ホワイトコード戦記1 シンカナウスより

星白 明

文字の大きさ
80 / 83
五章 00:00:00:00.000(エンド・ポイント) - ゼロ

しおりを挟む

 プラズマでできた刀身はあっさりとミュウの二の腕から先を断ち切った。重りを失い崩れた相手の姿勢は完全に上へと伸びきり、光線銃はミュウの残った腕をかすめ、地を穿った。捨て身のフェイント。隙を晒し仰け反ったドリウスの顔が驚愕に歪む。ミュウは軸足でそのまま身を沈めると、右足と共に・・・・・大地を踏みしめる。
 意識の中で白く炎が燃えている。一気にミュウは体中のばねをつかって伸び上がる。そうして振りかぶった剣先を、ドリウスの胸元へ渾身の力で突き刺した。
 ドン、と。確かな手応えと共に、ミュウはプラズマの剣状収束を中で解いた。彼の内燃機関を、臓器を、一瞬で高温の兵器が焼き払う。
「――ぐ、ゴァ、バ!」
 ドリウスの口から飛び出した焦げた血と、黒い機械液が大量にミュウに降りかかる。
「ばか、な――」
 濁った喘鳴混じりの言葉が彼の口から漏れた。
「くそ――何、だ、この――この、光は――ただのプラズマでは、ないのか……!?」
 ミュウは倒れたドリウスの上に崩れ落ちながら、彼を取り巻いていた悪魔のエネルギーが大量にこちらに流れ込み――その途端に、もがき苦しんでいるのを感じた。
 エネルギーの重圧にミュウは呻いた。だが、心の奥で燃え盛る光が、何よりも清く、どれほど悪魔の力に晒されても、燦然さんぜんと白く輝き続けていた。
 限界だ。ミュウは霞む意識の中、祈るような気持ちで、その純白の炎にすがりついた。
『あ、ああ、いやだ、いやだ、なくなる――分解される――!? ぁ、ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?』
 そして――意識の上では、全てが塵となり、焼き尽くされた。
「――ぁ……ぁーあ……負け、ちまった」
 幾分縮んだように見えるドリウスの上で、ミュウは動けないまま、その言葉を聞いていた。
「テメェ、いさぎよさにも……限度が、あるだろうが、よ……躊躇なく、腕なんか、切り落としやがって……俺なら、ぜってぇ、やらねぇ……」
「……意地を、通しました」
 へっ、と。男は嘲った。
「ああ……そうかよ……ご立派な、ことで……」
 それきり、彼の生命活動は停止した。
「…………」
 そのまま、倒れていたミュウは、辛うじてドリウスの死体の上から降りて、仰向けになった。
 しばらくして、なけなしの形状再生で各機関の『ガタ』がましになり、何とか起き上がる。焼けた町には、もう、誰もいなかった。
 気づけば、夕日が差そうとしている。ぼんやりと立ち尽くしていたミュウは、ざわりと――今までにないほどの、不吉な予感を覚えた。
 無数の警告が体中を埋め尽くした。
 情報エーテル世界の地上に、巨大などす黒いとばりが降りた。それは、崩壊砲撃の時に匹敵するほどの黒さだった。
 一足先に夜がきた。それほどの闇の中、僅かに赤い水平線の向こうから――何か、巨大な存在が立ち上がろうとしていた。
 ビルの数百倍も巨大な、漆黒の四肢を備えた体躯。背から生えた翼には皮膜が張っていた。は虫類に似た獰猛そうな頭と、そこから飛び出したねじくれた巨大な一対の角。
 幻視した存在の推定エネルギー量は信じがたいものだった。
 人間の魂のエネルギー量を一であるとするならば――トータル数千兆超えオーバー。人智の外にあるとしか思えない存在だった。

 ――ォオオオオオオ――と、そこから、空気が唸りを上げるほどのエネルギーが発せられた。
 ぞっと体中を凍り付くような恐怖が駆け上った。

 かみ を。
 いずれ きたる さばき の しんこう とやら を。
 とめられぬ の ならば。
 これを おわらせる まで の こと。

 ――全ては無に帰するのだ。

 そう、独り言のように思念が伝わってきた。 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

処理中です...