【完結】ろくでもない初恋を捨てて ※番外編更新中

緑野 蜜柑

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【番外編】大切にしたくて③

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「こんな洋服より高い下着、着たことないんだけど…」

家に帰り、芽衣ちゃんがくれたベビーピンクの下着を袋から出して眺める。可愛い。可愛いけど、これを着るのが自分だと思うと複雑な気分。

そもそも、まだ一度も抱いてもらえていないというのに、こんなのを着ていたら、あたしばっかりやる気みたいだ。

ずっとあたしのことを気遣ってくれているのだと思っていた。だけど、一つだけ、気になっていることがある。それは、元カノの美月みつきさんのことだ。

綺麗な人だった。美人でスタイルも良くて、背が高くて細いけど、ちゃんと出る所は出ていて、あんな人を抱けたら男性は幸せだと思う。

その後に付き合うのがあたしって、西野さん的にはどうなんだろう…? 正直、全然勝てる要素がないというか、勝てる所があると思う事すらおこがましいというか…

抱いてくれないのは、その辺りも関係しているのだろうか。美月みつきさんと比べたら、あたしに対しては、そういう気が起きないのかもしれない。

「……」

もう一度、芽衣ちゃんから貰った下着に視線を移す。あたしが着たところで、焼け石に水かもしれない。でも、何か打開策が欲しいのも事実。

勇気を出して着てみようか…



週末の土曜日。お昼前に西野さんとマンションを出て、駅前で軽くランチをした後、映画を見に行った。

正直、映画の内容はほとんど頭に入って来なかった。この後のことで、頭がいっぱいで。

「面白かったですね、映画」
「そ、そうですね…!」
「夜ごはん、どうしましょうか。栗原さん、何か食べたい物あります?」

西野さんのその言葉にドキッとする。落ち着いて、あたし…

「あの、うちに来ませんか…?」
「え…?」
「今夜は、あたしが作れたらと…」

そう言いながら、おず…と西野さんを見る。これなら不自然ではないんじゃないだろうか、と思いながら。

「え…、それは…」
「だ、駄目ですか…?」
「いえ、そうではなくて…。栗原さんの手料理を食べられるということですか…?」
「は、はい…!」

驚いた顔をしてあたしを西野さんが見る。やっぱりどこか不自然だった…?

「ちなみに、何の手料理を…?」
「あ、ハンバーグにしようかと…」
「ハンバーグ…」
「べ、別のものでも、全然…!」
「いえ。最高です、それは…」

そう答えた西野さんは、嬉しそうに口を押さえる。その表情がなんだか可愛かった。
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