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大切な場所
しおりを挟むまだまだ、わたしとお母さんにそれからおばぁも完全に分かり合えたわけではないけれど、わたし達の親子関係は一歩前進したかなと思う。
今日は本当に良い日だった。おばさんの沖縄ちゃんぽんは美味しくてそして、色々な話を聞くことが出来た。
「愛可ちゃん、またいつでも来てね」
「はい、また、おばさんの美味しい料理を食べに来ますね」
「うふふ、ありがとう」
おばさんのその笑った表情はとても優しくて小さなわたしに手を差し伸べてくれたあの日の笑顔と重なって見えた。
「こちらこそですよ」
わたしは、にっこりと笑った。
そして、大切な場所がまた一つ増えたことに幸せを感じた。
「お母さん、また来るね」
「うん、いつでも来てね。わたしの食堂じゃないけどね」
森浜食堂の前でお母さんが笑いながら手を振った。
「あはは、お母さん従業員さん頑張ってね」
わたしも笑いながら手を振った。こんな風に笑い合える日がやって来るなんて嬉しくてたまらなかった。
その時、
「里可、今日は家に泊まっていかないのかい?」とおばぁが言った。
「えっ?」
お母さんはおばぁの言葉にびっくりしたように目を丸くしている。
「久しぶりに良いでしょ? 森浜食堂さんには家から出勤できるよね」
「……あ、うん」
「幸川さん、お母さんの家でゆっくりしてきたら良いじゃないですか?」
おばさんがそう言ってお母さんの肩を優しく叩いた。
「……あ、はい」
「愛可のお母さん、おばぁの家に帰りましょう~」
きらりちゃんがゴーヤをぶんぶん振り回しながら言った。
「そうだよ。おばさんもきらりちゃんも言ってくれてるよ~わたしもお母さんにおばぁの家で一緒に泊まりたい」
わたしは、お母さんの顔を真っ直ぐ見て言った。
「あ、うん、じゃあ、そうするわね」
お母さんはゆっくりとこちらに向かって歩いてきた。
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