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ミケとわたし達
高男さん
しおりを挟むミケを見ると口の周りにソースとマヨネーズにカレールーがべったりくっついたままで笑える顔なんだけれど、肉球のある可愛らしい手を胸に当てているその姿は可愛らしくて胸がぽわんと温かくなる。
続いて真昼ひいおばあちゃんに目を向ける。真昼ひいおばあちゃんは柔らかい笑みを浮かべている。
その姿は今もまだ少女姿なんだけれど、なぜだか懐かしさがじわじわと込み上げてくる。これは、ミケから伝わってくるものなのだろうか?
それから、おばあちゃんに視線を向ける。おばあちゃんは顎に手を当てて何かを考えているようだ。その視線は何処か遠くを見つめているように見えた。
お次は、ムササビを見る。頬を緩め優しい表情だった。ムササビはやはり何十年も前からその姿は変わっていない。不思議な存在だ。
最後は高男さんだ。左右対称の整った顔立ちにくっきりした二重の瞳が綺麗な高男さんを見る。やはり男性なのに美しいなと見惚れてしまいそうになる。ってそんな場合じゃない!
そうだ、高男さんはわたしが幼き頃はこのカフェにはいなかったはずだ。
「高男さん……」
「ん? 真歌さんどうしましたか?」
高男さんは小首を傾げわたしを見る。その目は濁りがなくて澄んでいた。ムササビカフェにいる人や動物の目はみんな綺麗だなと感じた。
「あ、えっと、その……高男さんはここでいつから働いているんですか? ま、まさか高男さんもあやかしなんてことないですよね? あ、でも、違うか。ムササビちゃんは居たけど高男さんはいなかったもんね。いや、不在だっただけとか……あ~でもなんか頭が混乱するよ」
「真歌さん、そんな一気に話されると何が何やらわからないですよ」
高男さんはククッと可笑しそうに笑った。
ああ、わたしってば興奮してしまいなんだか恥ずかしいではないか。
「あ、ごめんなさい」
「いや、謝ることじゃないですけどね。それと、俺はあやかしではありませんよ。普通の人間ですよ」
「人間でしたか」
「はい、人間ですよ」
「ですよね……」
「はい、ですよ」
ああ、人間なのか確認し合う会話って一体なんだろう。わたしはなんだか可笑しくて笑ってしまった。
高男さんが人間であると確認出来たけれど、まだこの不思議な現象が何なのか謎は解けていない。
「あの、それで高男さんはこのムササビカフェ食堂でいつから働いているんですか?」
これはわたしの中でかなり気になる重要な部分だ。
「え~と、何年になるかな?」と高男さんは言いながら指を折りながら年数を数えている。
そして、「二十年前からかな?」と言ったのだ。
「に、二十年前!! ってウソでしょ?」
「いいえ、恐らく二十年くらい前からかなと思いますよ」
「だ、だって、高男さんはわたしと同い年の二十五歳なんですよね? ま、まさか、やっぱりあやかしですか? それとも仙人だとか!」
わたしは、目を大きく見開きながら叫ぶように言った。
「……真歌さんはどうしても俺をあやかしにしたいんですね。それに仙人ってなんですか?」
高男さんは呆れたように笑いわたしを見る。
「違うんですか?」
「はい、もちろんあやかしでも仙人でもなくて俺は普通の人間ですよ」
「ですよね……」
「もちろん」
「じゃあ、二十年前からってどういうことですか?」
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