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香水店に入ると、流石に男二人は珍しいのか店員らしき老人が驚いたように目を見張る。それを気にせず、私は店に並べられている香水のテスターに近づいた。
「船長はどれがいいと思います?」
「買うのか?今後付けるような場面はねぇと思うが…」
「普段用のですねー。海で邪魔にならないようなのって、よく分からなくて」
「あ?普段から付けんのか?ったく…変な影響受けてきやがって…」
呆れたような船長の声に苦笑する。君らの鼻良すぎるのが原因なんだけど。しかし、そんなことを言いつつ香水を選んでくれるあたり、この船長は仲間にちょっと甘い。
ラベルを読んである程度絞りこんでから、船長と一緒にテスターの匂いを嗅いでみる。船長が選んだのは、私が考えていた通り爽やか系の匂いだった。潮の匂いに混ざっても気持ち悪くならないようなやつである。
やっぱりこういう感じのやつだよねーと思いつつ、女の子な部分がもう少し可愛らしい匂いのものに惹かれてしまう。さっき、くど過ぎず甘過ぎずないい感じの匂いがあったのだ。
しかし、今の私は海賊一味の下っ端男子だ。そんな女子っぽい匂いをさせていれば、性別を疑われるか女と会ってきたか?とからかわれるかの二択である。
その事をちょっと残念に思いながら、船長の選んだ香水のテスターを手に取る。柑橘系中心の匂いっぽいが、少しスッとするからミント系も入ってるのだろう。
あまり強くもないし、船長が選んだからきっと邪魔にならないだろう。他の人の気分が悪くなるような匂いは流石に付けられないからね。
その香水をいくつか購入し、ようやく夕飯を食べにいこうと店を出る。何が食べたいか聞かれたので、私の買い物に付き合ってくれたお礼と言うことでお肉を所望した。
イメージ通り過ぎるが、やはり船長は肉が好きなのだ。ちなみに鶏肉を一番美味しそうに食べているように見える。
そしたら少し嬉しそうに行く店を決めるものだから、何だか可愛いなと思ってしまった。
─船長オススメの店に向かう途中のことだった。
「…アレクシア嬢?」
その声に、ビクリと肩を揺らす。正直しまったと思った。隣の船長に気づかれていないことを願いつつ、聞こえなかった振りをして歩く。
しかし、どうやら相手はそれを許してくれなかったらしい。突然ガシリと腕を掴まれ、その勢いのまま相手を振り返ってしまった。
まず目に入ったのは、柔らかくウェーブのかかったハニーブロンドの髪。格好は見知った鎧ではなくラフな、それでいてしっかり戦闘向きであろう格好だったが、確かにその顔は見覚えのあるものだった。
「やはり、アレクシア嬢ではございませんか…!?」
「ひ、人違いです!!」
婚約者であった王子とのお茶会などでよく顔を合わせたことのあるその人物の名前はロイド・グラヴィス。フェロウド王国王太子の近衛騎士団隊長、その人だった。
強く握られた腕に、思わず顔を歪める。それに気づいた船長が、思い切りロイド隊長の腕を払ってくれた。ついつい腕をさすってしまい、強く握っていたことに気づいたロイド隊長がしまったという風な表情になった。
しかしそれはすぐに引き締められ、船長と睨み合いになる。バチバチと音がなりそうな一触即発な雰囲気に、ハッとして周りを見渡す。いくら夕飯時だとしても、外はまだまだ人が行き交っているのだ。
案の定私たちは悪目立ちをしていて、慌てて二人の腕を掴む。
「ちょっ、取り敢えず二人ともこっち!」
「うぉ!?」
「わっ!」
一先ず落ち着けるところに移動しようと、覚えた街の脳内地図を必死に探す。何処か、何処かと考えて、
何故か私は、港にある私たちの船へと来ていた。
謝るから船長、そんなに私を凝視しないでください。完全に無意識だったの!!
───────────
──フェロウド王国、王城の一室にて。
「アレクシア…何故だ、何故僕から逃げる…僕から離れるんだ…君は、君は……」
輝く金髪を持つ少年が、自室でガリガリとペンを紙へと走らせていた。何枚もの紙が机の上から溢れ、床をも侵食していく。
一心に机に向かうその紫色の瞳は、昔は澄んでいたであろうに今は酷く曇ってしまっていた。
「……もう、君を二度と失いたくないだけなのに…何故分かってくれないんだ……
……梓…」
「船長はどれがいいと思います?」
「買うのか?今後付けるような場面はねぇと思うが…」
「普段用のですねー。海で邪魔にならないようなのって、よく分からなくて」
「あ?普段から付けんのか?ったく…変な影響受けてきやがって…」
呆れたような船長の声に苦笑する。君らの鼻良すぎるのが原因なんだけど。しかし、そんなことを言いつつ香水を選んでくれるあたり、この船長は仲間にちょっと甘い。
ラベルを読んである程度絞りこんでから、船長と一緒にテスターの匂いを嗅いでみる。船長が選んだのは、私が考えていた通り爽やか系の匂いだった。潮の匂いに混ざっても気持ち悪くならないようなやつである。
やっぱりこういう感じのやつだよねーと思いつつ、女の子な部分がもう少し可愛らしい匂いのものに惹かれてしまう。さっき、くど過ぎず甘過ぎずないい感じの匂いがあったのだ。
しかし、今の私は海賊一味の下っ端男子だ。そんな女子っぽい匂いをさせていれば、性別を疑われるか女と会ってきたか?とからかわれるかの二択である。
その事をちょっと残念に思いながら、船長の選んだ香水のテスターを手に取る。柑橘系中心の匂いっぽいが、少しスッとするからミント系も入ってるのだろう。
あまり強くもないし、船長が選んだからきっと邪魔にならないだろう。他の人の気分が悪くなるような匂いは流石に付けられないからね。
その香水をいくつか購入し、ようやく夕飯を食べにいこうと店を出る。何が食べたいか聞かれたので、私の買い物に付き合ってくれたお礼と言うことでお肉を所望した。
イメージ通り過ぎるが、やはり船長は肉が好きなのだ。ちなみに鶏肉を一番美味しそうに食べているように見える。
そしたら少し嬉しそうに行く店を決めるものだから、何だか可愛いなと思ってしまった。
─船長オススメの店に向かう途中のことだった。
「…アレクシア嬢?」
その声に、ビクリと肩を揺らす。正直しまったと思った。隣の船長に気づかれていないことを願いつつ、聞こえなかった振りをして歩く。
しかし、どうやら相手はそれを許してくれなかったらしい。突然ガシリと腕を掴まれ、その勢いのまま相手を振り返ってしまった。
まず目に入ったのは、柔らかくウェーブのかかったハニーブロンドの髪。格好は見知った鎧ではなくラフな、それでいてしっかり戦闘向きであろう格好だったが、確かにその顔は見覚えのあるものだった。
「やはり、アレクシア嬢ではございませんか…!?」
「ひ、人違いです!!」
婚約者であった王子とのお茶会などでよく顔を合わせたことのあるその人物の名前はロイド・グラヴィス。フェロウド王国王太子の近衛騎士団隊長、その人だった。
強く握られた腕に、思わず顔を歪める。それに気づいた船長が、思い切りロイド隊長の腕を払ってくれた。ついつい腕をさすってしまい、強く握っていたことに気づいたロイド隊長がしまったという風な表情になった。
しかしそれはすぐに引き締められ、船長と睨み合いになる。バチバチと音がなりそうな一触即発な雰囲気に、ハッとして周りを見渡す。いくら夕飯時だとしても、外はまだまだ人が行き交っているのだ。
案の定私たちは悪目立ちをしていて、慌てて二人の腕を掴む。
「ちょっ、取り敢えず二人ともこっち!」
「うぉ!?」
「わっ!」
一先ず落ち着けるところに移動しようと、覚えた街の脳内地図を必死に探す。何処か、何処かと考えて、
何故か私は、港にある私たちの船へと来ていた。
謝るから船長、そんなに私を凝視しないでください。完全に無意識だったの!!
───────────
──フェロウド王国、王城の一室にて。
「アレクシア…何故だ、何故僕から逃げる…僕から離れるんだ…君は、君は……」
輝く金髪を持つ少年が、自室でガリガリとペンを紙へと走らせていた。何枚もの紙が机の上から溢れ、床をも侵食していく。
一心に机に向かうその紫色の瞳は、昔は澄んでいたであろうに今は酷く曇ってしまっていた。
「……もう、君を二度と失いたくないだけなのに…何故分かってくれないんだ……
……梓…」
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あらやだ物凄くいい笑顔wwwww
面白いwww
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そういえばですね、ここまで読んで何ヶ所か誤字ってるの見付けました。濁点無かったりとか、漢字間違えてたりとか( ˙꒳˙ )
それでも面白いし、もうこの子達好き〜!ってなってるので、気が向きましたらお直しして下さるともっと良くなります☆°。⋆⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝
続きが楽しみです(*´ー`*)ホッコリ
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え、って事はつまり……あー、あの女子が突き落としたのはそういう事か。なるほど了解……いや嫉妬したからって突き落として殺害するとか阿呆じゃねーの前世のあの女子。
は、嫌だ〜、妨害してこないでね。
ちゃんとアレクシアのを実らせてね恋心。
王子は当て馬になるのかねぇ……。
だって前世繋がりを言ってない時点で遅いし……ねぇ( ˙꒳˙ )