神の手違いで女子に転生してしまった俺の話聞きます??

蒼霧雪枷

文字の大きさ
12 / 16
一章 転生しました

11。サボってたら呼び出し食らった

しおりを挟む
 傍迷惑な自称神が来た日から数日後。俺は言われた通り、自由気ままに元気に旅を─

 ─している訳ではないんだな、これが。

 初めに言ったはずである。「俺は自堕落に暮らしたい」と。あの神にはその通りの要望をしたはずなんだ。なのになぜ旅に出なければならない。
 いくら転生してから既に16年経っていたと言っても、精神的にはまだ数週間。未だに社畜を引きずっていて、もうちょっとだけ、もうちょっとだけ休みたい…と、ずるずる出立を延ばしている。

 勿論、オニキスには呆れられたし叱られた。日に日にオカン度が上がっていく彼は、料理を教えたら数日で習得してしまった。マジか。
 いや、興味本意だったんだ。ハンバーグ食べたいって言うから、じゃあ作ってみる?って冗談半分で言ってみただけなんだ。なのにさぁ…

「何だ、薬の調合とあまり変わらないんだな」
「は?」
「出来たぞ」
「マジで?……うわうまっ!!」

 って、俺より旨いの作られた。ちょっとショックである。嘘だろ、オニキスさん…プロかよお前。
 でも、カインにはとても不評だった。何か、俺の方があったかくて美味しいらしい。それは何だ?お母さんのご飯とファミレスのご飯的な違いか?それはそれで何か複雑なんですが。

 そんなカインは、俺が旅に出ないことについては特に何も言ってこなかった。
 俺からどう思っているのかを聞いたら、こう返ってきた。

「レイちゃんが良いならボクは何も言わないよぉ。何かあればボクが守るしぃ。ただ、気を付けてねぇ?」

 とのこと。何に気を付ければいいんだろうと考えつつ、結局何も変わらずに過ごした数日間。
 やはり、旅に出ておけば良かったと思った時にはもう遅かった。

「レイ・マルグス、及びカイン・グラトニー、オニキスの以下三名を我が屋敷へと召喚す。魔国『イーラ領』オスカー・ドレッド……だ、そうだ」

 今オニキスが読み上げたものは、夕方狩りから帰ってきたら玄関のドアに挟まっていた手紙である。深紅の封筒に入っていた手紙は白く、封筒と同じ深紅のインクで書かれた文章。ちょっとどころか、かなり不気味だと思った。
 しかし、他の二人は顔をしかめるだけに終わっている。え、ビビってんの俺だけ?
 二人の顔を伺っていれば、オニキスがため息をついて手紙を封筒にしまった。

「彼奴、いつ俺の名前を知ったんだ…?」
「オニキス、このオスカーって人と知り合いなのか?」
「あぁ、まぁ、知り合いではある。こいつはあれだ。そこのオレンジ頭の仕事仲間だ」
「マジで!?」

 思わずカインを見れば、少し体が凍った。
 いつもふにゃりと笑っている口元は不機嫌そうに結ばれており、前髪で見えないはずの目が冷ややかに感じられ、背後に鬼が見えた気がした。何、怖い。

「はっ。怯えられてるぞ、癖っ毛」
「うるさい、真っ黒。はぁ…あの野郎、手ぇ出すなっつったのに…」
「か、カインさん…?」
「ん~?なぁに?レイちゃん」
「い、いえ…ナンデモナイデス…」

 俺の方を向いた瞬間に黒いのが四散した。いつも通りの笑顔だが、逆に怖い。
 何でだろう。とても差出人について聞きたいのだが、聞いてはダメな気がするんだ。うん。

「…気になるって顔に書いてあるぞ、レイ」
「えっ。うん、いやぁ…言いたくないならいいんだけど…」
「別に減るもんでもあるまい。このオスカーと言うやつは……」

「─それ以上言ったら今すぐ消すぞ、オニキス」

 低い声がオニキスの言葉を遮った瞬間、空気が凍った。比喩ではない。カインから物凄い冷気が発せられ、部屋の中は真冬の夜より冷えている。室内だと言うのに風が緩く渦巻き、俺は少しも動く事ができない。
 カインから発せられているのは冷気だけではない。俺は向けられた事がないから分からないが、本能が察する。
 これは殺気だと。このままだと、

「……はぁ。そんなに殺気立つな。俺はともかく、レイの体に障る」
「……………ごめんねぇ、レイちゃん」

 ふっ…と、室温が元に戻る。同時に殺気も消えたが、俺の体はもはや冷えきっていた。今さら震え出した体を、思わずそっと抱き締める。
 声が出ない。息をするのだけでやっとだった。俺は今、自分の立ち位置がよく分かっていない。バグっているようなHPやMPで、自分が強いんだろうという自覚はある。
 自惚れとかではなく、事実として自分が強い部類に入っているだろうことは分かっていた。
 しかし、それでも今のは耐えられなかった。ステータスは俺の方が高いと言っていたオニキスが平気だったのに、だ。

 圧倒的な差。それを今、見せつけられた。

 ステータスの問題じゃない。そんなもの、この二人のレベルになると誤差のようなものなんだろう。そんなもの、飾りに過ぎないんだ。
 経験と場数の差。今のはそれだ。この二人は、ぬるま湯のような世界で生きてきた俺とは違う。きっと、殺気に慣れる程の戦場で生きてきたんだ。

 体の震えが止まらない。カインの方が見れない。きっと俺は今、酷い顔をしている。もしかしたら、今の俺を見たら傷付いてしまうかもしれない。

「…ごめんねぇ、レイちゃん…」

 また、謝られた。さっきと同じ言葉なのに、随分と弱々しい。あぁ、傷付けてしまった。
 もう少し待ってくれ。もう少ししたら、きっと震えも止まるから。そう言ってやりたいのに、喉は震えるだけで音を発してくれない。

「…暴食羊。ちょっと顔貸せ」
「…いいよぉ、偏屈狼」
「レイ。俺たちは少し席を外す。ホットミルクを用意していくから、体を暖めて一度落ち着け」
「……ぁ…」
「ほら、座ってろ」

 オニキスに促されるまま椅子に座る。テーブルにはすぐにホットミルクが置かれ、毛布を被せられ、止める間もなく二人は外へ出ていった。
 そっとマグカップを持ち上げ、熱いぐらいのミルクを一口飲む。
 たった一口。それでも体には十分な熱源だったらしい。あれだけ冷えていた体が内側から、マグカップを持つ手からじんわりと暖まってきた。
 飲み干す頃には震えも止まり、声も出るようになってた。

 毛布にくるまり、少し考える。帰ってきたらカインに謝ろう。仕方ないと言われるかもしれないが、先程見たカインはやはり少し傷ついている様だった。
 殺気に慣れていなかっただけなんだと。確かに怖かったけど、嫌いにはなってないから安心してくれと。きちんと説明する必要がある。

 ホットミルクのおかわりを入れ、俺は二人の帰りをゆっくりと待つことにした。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...