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ちんすこう作りのチラシ
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幸せの運び屋の事務所に戻るとサーターアンダギーと紫色の割烹着がわたし達を出迎えてくれた。
「……美川さん、これは何ですか?」
わたしは、テーブルの上にドーンと置かれた紫色の割烹着を指差しながら聞いた。
「あ、子供用サイズもある~」
きらりちゃんは瞳をキラキラさせているのだから信じられない。
「何ですかって見ての通りですが紫色の割烹着ですよ」
紫色の割烹着を着込んだ美川さんはふふんと胸を張る。
それと室内にはサーターアンダギーの甘い香りが漂っている。
「どうして用意されているんですか?」
「それはいざという時にいつでも紫色の割烹着を着られるためにですよ」
「……はぁ。そうなんですか」
「そうですよ。この紫色の割烹着もようやく日の目を見ることができましたよ」
自信満々な美川さんと紫色の割烹着を交互に見たわたしは深い、深~い溜め息をついた。わたし達は紫色の割烹着族になるんだね。
「さて、ユニフォームも決まったので俺は手作りちんすこうのチラシを作成するぞ~」
そんなわたしの気も知らないで美川さんは楽しそうだった。
それから美川さんは事務部屋に籠りチラシ作成を始めた。
「きらりちゃん、チラシが楽しみだね」
「うん、チラシも楽しみだけど紫色の割烹着もちょっと楽しみだな」
「えっ!? きらりちゃんはこの紫色の割烹着が着たいの?」
「うん、なんだか可愛いもん」
「あはは、信じられないよ」
わたしはテーブルの上にドーンと置かれている紫色の割烹着に目を向け溜め息をついた。
「そっかな可愛いよ。愛可も似合うんじゃないかな~」
「……似合ってもあんまり嬉しくないかも」
なんて話をしていると、
「チラシ完成しましたよ~」
美川さんが事務部屋のドアをばーんと開けて戻ってきた。
「わっ、チラシ完成したんですね」
「はい、これですよ」
美川さんは紫色の割烹着を脇によけチラシを置いた。
わたしときらりちゃんはそのチラシに目を向けた。
「わっ、なかなか良い感じですね」
「ちんすこうが食べたくなっちゃうね」
「それはありがとうございます」
チラシは、
『みんなで作ろちんすこう』と右側に書かれていてその左側にちんすこうの写真がありその下におばぁの駄菓子屋の写真とその右側にちんすこうとさんぴん茶の写真がある。
「きっと、おばぁが喜んでくれますね」
わたしはチラシを手に取りおばぁの嬉しそうな表情を思い浮かべた。
翌日わたし達はチラシと紫色の割烹着を持っておばぁの『おばあちゃんのお菓子屋』に行った。
この日は良い天気で夏の空の下ハイビスカスが風に揺れキラキラと輝いていた。
「おばぁ、こんにちは」
扉をガラガラと開け店の奥に声をかけた。
すると、おばぁが店の奥から出てきて、「おっ、また来てくれたんだね。いらっしゃい」と言って微笑みを浮かべた。
「チラシと割烹着を持ってきましたよ」
美川さんがチラシと紫色の割烹着が入っている紙袋を差し出した。
「おっ、早速チラシを作ってくれたんだね。ありがとう。割烹着とはなんだね?」
おばぁは受け取った紙袋の中身を見た。
「これは、割烹着ではないか! 割烹着までくれるのかい?」
紙袋から紫色の割烹着を取り出したおばぁは目を丸くしている。
「はい、おばぁにプレゼントしますよ。紫色の割烹着を着て元気よくちんすこう作りをしましょう」
美川さんはフフンと鼻息を荒くした。
「ありがとう。おばぁは嬉しいさあね。この紫色の割烹着を着てちんすこうを作るよ」
おばぁはニンマリと笑った。その表情はとても幸せそうで良かったなと思った。
「そうですよ。紫色の割烹着を着てみんなで楽しくちんすこうを作りましょう! 子供達もきっと笑顔になりますよ」
美川さんはそう言って笑顔を作ろうとしているみたいなんだけれど眉間に皺が寄っている。だけど、美川さんなりに精一杯の笑顔を浮かべているようだ。
「きっと楽しいちんすこう作りになりますね」
わたしもそう言ってにっこりと笑った。
「わたしもちんすこう作るの楽しみだよ」
きらりちゃんもニヒヒと言って笑った。
「みんなありがとう。おばぁは幸せだよ。そうだ、このチラシもありがとう」
おばぁは美川さんが作成したチラシに目を落とし嬉しそうに眺めていた。
「……美川さん、これは何ですか?」
わたしは、テーブルの上にドーンと置かれた紫色の割烹着を指差しながら聞いた。
「あ、子供用サイズもある~」
きらりちゃんは瞳をキラキラさせているのだから信じられない。
「何ですかって見ての通りですが紫色の割烹着ですよ」
紫色の割烹着を着込んだ美川さんはふふんと胸を張る。
それと室内にはサーターアンダギーの甘い香りが漂っている。
「どうして用意されているんですか?」
「それはいざという時にいつでも紫色の割烹着を着られるためにですよ」
「……はぁ。そうなんですか」
「そうですよ。この紫色の割烹着もようやく日の目を見ることができましたよ」
自信満々な美川さんと紫色の割烹着を交互に見たわたしは深い、深~い溜め息をついた。わたし達は紫色の割烹着族になるんだね。
「さて、ユニフォームも決まったので俺は手作りちんすこうのチラシを作成するぞ~」
そんなわたしの気も知らないで美川さんは楽しそうだった。
それから美川さんは事務部屋に籠りチラシ作成を始めた。
「きらりちゃん、チラシが楽しみだね」
「うん、チラシも楽しみだけど紫色の割烹着もちょっと楽しみだな」
「えっ!? きらりちゃんはこの紫色の割烹着が着たいの?」
「うん、なんだか可愛いもん」
「あはは、信じられないよ」
わたしはテーブルの上にドーンと置かれている紫色の割烹着に目を向け溜め息をついた。
「そっかな可愛いよ。愛可も似合うんじゃないかな~」
「……似合ってもあんまり嬉しくないかも」
なんて話をしていると、
「チラシ完成しましたよ~」
美川さんが事務部屋のドアをばーんと開けて戻ってきた。
「わっ、チラシ完成したんですね」
「はい、これですよ」
美川さんは紫色の割烹着を脇によけチラシを置いた。
わたしときらりちゃんはそのチラシに目を向けた。
「わっ、なかなか良い感じですね」
「ちんすこうが食べたくなっちゃうね」
「それはありがとうございます」
チラシは、
『みんなで作ろちんすこう』と右側に書かれていてその左側にちんすこうの写真がありその下におばぁの駄菓子屋の写真とその右側にちんすこうとさんぴん茶の写真がある。
「きっと、おばぁが喜んでくれますね」
わたしはチラシを手に取りおばぁの嬉しそうな表情を思い浮かべた。
翌日わたし達はチラシと紫色の割烹着を持っておばぁの『おばあちゃんのお菓子屋』に行った。
この日は良い天気で夏の空の下ハイビスカスが風に揺れキラキラと輝いていた。
「おばぁ、こんにちは」
扉をガラガラと開け店の奥に声をかけた。
すると、おばぁが店の奥から出てきて、「おっ、また来てくれたんだね。いらっしゃい」と言って微笑みを浮かべた。
「チラシと割烹着を持ってきましたよ」
美川さんがチラシと紫色の割烹着が入っている紙袋を差し出した。
「おっ、早速チラシを作ってくれたんだね。ありがとう。割烹着とはなんだね?」
おばぁは受け取った紙袋の中身を見た。
「これは、割烹着ではないか! 割烹着までくれるのかい?」
紙袋から紫色の割烹着を取り出したおばぁは目を丸くしている。
「はい、おばぁにプレゼントしますよ。紫色の割烹着を着て元気よくちんすこう作りをしましょう」
美川さんはフフンと鼻息を荒くした。
「ありがとう。おばぁは嬉しいさあね。この紫色の割烹着を着てちんすこうを作るよ」
おばぁはニンマリと笑った。その表情はとても幸せそうで良かったなと思った。
「そうですよ。紫色の割烹着を着てみんなで楽しくちんすこうを作りましょう! 子供達もきっと笑顔になりますよ」
美川さんはそう言って笑顔を作ろうとしているみたいなんだけれど眉間に皺が寄っている。だけど、美川さんなりに精一杯の笑顔を浮かべているようだ。
「きっと楽しいちんすこう作りになりますね」
わたしもそう言ってにっこりと笑った。
「わたしもちんすこう作るの楽しみだよ」
きらりちゃんもニヒヒと言って笑った。
「みんなありがとう。おばぁは幸せだよ。そうだ、このチラシもありがとう」
おばぁは美川さんが作成したチラシに目を落とし嬉しそうに眺めていた。
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