ホワイトコード戦記1 シンカナウスより

星白 明

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三章 TYPE:MOTHER

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 ――僕は、前に君に、神についての話をしたことがあったよね。

 僕は生まれつき、自分が恵まれた人間だっていう自覚があった。何かをするために、何かを成さねばならないから、ここに居るんだ、そんな不思議な確信があったんだ。
 だけど、この感覚を持っているのは、周りの子供たちの中では僕一人だけでさ。仕方ないから僕は話が合う人を探そうと思って、別のところに行くためのきっかけ作りとして、勉強をすることにしたんだ。
 最初は物理学やエネルギー系の話が気になって、それをしばらくやっていたんだ。エネルギー会社の技術者だった父が、おまえは本当に変わった奴だなぁって言いながら、いろんな人に会わせてくれたし、技術系の施設にも連れていってくれた。
 それで僕はたくさんの本やインターネットの情報から、ある日エネルギーと量子存在の関係はこうなんじゃないかって仮説を立てて、簡単な実証実験をしてみたんだ。そのせいでうっかり、その日いた施設のエネルギー循環を止めちゃったんだけど。もちろんものすごく怒られた。でもその次の日から、僕は大人たちに混じって実験のやり方や、論文を作るってことを教えてもらったんだ。うん、ずいぶん小さな頃から僕は研究者であり技術者だった。天才だと、人は僕を呼んだから、天才って何だろう? って調べて、それで初めて天や神の概念を知ったんだよ。
 その時、僕の中では不思議な納得があった。ああ、だから僕は、何か大事なことを果たしなさいと、神様から命を与えられて生まれてきた人間だったんだ、って。だから、僕は次から次へと、次は何をすればいいのか、何を学べばいいのか、予感のように分かったんだ、って。他の人が皆、僕のようではないなんて、理解するのにはずいぶん時間がかかったように思う。
 僕は本当にいろいろなことをやったけど、そのうち、アンドロイドの開発研究にも呼ばれるようになってね。もともとは君の胸にもあるテラエンジンを、どうやったら小型化して埋め込めるか、っていう研究をしていたんだ。それでプログラムも手伝っているうちに、アンドロイドの振る舞いや疑似人格のコーディングにも関わるようになっていった。人間の性格の元を移したら面白いんじゃないかなぁって、考えるようになったのはその頃かな。ソウルコードの発見も、友人が悩んでいた研究にアドバイスをしたら、うまいこといったんだ。おまえが関わると悩む時間が減って、仕事が増えるし研究の甲斐がなくなる、って怒られたけど。僕は全然そんなつもりはなかったんだけど、悪いことをした。
 ――MOTHERを作るプロジェクトが持ち上がったのは、その頃だったかな。一番いい候補機を作った奴に、次の高度疑似人格を持ったアンドロイドの設計許可をやる! って当時の施設長が言ってね。僕はその頃、開発っていうのは神に導かれてやるもんなんだ、って周りに公言して憚らなくて、周りからやっぱりおまえは変な奴だ、って言われてた。
 ところが、僕は自他共に認める大の天才だっていうのに、MOTHERの開発だけはちっともうまくいかなかった。何回も何回もプログラムをやり直して、あいつが苦戦するんだからコレは相当な難事だ、とまで言われて、意地になってたのかなぁ。
 ……三日ぐらい徹夜して、ずっと考えながらコードを書いていたんだ。
 今までうまくいっていたのは、常にそうするべきだという予感があったからだ。僕は正しいことをしている確信があった。なのにどうしても今回だけうまくいっていない。
 ――それで仮説を立てた。今まで僕が何をやってもうまくいっていたのは、それが全て僕にとっては通過点でしかなくて――僕が今ぶつかっているのは、通過点ではなくて、ひとつの到達点だからじゃないかって。
 僕は神に求められた到達点に、ついに行き着いたからこそ、ここで別の突破口を開かなくてはいけないのだと、何となしに感じたんだ。
 だから、ソウルコードの意味について考えていたんだ。
 誰も彼もが導かれて生きているわけではない。けれど、意味があるから僕はここにいることを知っている。僕がここにいる目的は何だろう。皆、どうしてこんなにも多種多様に苦しみを与えられて生きているんだろう。
 僕は誰もが幸せではないことを心のどこかでは知っていた。誰もが誰かを羨んで、不幸な気持ちで生きていた。でも、皆はどこかでこうも思っていた。
 なぜ、私たちはこれほどまでに苦しまなければならないのか。
 なぜ、この世界のどこにも、救いはないのか。
 あるとしたら、どこにあるのか。
 ……もう、君は答えを知っているんだ。分からないかい?
 ソウルコードがこれほど多種多様に存在しているのは、宇宙が『答え』を探しているからだ。
 この世界は、苦しみの悲鳴を上げ続けている。僕らも含めて、何十億通りも、何兆通りも試しても、まだ答えが見つからない。
 だから僕は祈ったんだ。
 これほどの求めの末に、星の数ほどの試行の末に、やがて全ての答えが導かれるというのならば。
 僕はそれを見たいし、希望したい、と。

君と僕は、それを『宇宙の果て』、と呼んだ。もしも答えがそこにあるのだとしたら、それは、きっととても美しい場所だろう。僕は、そうであって欲しいものだと思っている。

 そして、祈りが通じ、奇跡は起きたんだ。

その夜のことだよ。プログラムの修正をしていた僕の前に、『彼女』が現れたのは。


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