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八話目 あのおばさんの優しい温もり

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  おばさんのその目はとても優しくて綺麗だった。わたしはこの目を知っていると思った。そう思った自分自身にびっくりした。

  どうして初めて会った人の目を知っているなんて思ったのだろうか?

  でもやっぱり知っているそんな気がするのだった。

  おばさんと数秒間見つめ合ってしまった。

  このおばさんとどこかで会ったかなと考えながらわたしは沖縄ちゃんぽんを食べた。この野菜のシャキシャキ感と玉ねぎの味がなんだか懐かしい。

  幸せな気持ちと切なさが混じり合う。わたしは笑顔で沖縄ちゃんぽんを食べたつもりだったのだけど。

「お嬢さん、泣いているんですか?」

  その声にわたしは顔を上げた。

  すると、おばさんが優しい眼差しでわたしを見ている。やっぱりこの目を知っていると思いながら自分の頬に手を触れると涙がつたっていた。

「あ、あの!」、「もしかして」とわたしとおばさんはほぼ同時に叫んだ。

  お母さんやおばぁにそれからきらりちゃんも不思議そうにわたしとおばさんを見ていた。

「わたしに沖縄ちゃんぽんを食べさせてくれた食堂のおばさん!」、「美味しそうに沖縄ちゃんぽんを食べてくれた愛可ちゃん!」

  と、わたしとおばさんはまたまたほぼ同時に叫んだ。

  そして、お互いの目を見て笑い合った。

  そうなのだ。このおばさんは、わたしに笑顔でご飯を食べることを教えてくれたあのおばさんではないか。

  ずっと、ずっと、会いたかったおばさんだ。悲しくて辛くて泣いていたわたしに優しくしてくれたあのおばさんだ。

  わたしは、このおばさんと出会い笑顔でご飯を食べる幸せを知ったのだ。

  お母さんが帰って来なくて公園のベンチで泣いていたわたしに温かい手を差し伸べてくれた。あの手の温もりを忘れたことはなかった。

  それからこの玉ねぎの味なのか甘くて美味しくて優しい沖縄ちゃんぽんの味を思い出した。

「おばさん、ずっと会いたかったです」

  わたしは、おばさんのその優しい顔を見て言った。

「わたしも愛可ちゃんにずっと会いたかったのよ」

  おばさんは柔らかい微笑みを浮かべわたしの顔を見た。

「おばさん、あの時はありがとうございました。わたしおばさんに出会えたおかげで笑顔でご飯を食べることができるようになりました」

  ずっと、ずっと、言いたかった気持ちを言える日が来るなんて嬉しくて涙がぽろりと流れた。
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