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チャプター04-04
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惑星マシスでは、砂嵐を思わせる塩の混じった強風が起きていた。害虫の侵入がほとんど起きない惑星だとしても、危険な人物による侵入の予測はしていた。そういった、ほかからの脅威を意識したこの発電施設では、警備体制は厳重だった。各施設の出入口には二人の魔術師が立つような立哨警備が設置され、巡回警備も屋外と屋内どちらも設置されていた。
そして、そんな強い塩風のなか、ある白い花はどんな嵐になろうとも、雲と砂嵐によって塞がれてしまったわずかな明かりに対しても、力強い白色を目立たせていた。
一方で、ジャンの人造人間製造計画に、遅れが出ているのは相変わらずだった。かろうじて、補助部材の交換で、軽度な熱量の伝達は可能であり、数人の魔術師が魔力を送り込んでいる最中だった。
ランスは、ほかの魔術師と共に、ジャンに案内され、円柱ケースに収まっている男性の身体を前にして、説明を受けていた。
この人造人間は、レッグス、と名づけられていた。人造人間にも関わらず、魔力を備えたうえで、長い杖を用いて魔杖をつくりあげることも可能とした設定を加えているという。生体脳の設計としては、ジャンの指示に従うような洗脳措置が施されている。ただ、起動直後には、どんな行動に出てしまうかはわかないため、危険が伴うのだという。
ジャンは、この人造人間を用いて外敵からの脅威を排除する、と説明していた。連邦と魔界での一触即発の対峙が起きているこの時代に、人造人間の製造が自衛措置とされてはいるものの、殺人用途であるのは明確だった。
その人造人間は、ジャンに似ているわけでもなく、肌の色もやや灰色になっている。緑色の照明に照らされているその顔は、今にも目覚めそうな雰囲気だった。開発の時間に余裕があるのであれば、肌の色も調整されていたのかもしれない。
「ジャン様」別室から、ジャンの部下がやってきた。「反銀河連邦団の司令官から外交通信が入っております」
「人界には興味ない。魔界の通信のみ、受け入れろ」とジャン。「最近は、反連邦や楽観主義団が発展を遂げている。警戒しなくてはならん」
「それが、発電石制御装置を無償で提供する、と申し出が」と部下。「実際に、映像も確認済みです」
ランスは内心、驚愕していた。その伝言が事実であれば、人造人間の開発が早い段階で進行してしまうからだ。また、スノーが運んでくるものを含めれば、人造人間の量産も可能になってしまう。
「……おう。それは良い」ジャンは嬉しそうに反応した。「スノー様の帰りは?」
「魔界基本時間だと、あと十数時間はかかる、と連絡が入りました。反銀河連邦団は、あと一時間でここに来られると」
「その司令官の役職と名前は」ジャンは、その団体を受け入れるようだった。
「反銀河連邦団、第一開拓局司令官、バズ・ゾロンという名前です」
「わかった。反連邦の第一開拓は、比較的小規模の括りだ。万が一、彼らの裏切り行為があっても、我々で対抗できる。奴らの戦闘艦は、魔術対応できない性能だ」ジャンは、壊れている周辺の機器を見ながら言った。「警備体制の強化は継続したまま、奴らを来させろ。船のコードを聞いて、そのコードを警戒対象から除外しておけ」
「かしこまりました」ジャンの部下は、また別室へと戻っていった。
どうやら、人造人間の製造を望んでいる団体は、ほかにもいるようだった。あるいは、その企画や製造を利用しようとしているか、どちらかである。反銀河連邦団は、名前からして小規模のように聞こえるが、かなり強大な思想団体であることは、長老によく聞かされていた。科学技術も銀河連邦に劣らない分、反銀河連邦団が問題を起こすようなことがあれば、魔界も聞き耳を立てることは多々あるのだ。
「皆、喜べ。予定より、完成は近づく。魔女達を驚かせようではないか」とジャン。「第二の魔界がここで誕生する」
ランスは、人造人間の誕生目前に、身体を震わせた。
※※※
惑星ゼリアの雑貨屋では、雑貨屋店主のボッシュと反銀河連邦団が争った形跡があり、一部の倉庫では、ほぼ崩壊状態だった。
また、会計レジにもたれかかるボッシュの顔は傷だらけで、幾度となく暴行を受けたあとだった。命に別状はなかったものの、しばらくは立てないほどの、足の負傷をしており、ピッキングロボットに助けられ、気を取りなおして通信機を起動しているところだった。
震える手で番号を打ち、整備店を経営する知人へ通信を繋げた。
「ありがとうございます。惑星クラウ第一整備店のサスタルです」と声が聞こえた。
「……俺だよ、ボッシュだ」ボッシュは、息を切らしながら、知人関係のサスタルという男と通信を始めていた。「カッツィ団か、カッツィ団の仲間が、雑貨屋荒らしをしている。知ってるか?」
「ど、どうした、ボッシュ?」サスタルは、友人関係とも言えるため、こちらのことになると、接客業を忘れた口調となるのだ。
「聞け? 俺の雑貨屋が、カッツィ団と契約をする予定の反銀河連邦団の小隊に荒らされたんだ。魔界でなにが起きている?」
「知らない。私のほうはなにも聞かされていない」サスタルはなにも知らないようだった。
「発電石の制御装置を求める魔術師に警戒しろ。ろくなことにならねえ」とボッシュ。
「情報をありがとう。すぐに、そっちに医療班と復旧班を送る。頑張れ」サスタルは気転の効く人物だった。だからこそ、情報提供をする価値があるのだ。
「いいか、カッツィ団と反銀河連邦団には、非協力的になれよ」ボッシュは警告を伝えた。
そして、そんな強い塩風のなか、ある白い花はどんな嵐になろうとも、雲と砂嵐によって塞がれてしまったわずかな明かりに対しても、力強い白色を目立たせていた。
一方で、ジャンの人造人間製造計画に、遅れが出ているのは相変わらずだった。かろうじて、補助部材の交換で、軽度な熱量の伝達は可能であり、数人の魔術師が魔力を送り込んでいる最中だった。
ランスは、ほかの魔術師と共に、ジャンに案内され、円柱ケースに収まっている男性の身体を前にして、説明を受けていた。
この人造人間は、レッグス、と名づけられていた。人造人間にも関わらず、魔力を備えたうえで、長い杖を用いて魔杖をつくりあげることも可能とした設定を加えているという。生体脳の設計としては、ジャンの指示に従うような洗脳措置が施されている。ただ、起動直後には、どんな行動に出てしまうかはわかないため、危険が伴うのだという。
ジャンは、この人造人間を用いて外敵からの脅威を排除する、と説明していた。連邦と魔界での一触即発の対峙が起きているこの時代に、人造人間の製造が自衛措置とされてはいるものの、殺人用途であるのは明確だった。
その人造人間は、ジャンに似ているわけでもなく、肌の色もやや灰色になっている。緑色の照明に照らされているその顔は、今にも目覚めそうな雰囲気だった。開発の時間に余裕があるのであれば、肌の色も調整されていたのかもしれない。
「ジャン様」別室から、ジャンの部下がやってきた。「反銀河連邦団の司令官から外交通信が入っております」
「人界には興味ない。魔界の通信のみ、受け入れろ」とジャン。「最近は、反連邦や楽観主義団が発展を遂げている。警戒しなくてはならん」
「それが、発電石制御装置を無償で提供する、と申し出が」と部下。「実際に、映像も確認済みです」
ランスは内心、驚愕していた。その伝言が事実であれば、人造人間の開発が早い段階で進行してしまうからだ。また、スノーが運んでくるものを含めれば、人造人間の量産も可能になってしまう。
「……おう。それは良い」ジャンは嬉しそうに反応した。「スノー様の帰りは?」
「魔界基本時間だと、あと十数時間はかかる、と連絡が入りました。反銀河連邦団は、あと一時間でここに来られると」
「その司令官の役職と名前は」ジャンは、その団体を受け入れるようだった。
「反銀河連邦団、第一開拓局司令官、バズ・ゾロンという名前です」
「わかった。反連邦の第一開拓は、比較的小規模の括りだ。万が一、彼らの裏切り行為があっても、我々で対抗できる。奴らの戦闘艦は、魔術対応できない性能だ」ジャンは、壊れている周辺の機器を見ながら言った。「警備体制の強化は継続したまま、奴らを来させろ。船のコードを聞いて、そのコードを警戒対象から除外しておけ」
「かしこまりました」ジャンの部下は、また別室へと戻っていった。
どうやら、人造人間の製造を望んでいる団体は、ほかにもいるようだった。あるいは、その企画や製造を利用しようとしているか、どちらかである。反銀河連邦団は、名前からして小規模のように聞こえるが、かなり強大な思想団体であることは、長老によく聞かされていた。科学技術も銀河連邦に劣らない分、反銀河連邦団が問題を起こすようなことがあれば、魔界も聞き耳を立てることは多々あるのだ。
「皆、喜べ。予定より、完成は近づく。魔女達を驚かせようではないか」とジャン。「第二の魔界がここで誕生する」
ランスは、人造人間の誕生目前に、身体を震わせた。
※※※
惑星ゼリアの雑貨屋では、雑貨屋店主のボッシュと反銀河連邦団が争った形跡があり、一部の倉庫では、ほぼ崩壊状態だった。
また、会計レジにもたれかかるボッシュの顔は傷だらけで、幾度となく暴行を受けたあとだった。命に別状はなかったものの、しばらくは立てないほどの、足の負傷をしており、ピッキングロボットに助けられ、気を取りなおして通信機を起動しているところだった。
震える手で番号を打ち、整備店を経営する知人へ通信を繋げた。
「ありがとうございます。惑星クラウ第一整備店のサスタルです」と声が聞こえた。
「……俺だよ、ボッシュだ」ボッシュは、息を切らしながら、知人関係のサスタルという男と通信を始めていた。「カッツィ団か、カッツィ団の仲間が、雑貨屋荒らしをしている。知ってるか?」
「ど、どうした、ボッシュ?」サスタルは、友人関係とも言えるため、こちらのことになると、接客業を忘れた口調となるのだ。
「聞け? 俺の雑貨屋が、カッツィ団と契約をする予定の反銀河連邦団の小隊に荒らされたんだ。魔界でなにが起きている?」
「知らない。私のほうはなにも聞かされていない」サスタルはなにも知らないようだった。
「発電石の制御装置を求める魔術師に警戒しろ。ろくなことにならねえ」とボッシュ。
「情報をありがとう。すぐに、そっちに医療班と復旧班を送る。頑張れ」サスタルは気転の効く人物だった。だからこそ、情報提供をする価値があるのだ。
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