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一章 転生しました
12。カインさんご乱心
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三杯目のホットミルクをちびちびと飲み、本を読みつつまだ戻ってこない二人を待つ。
出ていってから既に三十分ぐらいは経っただろうか。まさか、少しとか言いながらこの手紙の差出人に会いに行ったんじゃ…と、テーブルに置かれた赤い封筒を見る。
手にとってみると、思ったより重い感じがした。中身を見れば、先ほどオニキスが読んでいた手紙とは別の紙が入っていた。上質そうな厚紙には、俺とオニキスとカインの名前が書いてあり、どうやら招待状のようだ。
オニキスの名前は俺がこの前つけたので、俺と森で暮らしていた彼奴の名前を知ってるのは不思議だなぁと思いつつ、カインの名前に目をやる。
『カイン・グラトニー』
「あれ、カインのファミリーネームってグラトニーって言うのか。何か、どっかで聞いたことある気がすんだよなぁ…本で見たのかも…」
グラトニーという名前を探すため本棚に向かおうと立ち上がれば、二人が帰って来たのか玄関の開く音がした。
「あ、二人ともお帰…り……え?」
「今戻ったぞ、レイ。どうした?」
「あー、えー、んー?えっと、オニキスさん。その横のもふもふは一体…」
「あぁ。お前が好きだと思ってな」
戻ってきたオニキスの横には、真っ白でもふもふと言うよりはモコモコとした毛に、クルリと渦巻く角を持った動物が。
そしてカインの姿が見えないが……ちょっと待てよ?
「いや、うん、好きだよ?でも待って?色は違うけど、その質感の毛はもしかしなくともカイン…さん?」
「…………俺はお前が恐ろしいよ…」
何故だ。
恐る恐る白いモコモコ─カインに近づく。何だってこんな姿をしているのだろうか。あぁ、顔を埋めてもふもふしてそのまま夢に落ちたい…が、まず話を聞こう。
そっとオニキスに説明を求める視線を向ける。あと、何でさっきからカインが一言も話さないのかの説明も聞きたい。
俺の思いとは裏腹に、首を傾げるオニキス。
「…?てっきり、飛び付くものだと思っていたが…気に入らなかったか?」
「滅茶苦茶飛び付きたいよ!もふもふに溺れたいけど!!先に説明をしてくれよ!!何でカインがこんな姿になっているんだ!」
説明を聞いて納得できたら飛び込もう。うん。我慢よくない。
「お前が好きなものを聞かれたから教えた結果だ」
「どういうことだよ…つーか、何でさっきからカインは喋らないんだ?」
「気まずいんだろう…おい、頭突きをするな。止めろ。角が地味に痛い」
図星だったのか、オニキスに頭突きをするカイン羊。え、俺にもして。頭突きじゃなくて体当たりして。そのモコモコの体で体当たりしてほしい。全て受け止めるのに。
我慢ならずそっとそのモコモコを触れば、ズズズ…と手が沈んでいく。待って?毛の量ヤバ。どんどん手が埋もれるんだけど顔を埋めたら窒息しそう…寧ろこれで窒息死しても本望……
「おいレイ。ヤバい顔してるぞ」
「はっ…!しまった…もふもふで窒息死したいとか考えてる場合じゃない。カイン、ちょっとぐらい喋んない?」
「今さらっとヤバいこと言わなかったか?おい…」
「……………」
「何でー?羊になったら喋れない呪いとか、そう言う感じ?なぁ、オニキス」
「全然喋れるぞ。だから気まずいんだろう。お前を怯えさせてしまって。暫くそのままで居るとか言って…おい、だから頭突きをするんじゃあない」
え、なにそれ俺のせい?別にもう落ち着いたからいいのに…まぁ、うん。俺が怯えて傷付けちゃったんだろうな。
いやしかし本当素晴らしいもふもふだ。元々のカインの髪の毛も素晴らしかったが、量が増えてめっちゃ至福の塊と化している。
「カインさん、色って変えれる?白じゃなくて、オレンジに戻せない?」
「…………」
「すげぇ!変わった!!」
俺の言葉に反応して、白から一瞬で元のオレンジに戻った。実はカインって凄い種族だったりする?
もう我慢なんて知らないので、思いきりオレンジのもふもふに抱きつく。色が暖かそうだし、普通にカインの体温と毛の質量でぬくぬくである。冬にこの毛で寝たい。
そこから数十分程もふもふを堪能した俺は、心なしかぐったりしているカインを解放した。なんかごめん。
「……俺はお前が恐ろしいよ」
「二回目!!まぁいいや。充分堪能できたし、そろそろ飯にしよう。ほらカイン、元に戻っていいぞ」
「………」
「おい?」
もう充分だと言っても、羊から戻る気配がない。首を傾げていれば、オニキスが一言。
「お前がそのままなら、お前の分の飯は俺が食うぞ」
「は?殺す」
「お、喋った」
「あっ…!!」
羊から戻りはしなかったが、思わずと言った風に声を出したカイン。またすぐに黙ってしまったが。
しかしなるほど。そう説得すればいいのか。
「なぁ、カイン。俺、ちゃんとお前に飯食って欲しいんだけどなぁ…」
「…………」
「そのままだったら、器がないから飯食わせられねぇなぁ…」
「………っ…」
「はぁ…今日の夕飯はスペシャルオムライスの予定だったのに…」
「……~~~~っ!!分かったよぉ!!戻ればいいんでしょ!?戻ればぁ!!」
ボフッと音を立ててカインの姿が元に戻る。思わずガッツポーズをしてしまった。勝った…!美味しいは正義なんだよ!!
戻ったはいいが、むすっと黙ってしまったカイン。それでもテーブルに座っているので、飯は食べたいらしい。旨いの作ってやるか。
スペシャルオムライスと言っても、いつものオムライスではなくふわとろオムライスを作り、ケチャップではなくデミグラスソースをかけただけなのだが。チキンライスには細かく切った鶏肉のほかに、柔らかく蒸した野菜も入っている。
それでも二人には好評だった。いいとろとろ具合にできたので、これは俺も満足してる。
夕飯も食べ終え、手紙の話に戻った。カインがまたしても羊になろうとしていたので、先攻して謝れば逆に謝られてしまった。
「俺が怯えたから羊になったんだろ?ごめんな?もう平気だからなんなくてもいいんだぞ?」
「何でレイちゃんが謝るのぉ…怯えさせたのボクなんだからぁ…寧ろ罵られるものかと…」
「俺のイメージそんななの…?」
「ち、違うよぉ!?ただ、文句言われても仕方ないことしちゃったからぁ…」
「んー、じゃあお相子ってことで!俺はもう気にしてないし、お前も気にすんな!寧ろいい刺激だった!!」
「え、えぇ…?うーん…まぁ、レイちゃんがそう言うなら…分かったよぉ」
さて、互いに謝って終わらせたところで会議が始まった。議題は、この呼び出しに応じるかどうか。
まず、拒否出来るのかという問題だが、出来る出来ないではなく拒否する、とのこと。つまり何を言われても行かないということ。いいのか、それで。
オニキスがこのオスカーさんとやらの説明を始める。またカインが怒るのではとハラハラしたが、先程外に出たときに話はつけてきたらしい。
「そこのアホ羊が仕事を教えたくないと言うので、それ以外の情報を教えようと思う」
「ひと言余計だよぉ、駄犬が」
「誰が犬だ、このジンギスカン」
「残念でしたぁ。ボクは食用じゃありませぇん」
「焼けば同じだろう…?」
話、つけてきたんだよな?結局喧嘩するじゃないか。とりあえず、二人の頭を叩いて喧嘩を止める。喧嘩両成敗じゃ、こら。いい加減にしろ。
で、オニキス曰く、オスカーさんとはとある領地を治める領主様らしい。つまり、貴族で偉い人。そんな人からの呼び出しとか、正直行きたくない。
招待状には確かに、「魔国『イーラ領』領主オスカー・ドレッド」と書かれていた。魔国は、確か前にオニキスから聞いた。10柱の「魔王」が治める国、だったかな。
もう一度招待状を皆で見返し、そう言えばとカインに質問する。
「そう言えばカイン。お前のファミリーネームって…」
「あ"ーー!!!!!しまった!!!まってレイちゃん、ダメ!忘れて!!今すぐ忘れて!!!」
「え、ちょっ、まってまって、今すぐなんて無理…」
「いい?レイちゃん。ボクの目を見て。反らしちゃダメ」
「へ?お前、目って見て、え?」
ガッと肩を捕まれ、オレンジの前髪を手で上げたカインと目が合う。目の本来白い部分は黒く、真っ赤な目がハッキリと見えた。え、なにそれ格好いい。
普通に見とれて見つめ合えば、なんだか頭がぐるぐるしてくる。
「レイちゃん、ボクにファミリーネームはないよぉ。いい?ボクはカイン。ただのカインだからねぇ?ファミリーネームなんかない」
「か、カインにファミリーネームはない…」
「そう、その通り。もういいよぉ」
スッと前髪が戻された。黒い目が隠された瞬間、頭がやけにスッキリとした気がした。
「…?あれ、俺、何の話してたんだっけ?」
「呼び出しに応じるか、拒否するかぁ」
「あぁ、そっか」
「貴様っ…なに洗脳魔法使って…」
「何のことぉ?じゃ、ちょっとボク行ってくるぅ」
どうしようなーと考えていれば、カインが玄関へ向かった。え、どっか行くの?
「どこ行くんだ?もう夜だぞ?」
「んー?ちょっと、角一本と片目じゃあ分かんなかったらしいからぁ…もう片方ずつ潰してくるぅ」
「は?ちょっ…おいレイ、あの馬鹿止めろ!!」
「え?あ、おう!!」
オニキスが急に焦り始めたので、カインが何かヤバいことを仕出かそうとしていることを察する。オニキスが背後から羽交い締めにし、俺が前から押し止めようとしているのだが、それでも物凄い力で玄関へ向かうカイン。
俺は押し止めるので精一杯のため説得に参加出来なかったが、以下が二人の言葉の攻防戦である。
「キミたち、止めないでくれるぅ!?彼奴、一回負かしたぐらいじゃあ力関係ってのを理解しなかったみたいでさぁ!!」
「分かってる!充分分かってるだろうから!!貴様、この大変な時に大事な戦力を一人潰そうとするな!!」
「煩い!!あの角折って目玉潰してやんないと気が済まないのぉ!!」
「せめて目は止めてやれ!!執務が全部貴様に回って来ることになるんだぞ!?」
「じゃあ羽!!羽引き千切る!!!彼奴二度と飛べなくしてやんだよクソ蜥蜴野郎が!!!」
「落ち着け馬鹿!!後で叱られるのは貴様なんだからな!!」
「知らない!!と言うか、ボクが最年長なんだから叱られるとか意味わかんない!!寧ろボクが生意気なガキを叱ってる方だよ!!」
「流血沙汰は叱るとは言わないんだよ馬鹿!!」
「第一!!ボク元々イーラの奴とも気が合わなかったんだよねぇ!!!あれの後釜とかもう潰していいでしょ!?!?あのクソ蜥蜴絶対に許さない!!!」
「あー、もう!!イスティア呼ぶぞ!!」
俺を押していた体がピタリと止まった。思わず見上げれば、カインはイタズラを見つかった子供みたいな顔をしていた。
そのイスティアさんとやらが誰かは知らないが、どうやらカインの苦手な人らしい。
「どうした?お前が最年長だから、叱られないんではないのか?」
「…ズルくなぁい?先生はダメでしょ…あの人、何でか逆らえないんだよぉ…」
完全に力が抜けたカイン。もう大丈夫だというので、俺も姿勢を戻す。あー、疲れた。
突然どうしたのかをオニキスに聞けば、カインはオスカーさんとやらのところに喧嘩を売りに行こうとしたらしい。うん、それは止めなきゃダメだったな。
結局、手紙のことは明日に回して、今日はもう寝ることにした。
なんか、急に濃い一日になったな…
出ていってから既に三十分ぐらいは経っただろうか。まさか、少しとか言いながらこの手紙の差出人に会いに行ったんじゃ…と、テーブルに置かれた赤い封筒を見る。
手にとってみると、思ったより重い感じがした。中身を見れば、先ほどオニキスが読んでいた手紙とは別の紙が入っていた。上質そうな厚紙には、俺とオニキスとカインの名前が書いてあり、どうやら招待状のようだ。
オニキスの名前は俺がこの前つけたので、俺と森で暮らしていた彼奴の名前を知ってるのは不思議だなぁと思いつつ、カインの名前に目をやる。
『カイン・グラトニー』
「あれ、カインのファミリーネームってグラトニーって言うのか。何か、どっかで聞いたことある気がすんだよなぁ…本で見たのかも…」
グラトニーという名前を探すため本棚に向かおうと立ち上がれば、二人が帰って来たのか玄関の開く音がした。
「あ、二人ともお帰…り……え?」
「今戻ったぞ、レイ。どうした?」
「あー、えー、んー?えっと、オニキスさん。その横のもふもふは一体…」
「あぁ。お前が好きだと思ってな」
戻ってきたオニキスの横には、真っ白でもふもふと言うよりはモコモコとした毛に、クルリと渦巻く角を持った動物が。
そしてカインの姿が見えないが……ちょっと待てよ?
「いや、うん、好きだよ?でも待って?色は違うけど、その質感の毛はもしかしなくともカイン…さん?」
「…………俺はお前が恐ろしいよ…」
何故だ。
恐る恐る白いモコモコ─カインに近づく。何だってこんな姿をしているのだろうか。あぁ、顔を埋めてもふもふしてそのまま夢に落ちたい…が、まず話を聞こう。
そっとオニキスに説明を求める視線を向ける。あと、何でさっきからカインが一言も話さないのかの説明も聞きたい。
俺の思いとは裏腹に、首を傾げるオニキス。
「…?てっきり、飛び付くものだと思っていたが…気に入らなかったか?」
「滅茶苦茶飛び付きたいよ!もふもふに溺れたいけど!!先に説明をしてくれよ!!何でカインがこんな姿になっているんだ!」
説明を聞いて納得できたら飛び込もう。うん。我慢よくない。
「お前が好きなものを聞かれたから教えた結果だ」
「どういうことだよ…つーか、何でさっきからカインは喋らないんだ?」
「気まずいんだろう…おい、頭突きをするな。止めろ。角が地味に痛い」
図星だったのか、オニキスに頭突きをするカイン羊。え、俺にもして。頭突きじゃなくて体当たりして。そのモコモコの体で体当たりしてほしい。全て受け止めるのに。
我慢ならずそっとそのモコモコを触れば、ズズズ…と手が沈んでいく。待って?毛の量ヤバ。どんどん手が埋もれるんだけど顔を埋めたら窒息しそう…寧ろこれで窒息死しても本望……
「おいレイ。ヤバい顔してるぞ」
「はっ…!しまった…もふもふで窒息死したいとか考えてる場合じゃない。カイン、ちょっとぐらい喋んない?」
「今さらっとヤバいこと言わなかったか?おい…」
「……………」
「何でー?羊になったら喋れない呪いとか、そう言う感じ?なぁ、オニキス」
「全然喋れるぞ。だから気まずいんだろう。お前を怯えさせてしまって。暫くそのままで居るとか言って…おい、だから頭突きをするんじゃあない」
え、なにそれ俺のせい?別にもう落ち着いたからいいのに…まぁ、うん。俺が怯えて傷付けちゃったんだろうな。
いやしかし本当素晴らしいもふもふだ。元々のカインの髪の毛も素晴らしかったが、量が増えてめっちゃ至福の塊と化している。
「カインさん、色って変えれる?白じゃなくて、オレンジに戻せない?」
「…………」
「すげぇ!変わった!!」
俺の言葉に反応して、白から一瞬で元のオレンジに戻った。実はカインって凄い種族だったりする?
もう我慢なんて知らないので、思いきりオレンジのもふもふに抱きつく。色が暖かそうだし、普通にカインの体温と毛の質量でぬくぬくである。冬にこの毛で寝たい。
そこから数十分程もふもふを堪能した俺は、心なしかぐったりしているカインを解放した。なんかごめん。
「……俺はお前が恐ろしいよ」
「二回目!!まぁいいや。充分堪能できたし、そろそろ飯にしよう。ほらカイン、元に戻っていいぞ」
「………」
「おい?」
もう充分だと言っても、羊から戻る気配がない。首を傾げていれば、オニキスが一言。
「お前がそのままなら、お前の分の飯は俺が食うぞ」
「は?殺す」
「お、喋った」
「あっ…!!」
羊から戻りはしなかったが、思わずと言った風に声を出したカイン。またすぐに黙ってしまったが。
しかしなるほど。そう説得すればいいのか。
「なぁ、カイン。俺、ちゃんとお前に飯食って欲しいんだけどなぁ…」
「…………」
「そのままだったら、器がないから飯食わせられねぇなぁ…」
「………っ…」
「はぁ…今日の夕飯はスペシャルオムライスの予定だったのに…」
「……~~~~っ!!分かったよぉ!!戻ればいいんでしょ!?戻ればぁ!!」
ボフッと音を立ててカインの姿が元に戻る。思わずガッツポーズをしてしまった。勝った…!美味しいは正義なんだよ!!
戻ったはいいが、むすっと黙ってしまったカイン。それでもテーブルに座っているので、飯は食べたいらしい。旨いの作ってやるか。
スペシャルオムライスと言っても、いつものオムライスではなくふわとろオムライスを作り、ケチャップではなくデミグラスソースをかけただけなのだが。チキンライスには細かく切った鶏肉のほかに、柔らかく蒸した野菜も入っている。
それでも二人には好評だった。いいとろとろ具合にできたので、これは俺も満足してる。
夕飯も食べ終え、手紙の話に戻った。カインがまたしても羊になろうとしていたので、先攻して謝れば逆に謝られてしまった。
「俺が怯えたから羊になったんだろ?ごめんな?もう平気だからなんなくてもいいんだぞ?」
「何でレイちゃんが謝るのぉ…怯えさせたのボクなんだからぁ…寧ろ罵られるものかと…」
「俺のイメージそんななの…?」
「ち、違うよぉ!?ただ、文句言われても仕方ないことしちゃったからぁ…」
「んー、じゃあお相子ってことで!俺はもう気にしてないし、お前も気にすんな!寧ろいい刺激だった!!」
「え、えぇ…?うーん…まぁ、レイちゃんがそう言うなら…分かったよぉ」
さて、互いに謝って終わらせたところで会議が始まった。議題は、この呼び出しに応じるかどうか。
まず、拒否出来るのかという問題だが、出来る出来ないではなく拒否する、とのこと。つまり何を言われても行かないということ。いいのか、それで。
オニキスがこのオスカーさんとやらの説明を始める。またカインが怒るのではとハラハラしたが、先程外に出たときに話はつけてきたらしい。
「そこのアホ羊が仕事を教えたくないと言うので、それ以外の情報を教えようと思う」
「ひと言余計だよぉ、駄犬が」
「誰が犬だ、このジンギスカン」
「残念でしたぁ。ボクは食用じゃありませぇん」
「焼けば同じだろう…?」
話、つけてきたんだよな?結局喧嘩するじゃないか。とりあえず、二人の頭を叩いて喧嘩を止める。喧嘩両成敗じゃ、こら。いい加減にしろ。
で、オニキス曰く、オスカーさんとはとある領地を治める領主様らしい。つまり、貴族で偉い人。そんな人からの呼び出しとか、正直行きたくない。
招待状には確かに、「魔国『イーラ領』領主オスカー・ドレッド」と書かれていた。魔国は、確か前にオニキスから聞いた。10柱の「魔王」が治める国、だったかな。
もう一度招待状を皆で見返し、そう言えばとカインに質問する。
「そう言えばカイン。お前のファミリーネームって…」
「あ"ーー!!!!!しまった!!!まってレイちゃん、ダメ!忘れて!!今すぐ忘れて!!!」
「え、ちょっ、まってまって、今すぐなんて無理…」
「いい?レイちゃん。ボクの目を見て。反らしちゃダメ」
「へ?お前、目って見て、え?」
ガッと肩を捕まれ、オレンジの前髪を手で上げたカインと目が合う。目の本来白い部分は黒く、真っ赤な目がハッキリと見えた。え、なにそれ格好いい。
普通に見とれて見つめ合えば、なんだか頭がぐるぐるしてくる。
「レイちゃん、ボクにファミリーネームはないよぉ。いい?ボクはカイン。ただのカインだからねぇ?ファミリーネームなんかない」
「か、カインにファミリーネームはない…」
「そう、その通り。もういいよぉ」
スッと前髪が戻された。黒い目が隠された瞬間、頭がやけにスッキリとした気がした。
「…?あれ、俺、何の話してたんだっけ?」
「呼び出しに応じるか、拒否するかぁ」
「あぁ、そっか」
「貴様っ…なに洗脳魔法使って…」
「何のことぉ?じゃ、ちょっとボク行ってくるぅ」
どうしようなーと考えていれば、カインが玄関へ向かった。え、どっか行くの?
「どこ行くんだ?もう夜だぞ?」
「んー?ちょっと、角一本と片目じゃあ分かんなかったらしいからぁ…もう片方ずつ潰してくるぅ」
「は?ちょっ…おいレイ、あの馬鹿止めろ!!」
「え?あ、おう!!」
オニキスが急に焦り始めたので、カインが何かヤバいことを仕出かそうとしていることを察する。オニキスが背後から羽交い締めにし、俺が前から押し止めようとしているのだが、それでも物凄い力で玄関へ向かうカイン。
俺は押し止めるので精一杯のため説得に参加出来なかったが、以下が二人の言葉の攻防戦である。
「キミたち、止めないでくれるぅ!?彼奴、一回負かしたぐらいじゃあ力関係ってのを理解しなかったみたいでさぁ!!」
「分かってる!充分分かってるだろうから!!貴様、この大変な時に大事な戦力を一人潰そうとするな!!」
「煩い!!あの角折って目玉潰してやんないと気が済まないのぉ!!」
「せめて目は止めてやれ!!執務が全部貴様に回って来ることになるんだぞ!?」
「じゃあ羽!!羽引き千切る!!!彼奴二度と飛べなくしてやんだよクソ蜥蜴野郎が!!!」
「落ち着け馬鹿!!後で叱られるのは貴様なんだからな!!」
「知らない!!と言うか、ボクが最年長なんだから叱られるとか意味わかんない!!寧ろボクが生意気なガキを叱ってる方だよ!!」
「流血沙汰は叱るとは言わないんだよ馬鹿!!」
「第一!!ボク元々イーラの奴とも気が合わなかったんだよねぇ!!!あれの後釜とかもう潰していいでしょ!?!?あのクソ蜥蜴絶対に許さない!!!」
「あー、もう!!イスティア呼ぶぞ!!」
俺を押していた体がピタリと止まった。思わず見上げれば、カインはイタズラを見つかった子供みたいな顔をしていた。
そのイスティアさんとやらが誰かは知らないが、どうやらカインの苦手な人らしい。
「どうした?お前が最年長だから、叱られないんではないのか?」
「…ズルくなぁい?先生はダメでしょ…あの人、何でか逆らえないんだよぉ…」
完全に力が抜けたカイン。もう大丈夫だというので、俺も姿勢を戻す。あー、疲れた。
突然どうしたのかをオニキスに聞けば、カインはオスカーさんとやらのところに喧嘩を売りに行こうとしたらしい。うん、それは止めなきゃダメだったな。
結局、手紙のことは明日に回して、今日はもう寝ることにした。
なんか、急に濃い一日になったな…
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