愛妻弁当

月詠嗣苑

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密な夜に

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 ギッ···ギッ···ゴギッ···

「ふぅ! あっつーい! 喉乾いちゃう!」

 キッチンから、大きな肉切り包丁を持ってきて、大きなまな板の上で肉の塊を切っては、肉と骨を捌いていく。

 ゴドッ···

「ひっ! 見ない! 見ない!」なるべく目を合わせないように、豚の頭部を新聞紙に包んでゴミ袋に包んだ。

「やっぱ、安い肉はだめねぇ」額についた汗をタオルで拭いながら、切った肉のまだ使えそうな部位をきれいに切り分ける。

 ガゴッ···ボキッ···グッ···

 細身の私が、朝から切り始めてようやく夕方には、なんとか終わった。

 バッ···バサッ···

 新聞紙を広げ、一つ一つ紙に何重にも何重にも包んで、ゴミ袋に入れる。その作業だけでも、二十もの包みが詰まれ、通り道を狭くする。

「もぉっ! これじゃ、通れないじゃないのよっ!」と勝手に怒ってもしょうがないから、また元の場所に戻し、それを透明の衣装ケースに丁寧に包みこんでいった。

「なんとか収まったかな?」衣装ケースだけでも、三個もあり、それを今度は裏に停めた車のトランクに詰め込む作業を繰り返し、

「残ったのは、これだけか! ま、食べれるだろうけど···」家に帰り、捌いた豚肉をとりあえず、冷蔵庫に入れ、再び車に乗り込みある場所へと向かった。

「確か、この辺りだと思ったんだけどなぁ?」カーナビ通りに車を走らせると、大きな煙突が見えてきた。

「あった! あった!」門にいた守衛さんに、受付をしてもらい番号札を車にペタリと貼り、また車を高くそびえる煙突に向かって走らせる。

「あっついなぁ! ここ」いま、私の目の前には、大きな焼却場がある。市でやってるのだが、個人でも利用が出来るのを最近知った。

 ゴトンッ···ゴトンッ···ゴトンッ···と衣装ケースを車から下ろし、念の為表から中身を確認する。

「さぁ! あなたがこれから住む場所はここよ!!」と笑いながら、歌いながらいい、一つ一つゆっくりと押し、中へ落としていく。

 暫くそれを見ていたが、熱さに耐えきれず、車に乗り込みため息を付いた。

「くっくっくっ···ふふふっ···はっはっはっ···あーっはっはっ! いい気味よ! 人のこと、殺そうとするなんて!! はぁっ!」 

 プワァーッ···

 手をついたのが、ハンドルの真ん中だったから、クラクションがいきなり鳴って驚いたのなんの!

「あっ、大急ぎでお風呂掃除しないとっ!! 」出てきた道を戻り、部屋の掃除やお風呂をくまなくしていき、

「んぅ! か·ん·ぺ·き!」と昔見た女子高校生主役のヤクザ映画を思い出した。

「さぁーて、今夜帰ってくるからお夕飯なんにしようかなぁ?!」

 帰りにスーパーに寄り、主人の好きな酒の肴や酒を買い、少し高めの豚肉を買い、家に帰る。

 バタンッ···

 車のドアを閉め、なんとなく車を見つめた。

「明日、お掃除してもらお!」

 買った荷物を手に、笑いながら家に入って、時計を見ながら夕飯を作る。


 ガチャッ···

「ただいま」疲れた声で主人である啓一が、帰宅し鞄を玄関口に置いた。

「おかーえりっ! ご飯出来てるよ!」啓一の腕に抱きつく。

「ん? どうした? いつもと違うぞ」と言いつつも、顔は笑っている。

「だって、今日からふたりなんだよ?」

「そうだったな。母さんも今頃、のんびりしてるだろうな!」

 ─この人は知らない。実の母親が、私を殺そうとしていたことを···

「でも、スイスなんて凄いよねぇ! あーん、私も回かじゃなくていいからぁ!」甘えた感じでダダを捏ねる。

「そうだな。でも、ちゃんと治療してからだぞ」

「わかってまぁーす! 今度こそ、妊娠するんだ!」

 最近、不妊?と思って検査をしたらそうではなく、単なる精神的な事が原因というのがわかったが、やはり同居で精神が病んで軽い鬱になっていた。

─この人は知らない。私を殺しにきた義母を私が逆に殺してしまったことを···

「おっ? 今夜はなんだ?」鼻を鳴らし、キッチンに近寄る啓一。

「今夜はね、牛と豚のすき焼き! パパがね、送ってくれたんだ!」と冷蔵庫から米沢牛のパックを取り出す。

「超ごーかー! 酒は? 酒は?」と子供のようにはしゃぐ啓一に、指を三本突き出し、更にテンションを上げた。

「それ以上は、だめだからねっ! わかった?」

「了解! また頑張るよ。一緒に。愛してる」

─これでいい。これでいいの。あなたが私のそばにいてくれるなら。私だけを見て、私だけを愛してくれるのなら···

「さっ、食べよ食べよ!」高級豚肉の中に、安物の豚肉を混ぜておいた。

 テーブルの上には、美味しそうな牛肉と豚肉、すき焼き用の野菜にお酒···

「「かんぱぁーーーーいっ!!」」

「んぅ! おいひい!」

「だなっ! たまに筋みたいな肉もあるけど?」噛み切れないのか、ビールで流す啓一に、私は「バーゲンで売ってたから」と誤魔化し、全てを二人で食べ尽くした。

─さよなら! 雌豚さん!


 チュッ···

「愛してるよ、美月」柔らかな髪を触りながら耳元で囁く。

「私も···。あなたの事が好き。いっぱい愛して···」

─あなたを誰にも盗られたくないの。誰にも···

 プチップチップチッ···パジャマのボタンを外し、現れた乳房の先端を口に含んで転がす。

 んぁっ···

「啓ちゃん」彼の首に腕を絡ませ、耳元で息を吐く。

 首筋から彼の舌が這い、一番敏感な部分へと···

「美月···」足を広げ、彼を待つ。

 あぁっ···んっ!彼の舌が、私の一番敏感な部分を攻め、私は声をあげる。

「来て···啓ちゃん···」そういうと彼は、ニヤッと笑って静かに中に挿入して、腰を動かす。

 パンッ···パンッ···パンッ···

 目を開けると彼がいる。

「大好き!」そう言い、また抱き着く。

「俺も···久々だから、だめかも。出していい?」

「うん。いっぱい出して」彼が逃げないように手足も絡ませた。

「なんか、今夜の美月、エロい」そう彼はいい、唇を塞がれ、中に出していった。

「そうかな? 私は私···」

 ─私は、私。あなたの妻で、あなたの女。他の何者でもない。ただ、あなただけを愛したい。

「でも、そんな美月も好きだな。たまには、お前から攻められたい」

「例えば?」と処理をしてくれてる彼に聞く。

「んぅ? フェラかな? ちょっとでいいからさ···」

「うん。じゃ明日、休みだしそれで起こしてあげようか?」驚いて目を見開く彼が可愛くて抱きしめた。

 それから半年後···
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