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美川さんの笑顔

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「愛可ちゃん、よしお君は、人に幸せな気持ちになってもらい笑顔になってもらえる仕事を成功させたいと言っていたのよ」

  それまで黙っていたおばさんが言った。

「それって、やっぱり美川さんらしいのかな?」

「うふふ、そうよ。本人は仏頂面なんだけどね。よしお君は本当は優しいのよ」

「確かに美川さん本人は仏頂面ですよね。だけど、みんなに元気になってもらいたいと思っているその気持ちは本物ですよね」

  きっと、美川さんの人に喜んでもらいたいなと思っているその気持ちに嘘はないだろうなと思う。根は優しい人なのだ。

「わたしが話した愛可ちゃんのことをよしお君は何度も聞いてきて、俺はその愛可ちゃんを見つけたいですよと言っていたのよ」

  そう言って笑うおばさんのその顔はキラキラと輝いていた。

  わたしとおばさんの出会いは美川さんへと繋がっていたんだね。人生は不思議な繋がりがありそして素晴らしいなと思った。


「あははっ、仏頂面は余計ですけどね」

「あ、美川さん、今、ちょっと笑いましたね」

「うふふ、よしお君の頬が緩んでいるわね」

  わたしと、おばさんは顔を見合わせ笑い合った。

「あ、俺としたことが笑ってしまったじゃないですか」

  美川さんはそう言って頬に手を当てた。

「美川さん、笑顔になりたいんじゃないですか?」

「そうよ、人に笑顔になってもらいたいよしお君が笑わなくてどうするのよ」

「あはは、そうでしたね。この何十年ご飯を食べている時しか笑っていなかったので……ちょっと焦ってしまいました」

  美川さんは、そう言って照れたように頭を掻き微かな笑みを浮かべた。普段滅多に笑わない美川さんのその笑みはとても綺麗だった。

「あ、美川さんが笑っているよ~」

  きらりちゃんが美川さんを指差し言った。

「ちょっときらりちゃん、そんな珍しいものを見るみたいに指を差すなよ」

  美川さんはいつもの無表情に戻り言った。

「だって、本当のことだもんね。あ、でも美川さんは笑っている方が格好いいよ~。あ、おじさんだけどね」

「それはありがとう。っておじさんかよ。俺はまだ、二十代なんだぜ」

「充分おじさんだよ」

  なんて会話を続けるきらりちゃんと美川さんを見ていると微笑ましい気持ちになった。
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