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貴方の大切な人②
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「おはようございます。あの、今日は玉子のお粥を持ってきたんですけど…」
「マジですか。僕、玉子好きなんですよね」
そう答える西野さんは、既に起き上がり、普段着に着替えていた。シャワーも浴びたようで、石鹸の香りがする。
「あの、熱は…?」
「36.5℃でした。あ、体温計ありがとうございました」
「げ、元気なんですか…?」
「すみません、心配かけて。僕、昔からこうなんですよね。一気に熱出てすぐ下がるっていうか…」
「ふ、普通のご飯の方が良かったですかね…」
「いえ、玉子粥、好きだから嬉しいです」
そう言って微笑む西野さんは、すっかりいつも通りの西野さんだった。
「あの…、昨日、あたしが帰ったときのことって、覚えてます…?」
「あ、すみません。僕、寝ちゃってましたよね。何か困ったこととかありました?」
「な、何にもないです…!お粥っ、どうぞ…!」
「美味しそうですね。ありがとうございます」
嬉しそうに玉子粥を食べ始める西野さんに、ふとテレビの方へ視線を移すと、昨日はそこにあったペアリングが消えていた。
" 美月─… "
昨夜の西野さんの声が、耳に残っている。こんなに優しい西野さんがもし哀しい何かを抱えているなら、少しでも早く癒えるといいのに。
◇
「あの、栗原さん」
「はい…?」
「ご迷惑かけて、すみませんでした」
玉子粥をペロリと食べきった後、西野さんが髪を掻きながら、申し訳無さそうにそう謝る。
「いえ、全然…!先に助けて貰ったのはあたしですし、お役に立てて良かったです!」
そう、あたしの方が迷惑を掛けすぎている。そのせいで西野さんに風邪を引かせたのだし、これぐらいの看病はなんでもない。
「あの、迷惑ついでって言ったら図々しいかもしれないんですけど…」
「あ、何でも言ってください!まだ病み上がりですし!買い物とかですか?」
「はい。調理器具とか体温計とか、日常生活ができる最低限の物をちゃんと揃えようかと思って。ただ、僕、最低限にいる物っていうのが、ピンと来なくて…。一緒に買いに行ってもらえたらなと」
そう言いながら、西野さんが恥ずかしそうに苦笑した。
近所のホームセンターは、ここからたった5分だ。西野さんだって、日用品を揃える以外の他意がないからあっさりあたしに頼むのだろう。
別に、あたしに彼氏がいるのも知ってるしね。同僚で隣人なわけだし、一緒に行くぐらい、普通だよね…?
「マジですか。僕、玉子好きなんですよね」
そう答える西野さんは、既に起き上がり、普段着に着替えていた。シャワーも浴びたようで、石鹸の香りがする。
「あの、熱は…?」
「36.5℃でした。あ、体温計ありがとうございました」
「げ、元気なんですか…?」
「すみません、心配かけて。僕、昔からこうなんですよね。一気に熱出てすぐ下がるっていうか…」
「ふ、普通のご飯の方が良かったですかね…」
「いえ、玉子粥、好きだから嬉しいです」
そう言って微笑む西野さんは、すっかりいつも通りの西野さんだった。
「あの…、昨日、あたしが帰ったときのことって、覚えてます…?」
「あ、すみません。僕、寝ちゃってましたよね。何か困ったこととかありました?」
「な、何にもないです…!お粥っ、どうぞ…!」
「美味しそうですね。ありがとうございます」
嬉しそうに玉子粥を食べ始める西野さんに、ふとテレビの方へ視線を移すと、昨日はそこにあったペアリングが消えていた。
" 美月─… "
昨夜の西野さんの声が、耳に残っている。こんなに優しい西野さんがもし哀しい何かを抱えているなら、少しでも早く癒えるといいのに。
◇
「あの、栗原さん」
「はい…?」
「ご迷惑かけて、すみませんでした」
玉子粥をペロリと食べきった後、西野さんが髪を掻きながら、申し訳無さそうにそう謝る。
「いえ、全然…!先に助けて貰ったのはあたしですし、お役に立てて良かったです!」
そう、あたしの方が迷惑を掛けすぎている。そのせいで西野さんに風邪を引かせたのだし、これぐらいの看病はなんでもない。
「あの、迷惑ついでって言ったら図々しいかもしれないんですけど…」
「あ、何でも言ってください!まだ病み上がりですし!買い物とかですか?」
「はい。調理器具とか体温計とか、日常生活ができる最低限の物をちゃんと揃えようかと思って。ただ、僕、最低限にいる物っていうのが、ピンと来なくて…。一緒に買いに行ってもらえたらなと」
そう言いながら、西野さんが恥ずかしそうに苦笑した。
近所のホームセンターは、ここからたった5分だ。西野さんだって、日用品を揃える以外の他意がないからあっさりあたしに頼むのだろう。
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