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失恋の理由⑤
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「西野さんが謝る必要はないです…!」
頭を下げた西野さんに驚いて、慌ててそう答える。西野さんが謝らなきゃいけない理由は何もない。むしろ悠真の浮気現場を見た瞬間、あたしの気持ちを西野さんは誰よりもわかっていたのかもしれない。
「あたしの方こそ…、西野さんは関係ないなんて言って…、ごめんなさい…」
西野さんみたいに格好良い人は、浮気なんてされないんだろうなと思っていた。失恋しても簡単に次が見つかるんだろうなとも。
西野さんが美月さんのことを忘れられないでいるのを、わかっていたはずなのに。
「いや、実際、関係ないのは事実ですから」
そう言って、西野さんが苦笑する。なんで、関係ないなんて言ってしまったんだろう。何度も助けてもらった。いつも励ましてもらっていたのに。
「…自分には栗原さんに口を出す権利がないのはわかっています。でも…」
西野さんの瞳が、真っすぐあたしを見つめる。
「彼との関係を続けても、そこに栗原さんの幸せはないと、自分は思います」
「……っ」
「栗原さんが彼を一生懸命好きだったのは知っています。でも、そんなふうに人を愛せる栗原さんなら、選ぶべきなのは彼じゃない」
西野さんのその言葉に、視界が潤む。早朝の通勤路。こんな場所で泣いたら駄目だ。そう思ったのに、溢れるそれを止められなかった。
「す、すみません…、泣くつもりでは…」
「いえ。僕の方こそ、朝からこんな話をして、すみません。これ、使ってください」
そう言って、差し出された紺色のハンカチ。受け取ったそれは、優しく笑う西野さんみたいに、陽だまりの匂いがした。
◇
" 話があるの。いつなら会える?"
昼休み、悠真にそうメッセージを送る。少なからず気が重いなと思いながら溜息をつくと、すぐに「既読」マークがついてドキッとする。だけど、悠真から返事は来なかった。
「ねぇ、杏奈先輩」
「んー…?」
お弁当を食べている芽衣ちゃんに内緒話の仕草をされて、なんだろう?と耳を寄せる。
「今朝、西野さんと一緒に来てましたよね?」
「え、うん…」
「西野さんめっちゃ笑ってましたけど、仲直りしたんですか…?」
「よ、よく見てるね、芽衣ちゃん…」
芽衣ちゃんに見られていたとは。しかも西野さんの表情まで。相変わらず芽衣ちゃんは目聡い。
「昨日の女性のこと、何か言ってました?」
「─…っ!」
あの人が美月さんだったことは西野さんから聞いた。別れた理由も。だけど、それは西野さんのプライベートなことで、すべてを芽衣ちゃんには話すことはできない。
「えっと…、芽衣ちゃんの読み通り、元カノだったみたい…」
「…やっぱり! 何か他に聞き出せました?」
「い、いや。特には…」
無難にそう答えると、芽衣ちゃんが残念そうな顔をした。
「ちなみに、ゲス男とはちゃんと別れられそうですか?」
「…うん。さっきメッセージを送ったから、数日中に会って話をするつもり」
「なんなら、あたし立ち会いますよ」
「大丈夫、ありがとう」
そう言って、芽衣ちゃんに微笑んだ。
頭を下げた西野さんに驚いて、慌ててそう答える。西野さんが謝らなきゃいけない理由は何もない。むしろ悠真の浮気現場を見た瞬間、あたしの気持ちを西野さんは誰よりもわかっていたのかもしれない。
「あたしの方こそ…、西野さんは関係ないなんて言って…、ごめんなさい…」
西野さんみたいに格好良い人は、浮気なんてされないんだろうなと思っていた。失恋しても簡単に次が見つかるんだろうなとも。
西野さんが美月さんのことを忘れられないでいるのを、わかっていたはずなのに。
「いや、実際、関係ないのは事実ですから」
そう言って、西野さんが苦笑する。なんで、関係ないなんて言ってしまったんだろう。何度も助けてもらった。いつも励ましてもらっていたのに。
「…自分には栗原さんに口を出す権利がないのはわかっています。でも…」
西野さんの瞳が、真っすぐあたしを見つめる。
「彼との関係を続けても、そこに栗原さんの幸せはないと、自分は思います」
「……っ」
「栗原さんが彼を一生懸命好きだったのは知っています。でも、そんなふうに人を愛せる栗原さんなら、選ぶべきなのは彼じゃない」
西野さんのその言葉に、視界が潤む。早朝の通勤路。こんな場所で泣いたら駄目だ。そう思ったのに、溢れるそれを止められなかった。
「す、すみません…、泣くつもりでは…」
「いえ。僕の方こそ、朝からこんな話をして、すみません。これ、使ってください」
そう言って、差し出された紺色のハンカチ。受け取ったそれは、優しく笑う西野さんみたいに、陽だまりの匂いがした。
◇
" 話があるの。いつなら会える?"
昼休み、悠真にそうメッセージを送る。少なからず気が重いなと思いながら溜息をつくと、すぐに「既読」マークがついてドキッとする。だけど、悠真から返事は来なかった。
「ねぇ、杏奈先輩」
「んー…?」
お弁当を食べている芽衣ちゃんに内緒話の仕草をされて、なんだろう?と耳を寄せる。
「今朝、西野さんと一緒に来てましたよね?」
「え、うん…」
「西野さんめっちゃ笑ってましたけど、仲直りしたんですか…?」
「よ、よく見てるね、芽衣ちゃん…」
芽衣ちゃんに見られていたとは。しかも西野さんの表情まで。相変わらず芽衣ちゃんは目聡い。
「昨日の女性のこと、何か言ってました?」
「─…っ!」
あの人が美月さんだったことは西野さんから聞いた。別れた理由も。だけど、それは西野さんのプライベートなことで、すべてを芽衣ちゃんには話すことはできない。
「えっと…、芽衣ちゃんの読み通り、元カノだったみたい…」
「…やっぱり! 何か他に聞き出せました?」
「い、いや。特には…」
無難にそう答えると、芽衣ちゃんが残念そうな顔をした。
「ちなみに、ゲス男とはちゃんと別れられそうですか?」
「…うん。さっきメッセージを送ったから、数日中に会って話をするつもり」
「なんなら、あたし立ち会いますよ」
「大丈夫、ありがとう」
そう言って、芽衣ちゃんに微笑んだ。
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