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おばさんと出逢えた奇跡

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「愛可ちゃん、わたしの方こそずっとお礼を言いたかったのよ」

「えっ?  おばさんがですか」

  わたしが聞くとおばさんは、

「だって、愛可ちゃんがわたしの料理を褒めてくれたのよ。おばさんの美味しい料理が並ぶと人気の食堂になるはずだよって言ってくれたでしょ。それにおばさんのお母さんも喜んでくれるって、おばさん本当に嬉しかったのよ」

  おばさんは、そう言って嬉しそうに目を細めた。

「あ、言ったと思います。おばさんの作ってくれた沖縄ちゃんぽんはとっても美味しくて優しい味がしたんですもん」

  あの日あの食堂で食べさせてもらった沖縄ちゃんぽんがわたしの目の前に蘇り幸せな気持ちになった。

  そして、今、食べているこの沖縄ちゃんぽんもあの頃と変わらない優しい味がするのだった。

「ありがとう愛可ちゃん。あなたのおかげでおばさんは頑張れたのよ」

  おばさんは、わたしの目を真っ直ぐ見て言った。

  まさかそんなことを言ってもらえるとは夢にも思っていなかったので嬉しくてそして、驚いた。

「そんな……そう言ってもらえて嬉しいです」

  わたしも、おばさんの目を真っ直ぐ見て微笑みを浮かべた。

  それから、沖縄ちゃんぽんを食べているお母さんをそっと見た。

  なんだかお母さんとおばさんが同じ空間にいてしかもこの食堂でお母さんが働いているなんて不思議でそして奇跡を感じた。

  人生はいろいろな繋がりがあり不思議だ。今日お母さんに勇気を出して電話をしたからお母さんとそして、おばさんとも会えた。

  わたしの視線に気がついたお母さんは、「愛可と森浜さんは知り合いだったのね」と言った。

  わたしは、「うん、そうだよ。とても優しくしてくれたんだよ」と答えた。
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