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〜8. それぞれの思惑〜
クラウスの想い人
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「あぁ、そうだ」
用事を済ませ、執務室を出ていこうとしたクラウス王子が、何かを思い出したように振り返った。
「リディアが、アンタと話せて嬉しかったと言っていた」
「え…?」
「王城の図書館で会っただろ?」
「あ…、えぇ。ご存じだったのですね」
「アンタの話を小一時間ほど聞かされたからな」
クラウス王子は嫌味混じりに私にそう言った。
「それは、失礼しました…」
「いや、別にアンタを責めるつもりはないけど」
そう言ってクラウス王子がふいっと横を向く。その瞬間、髪の下に垣間見えたクラウス王子の耳が赤いことに気が付いた。
この反応は以前にも見覚えがある。それは彼がサイラス殿下を慕っていることを知った時だった。ツンデレ気質のクラウス王子は、あの時も同じように耳を赤くして、素っ気ない態度を取っていた。
でも、私とルバートしかいない今は、耳を赤くする理由なんて…。そう思った瞬間、一つの考えに行き着いた。つまり、クラウス王子は婚約者であるリディア様に想いを寄せているのではないかしら、と。
それはある意味、当たり前のことなのかもしれない。だって、あんなに可愛らしい方が婚約者だったら、惚れない方がおかしい。
でも、リディア様はサイラス殿下と想い合っているはずだ。これだけ近くにいたら、クラウス王子も気付かないはずがない…
「リディアはアンタを気に入ったみたいだから、仲良くしてやってくれ」
「それは、もちろん…」
そう答えた私にクラウス王子が微笑む。その表情は、いつものどこか意地悪なものではなく、彼女への慈愛に満ちていた。
◇
「ねぇ、ルバート…」
クラウス王子が執務室を去った後、私は執事のルバートに尋ねた。
「はい。なんでしょう?」
「クラウス殿下は、リディア様を好きなのね…?」
その言葉に本棚を整理するルバートの手が止まった。
「…よく気付かれましたね」
驚いたような顔をして、ルバートは私にそう言った。
「えぇ。クラウス殿下はわかりやすいタイプだから…」
「確かにそうですが…、ロザリア妃殿下はこういったことには疎いものと思っておりました」
「え…?」
ルバートの言葉に首を傾げる。それは一体どういう意味だろう。
「私、人の心に疎いつもりはないのだけど…」
「あ…、そ、そうですよね…」
「何か、煮え切らない返事ね?」
「いえ…っ、そんなことは全く…!」
慌ててルバートが否定する。なんだか少し腑に落ちないなと思いながらルバートを見ると、ふいっと視線を逸らされた。
「ルバート…?」
「何でもないですから」
「その割には態度が不自然だわ」
そう問い詰めるとルバートは数秒考えて、私に尋ねた。
「では、お聞きしますが…、サイラス殿下の御心には気付かれていらっしゃいますか?」
その質問に、一瞬、戸惑う。私と結婚した思惑のことだろうか。それとも、サイラス殿下もまた、リディア様を愛しているということだろうか…
いや、そんなことを答えても、何の意味もない…
「…妻として、殿下は私を大切になさってくれていると思うわ」
返したのは無難な言葉。何事もないように微笑む。
「…そうですね」
私の言葉にそう答えたルバートは、すべてを知るかのように、優しく微笑んだ。
用事を済ませ、執務室を出ていこうとしたクラウス王子が、何かを思い出したように振り返った。
「リディアが、アンタと話せて嬉しかったと言っていた」
「え…?」
「王城の図書館で会っただろ?」
「あ…、えぇ。ご存じだったのですね」
「アンタの話を小一時間ほど聞かされたからな」
クラウス王子は嫌味混じりに私にそう言った。
「それは、失礼しました…」
「いや、別にアンタを責めるつもりはないけど」
そう言ってクラウス王子がふいっと横を向く。その瞬間、髪の下に垣間見えたクラウス王子の耳が赤いことに気が付いた。
この反応は以前にも見覚えがある。それは彼がサイラス殿下を慕っていることを知った時だった。ツンデレ気質のクラウス王子は、あの時も同じように耳を赤くして、素っ気ない態度を取っていた。
でも、私とルバートしかいない今は、耳を赤くする理由なんて…。そう思った瞬間、一つの考えに行き着いた。つまり、クラウス王子は婚約者であるリディア様に想いを寄せているのではないかしら、と。
それはある意味、当たり前のことなのかもしれない。だって、あんなに可愛らしい方が婚約者だったら、惚れない方がおかしい。
でも、リディア様はサイラス殿下と想い合っているはずだ。これだけ近くにいたら、クラウス王子も気付かないはずがない…
「リディアはアンタを気に入ったみたいだから、仲良くしてやってくれ」
「それは、もちろん…」
そう答えた私にクラウス王子が微笑む。その表情は、いつものどこか意地悪なものではなく、彼女への慈愛に満ちていた。
◇
「ねぇ、ルバート…」
クラウス王子が執務室を去った後、私は執事のルバートに尋ねた。
「はい。なんでしょう?」
「クラウス殿下は、リディア様を好きなのね…?」
その言葉に本棚を整理するルバートの手が止まった。
「…よく気付かれましたね」
驚いたような顔をして、ルバートは私にそう言った。
「えぇ。クラウス殿下はわかりやすいタイプだから…」
「確かにそうですが…、ロザリア妃殿下はこういったことには疎いものと思っておりました」
「え…?」
ルバートの言葉に首を傾げる。それは一体どういう意味だろう。
「私、人の心に疎いつもりはないのだけど…」
「あ…、そ、そうですよね…」
「何か、煮え切らない返事ね?」
「いえ…っ、そんなことは全く…!」
慌ててルバートが否定する。なんだか少し腑に落ちないなと思いながらルバートを見ると、ふいっと視線を逸らされた。
「ルバート…?」
「何でもないですから」
「その割には態度が不自然だわ」
そう問い詰めるとルバートは数秒考えて、私に尋ねた。
「では、お聞きしますが…、サイラス殿下の御心には気付かれていらっしゃいますか?」
その質問に、一瞬、戸惑う。私と結婚した思惑のことだろうか。それとも、サイラス殿下もまた、リディア様を愛しているということだろうか…
いや、そんなことを答えても、何の意味もない…
「…妻として、殿下は私を大切になさってくれていると思うわ」
返したのは無難な言葉。何事もないように微笑む。
「…そうですね」
私の言葉にそう答えたルバートは、すべてを知るかのように、優しく微笑んだ。
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