処刑回避で海賊に就職したら、何故か船長に甘やかされてます。

蒼霧雪枷

文字の大きさ
11 / 11

10

しおりを挟む
 香水店に入ると、流石に男二人は珍しいのか店員らしき老人が驚いたように目を見張る。それを気にせず、私は店に並べられている香水のテスターに近づいた。

「船長はどれがいいと思います?」
「買うのか?今後付けるような場面はねぇと思うが…」
「普段用のですねー。海で邪魔にならないようなのって、よく分からなくて」
「あ?普段から付けんのか?ったく…変な影響受けてきやがって…」

 呆れたような船長の声に苦笑する。君らの鼻良すぎるのが原因なんだけど。しかし、そんなことを言いつつ香水を選んでくれるあたり、この船長は仲間にちょっと甘い。
 ラベルを読んである程度絞りこんでから、船長と一緒にテスターの匂いを嗅いでみる。船長が選んだのは、私が考えていた通り爽やか系の匂いだった。潮の匂いに混ざっても気持ち悪くならないようなやつである。
 やっぱりこういう感じのやつだよねーと思いつつ、女の子な部分がもう少し可愛らしい匂いのものに惹かれてしまう。さっき、くど過ぎず甘過ぎずないい感じの匂いがあったのだ。
 しかし、今の私は海賊一味の下っ端男子だ。そんな女子っぽい匂いをさせていれば、性別を疑われるか女と会ってきたか?とからかわれるかの二択である。

 その事をちょっと残念に思いながら、船長の選んだ香水のテスターを手に取る。柑橘系中心の匂いっぽいが、少しスッとするからミント系も入ってるのだろう。
 あまり強くもないし、船長が選んだからきっと邪魔にならないだろう。他の人の気分が悪くなるような匂いは流石に付けられないからね。

 その香水をいくつか購入し、ようやく夕飯を食べにいこうと店を出る。何が食べたいか聞かれたので、私の買い物に付き合ってくれたお礼と言うことでお肉を所望した。
 イメージ通り過ぎるが、やはり船長は肉が好きなのだ。ちなみに鶏肉を一番美味しそうに食べているように見える。
 そしたら少し嬉しそうに行く店を決めるものだから、何だか可愛いなと思ってしまった。

 ─船長オススメの店に向かう途中のことだった。

「…アレクシア嬢?」

 その声に、ビクリと肩を揺らす。正直しまったと思った。隣の船長に気づかれていないことを願いつつ、聞こえなかった振りをして歩く。
 しかし、どうやら相手はそれを許してくれなかったらしい。突然ガシリと腕を掴まれ、その勢いのまま相手を振り返ってしまった。

 まず目に入ったのは、柔らかくウェーブのかかったハニーブロンドの髪。格好は見知った鎧ではなくラフな、それでいてしっかり戦闘向きであろう格好だったが、確かにその顔は見覚えのあるものだった。

「やはり、アレクシア嬢ではございませんか…!?」
「ひ、人違いです!!」

 婚約者であった王子とのお茶会などでよく顔を合わせたことのあるその人物の名前はロイド・グラヴィス。フェロウド王国王太子の近衛騎士団隊長、その人だった。

 強く握られた腕に、思わず顔を歪める。それに気づいた船長が、思い切りロイド隊長の腕を払ってくれた。ついつい腕をさすってしまい、強く握っていたことに気づいたロイド隊長がしまったという風な表情になった。
 しかしそれはすぐに引き締められ、船長と睨み合いになる。バチバチと音がなりそうな一触即発な雰囲気に、ハッとして周りを見渡す。いくら夕飯時だとしても、外はまだまだ人が行き交っているのだ。
 案の定私たちは悪目立ちをしていて、慌てて二人の腕を掴む。

「ちょっ、取り敢えず二人ともこっち!」
「うぉ!?」
「わっ!」

 一先ず落ち着けるところに移動しようと、覚えた街の脳内地図を必死に探す。何処か、何処かと考えて、

 何故か私は、港にある私たちの船へと来ていた。

 謝るから船長、そんなに私を凝視しないでください。完全に無意識だったの!!






───────────



──フェロウド王国、王城の一室にて。

「アレクシア…何故だ、何故僕から逃げる…僕から離れるんだ…君は、君は……」

 輝く金髪を持つ少年が、自室でガリガリとペンを紙へと走らせていた。何枚もの紙が机の上から溢れ、床をも侵食していく。
 一心に机に向かうその紫色の瞳は、昔は澄んでいたであろうに今は酷く曇ってしまっていた。

「……もう、君をだけなのに…何故分かってくれないんだ……




……梓…」








しおりを挟む
感想 6

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(6件)

tago
2021.09.08 tago

王子が美緒ってことは
まさかヒロインは…w

解除
Reika
2021.08.30 Reika

あらやだ物凄くいい笑顔wwwww
面白いwww

お兄さん早く意識戻ると良いねぇ、アレク……(੭˙꒳​˙)੭お兄さんガンバ!


そういえばですね、ここまで読んで何ヶ所か誤字ってるの見付けました。濁点無かったりとか、漢字間違えてたりとか( ˙꒳˙ )
それでも面白いし、もうこの子達好き〜!ってなってるので、気が向きましたらお直しして下さるともっと良くなります☆°。⋆⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝

続きが楽しみです(*´ー`*)ホッコリ

解除
Reika
2021.08.30 Reika

ホワッツ王子???お前やっぱりかよ待ってマジで?????
え、って事はつまり……あー、あの女子が突き落としたのはそういう事か。なるほど了解……いや嫉妬したからって突き落として殺害するとか阿呆じゃねーの前世のあの女子。
は、嫌だ〜、妨害してこないでね。
ちゃんとアレクシアのを実らせてね恋心。
王子は当て馬になるのかねぇ……。
だって前世繋がりを言ってない時点で遅いし……ねぇ( ˙꒳˙ )

解除

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。