「……ですね。褒められましたね」
「やっぱりこのユニフォームは俺達に似合っているんですね」
「……あはは」
紫色の割烹着が似合っていてもあまり嬉しくない。わたしは頬をひきつらせながら笑った。
「ねえ、あの子夏休みなのにどうしてランドセルを背負っているのかな?」
紫色の割烹着を着込んだきらりちゃんが首を傾げながら言った。
「あ、そういえばそうだね」
「あ、本当だ。流石、現役小学生のきらりちゃんは気がつくんだね」
「うん、だって夏休みなんだもん。ちょっと気になる子だね」
きらりちゃんは胸の前で腕組みをして、「う~ん、あの子ちんすこう作りに来るかな?」と言った。
「来るといいね」
わたしは、だんだん小さくなっていくランドセルを背負う女の子の後ろ姿を眺めた。
この後も暑い夏空の下何が嬉しいのか紫色の割烹着を着込んでチラシを配った。
「よし! 終了」
「全部配り終えましたね」
「暑かったよ~わたし喉が渇いたよ」
わたしときらりちゃんは紫色の割烹着をぽーいと脱ぎ捨て美川さんはフフンと鼻で笑った。
おばぁの『おばあちゃんのお菓子屋』に戻ると、
「外は暑かったよね。冷たいさんぴん茶をどうぞ~」
お盆にさんぴん茶の注がれたグラスを載せたおばぁが出迎えてくれた。
「ありがとうございます」
「おっ、暑かったのでちょうど良かったです」
「わたしさんぴん茶よりマンゴージュースが飲みたいんだけど」
出た! きらりちゃんのワガママが……。
「きらりちゃん、外は暑くて喉が渇いたんだから冷たいさんぴん茶はきっとスッキリするよ」
わたしはにっこりと笑いながら言った。
「スッキリするかもしれないけど今はマンゴージュースの気分なんだよね」
きらりちゃんはぷくりと頬を膨らませた。
「きらりちゃんはマンゴージュースが飲みたいのかい?」
「うん、おばぁわたしマンゴージュースが飲みた~い」
「そうかいな。じゃあ、マンゴージュースを持ってくるから待っていなさい」
おばぁはお盆をテーブルの上に置き店の奥に引っ込んだ。
「きらりちゃんはワガママだよ」
「えへへ」
きらりちゃんは頭を掻きながら笑っている。困ったものだ。
そして、わたしと美川さんはよく冷えたさんぴん茶を飲みきらりちゃんは満足げにマンゴージュースを飲んだ。
そんなわたし達をおばぁは目を細めて眺めていた。太陽が照りつける夏の空の下チラシを配って良かったなと思った。
よく冷えた爽やかなさんぴん茶が喉を潤した。今日のさんぴん茶はいつもより美味しく感じられた。
今、わたし達はおばぁの店の前で美川さんが作成したチラシを道行く人々に配っている。
小学生や子供を連れたお母さんにチラシを配り受け取ってもらうと「ありがとうございます」と声をかける。
チラシは受け取らずに逃げるように歩き去る人もいれば受け取ったチラシに目を落としてくれる人もいる。
「良かったら是非ちんすこう作りを体験してみてくださいね」
わたしは笑みを浮かべた。
こうして、何人かに声をかけていると反応してくれる人も出てきた。
「ちんすこう作り楽しそう~」
ランドセルを背負った小学生の女の子がニコニコしながらチラシを眺めている。
「もし良かったら来てね」
「うん、お母さんに聞いてみるね。あ、お姉さんその割烹着可愛いね」
「あ、えっ? この割烹着可愛いかな?」
「うん、可愛いよ」
女の子はにっこりと笑った。
そうなのだ。わたし達はユニフォームである紫色の割烹着を着込みチラシを配っていたのだった。
「じゃあね!」と言って手を振り歩いていく女の子のランドセルがカタカタ揺れる後ろ姿をわたしはじっと眺めていた。
「愛可さん。この紫色の割烹着褒められましたね」
振り返ると紫色の割烹着を着た美川さんがニッと笑っていた。
「……ですね。褒められましたね」
「やっぱりこのユニフォームは俺達に似合っているんですね」
「……あはは」
紫色の割烹着が似合っていてもあまり嬉しくない。わたしは頬をひきつらせながら笑った。
「ねえ、あの子夏休みなのにどうしてランドセルを背負っているのかな?」
紫色の割烹着を着込んだきらりちゃんが首を傾げながら言った。
「あ、そういえばそうだね」
「あ、本当だ。流石、現役小学生のきらりちゃんは気がつくんだね」
「うん、だって夏休みなんだもん。ちょっと気になる子だね」
きらりちゃんは胸の前で腕組みをして、「う~ん、あの子ちんすこう作りに来るかな?」と言った。
「来るといいね」
わたしは、だんだん小さくなっていくランドセルを背負う女の子の後ろ姿を眺めた。
この後も暑い夏空の下何が嬉しいのか紫色の割烹着を着込んでチラシを配った。
「よし! 終了」
「全部配り終えましたね」
「暑かったよ~わたし喉が渇いたよ」
わたしときらりちゃんは紫色の割烹着をぽーいと脱ぎ捨て美川さんはフフンと鼻で笑った。
おばぁの『おばあちゃんのお菓子屋』に戻ると、
「外は暑かったよね。冷たいさんぴん茶をどうぞ~」
お盆にさんぴん茶の注がれたグラスを載せたおばぁが出迎えてくれた。
「ありがとうございます」
「おっ、暑かったのでちょうど良かったです」
「わたしさんぴん茶よりマンゴージュースが飲みたいんだけど」
出た! きらりちゃんのワガママが……。
「きらりちゃん、外は暑くて喉が渇いたんだから冷たいさんぴん茶はきっとスッキリするよ」
わたしはにっこりと笑いながら言った。
「スッキリするかもしれないけど今はマンゴージュースの気分なんだよね」
きらりちゃんはぷくりと頬を膨らませた。
「きらりちゃんはマンゴージュースが飲みたいのかい?」
「うん、おばぁわたしマンゴージュースが飲みた~い」
「そうかいな。じゃあ、マンゴージュースを持ってくるから待っていなさい」
おばぁはお盆をテーブルの上に置き店の奥に引っ込んだ。
「きらりちゃんはワガママだよ」
「えへへ」
きらりちゃんは頭を掻きながら笑っている。困ったものだ。
そして、わたしと美川さんはよく冷えたさんぴん茶を飲みきらりちゃんは満足げにマンゴージュースを飲んだ。
そんなわたし達をおばぁは目を細めて眺めていた。太陽が照りつける夏の空の下チラシを配って良かったなと思った。
よく冷えた爽やかなさんぴん茶が喉を潤した。今日のさんぴん茶はいつもより美味しく感じられた。
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