23 / 25
チャプター07-02
しおりを挟む
惑星マシスの発電所警備室では、六人の魔術師が均等に並んで、円陣を組むことで、魔気を広範囲に飛ばすことができ、この発電所周辺で起きる部外者による侵入を察知することを可能とさせていた。これが魔界での警備体制だった。また、六人の魔術師のまわりには、壁に向かうように座って、施設周辺をモニターで監視している魔術師も数人いた。
ジャンが腕を組んで警備室を歩き、彼らから情報が出ないのか、と待っていた。部屋の隅では、レッグスが黙って立ち尽くしており、うまく洗脳措置ができ、ジャンの言うことを聞くようになっていた。おかげで、ほかへの被害を出さず、必要以外のことでは、黙って立つようになっている。
バズが例の賞金稼ぎの情報を持ち込んできてからというもの、しばらくしても、特に動きは見られなかった。魔界の結界に加えて、銀河連邦の科学技術も用いて、探知波を張り巡らしているものの、それがモニターに映ることがなく、侵入者が来るような雰囲気はなかった。
「第四探知機の近くで、微弱の反応がありました。ただ、落下物の反応と似ております」
「岩塩の落下かもしれないが、それ以上の反応があれば、さらに報告しろ」ジャンは、急ぐつもりはなかった。楽観できる理由としては、リップルに侵入されたとしても、特に支障はないからだ。すぐに彼を殺せるほどの対策は整っていた。問題なのは、そこではなかった。
「依然、スノー様からの連絡はありません」と魔術師の一人。「予定時間を過ぎているのですが」
現在は、時間に厳しいはずの魔女が不通になるという問題が発生していた。スノーのおかげで、人造人間の開発を魔界と連携して行えているのだが、スノーが企画放棄をしたとなれば、魔界に認められた存在になれなくなってしまうのだ。
魔界から独立したとはいえ、魔界に認められた存在にならなければ、危険な考えを持つ魔女に潰されてしまうか、反銀河連邦に侵略されてしまう可能性があった。
こちらの立場としては、外敵から攻められないだけの脅威を持っていなくてはならず、さらに拡大を図り、なにかしらの生産物を取り扱った、ほかの団体などとの契約ができるようにしておかなければならないのだ。そうでなければ、団体として維持が出来なくなってしまう。
「スノー様は、もう少し待つ」ジャンは、気長に待つことにした。「もし、魔女達が、この企画と俺達を放棄したのなら、俺が直接魔界の大臣や賢者様へ交渉をする。それでもだめなら、反銀河連邦と連携を取ってレッグスを量産し、独自の魔界を創成する。……スノー様が来たら、俺に連絡しろ」
ジャンは、部下の返事を聞くと、レッグスを連れて、監獄へと向かった。
※※※
ランスは、ベッドの上で座り込んでいた。相変わらず風が強く、静かなひと時が訪れることはなかった。そんな時に、うっすらと脳裏によぎるリップルの笑顔が、こちらの心を救ってくれていた。
「おー、いたいた」突如として、頭上から女性の声が聞こえた。「ランスちゃん?」
「え?」ランスは驚きつつも、その声のする小窓のほうへと視線を向けた。
「良かった。生きてる」小窓では、格子のあいだをすり抜けて、この部屋へと入って来る妖精の姿があった。緑色の衣装を着て、身体を黄色に光らせている。「君は、ランスちゃんだよね?」
その妖精は、こちらがランスであることを答えると、ミアと名乗ってから部屋の中央で浮遊した。これがリップルの言っていた、妖精族、というものだった。
「よ、妖精?」ランスは思わず聞いた。
「おうよ、妖精だ! 猫族でも魔界族でもなければ、怪物じゃないぞ!」とミアは気分の高い声を発した。「これで、リップルの約束の一つが叶ったね!」
妖精と会わせてあげる。確かに、これは約束してくれていた。
ただ、突然の出来事に、ランスはまだ放心状態だった。次第に冷静になってくると、リップルが救出しに来てくれたことに、期待感が溢れてきた。
「リップル? リップルが来てるの?」ランスは、ミアに近寄った。
「そうだよ! 期待どおりの男でしょー」とミアは微笑んだ。「リップルは、脱出の準備をしてる。エギーというロボットの仲間もいて、大気圏からさらにちょっと先まで簡易飛行ができる。そこまで行くよ。……さて、ここの見取り図はあるかな?」
「見つけられなかった」平常心を取り戻したランスは答えた。「この建物の南に大きな扉。北に小さな扉がある。南のほうが、連絡通路と直結してる」
「うーん。壁を破壊するのも手だねー」ミアは首を傾げた。「リップルと私なら、魔術師を相手にできるかも。正面突破とか、どう?」
「正面突破なんてダメ!」ミアは焦った。「ここにいる魔術師達は、罠を張ってる! 警備が手薄のふりをして、巨大連絡通路で待ち構えてるかも。この部屋も結界があるし」
「……わかった」ミアは背中にある透明度の高い水色の羽を羽ばたかせると、小窓へと上昇し、格子の隙間から外へと出た。「とりあえず、現状とさっきの情報をリップルに報告してくる。ここで待ってて」
「うん! 待ってる!」ランスは、小窓に顔を出して、外にいるミアに返事をした。
※※※
リップルは、エギーを立ち上がらせた。
エギーは、本来の調子を取り戻し、出会った時と同じ快調さを見せてくれた。
「リップル殿、ありがとうございます」エギーは、両腕の動きを確認しながらお礼を言った。
「この調子も、一時的なものかもしれない」リップルは辺りを見ながら返した。「すぐに、取り掛かろう」
「お待たせ!」そこで、丁度良くミアがやって来た。「ランスを見つけた。生きてる」
「良かった……」リップルは胸をなでおろすようにして安堵した。「あとは、脱出路を確保するだけだ。いよいよだね」
ミアは、ランスが囚われている建物の構造と、魔術師が罠を張っていることを、詳しく話してくれた。ランス自らが得た情報のようで、正確だった。
リップルは、作戦を立てた。皆で監獄の南に位置する大きな扉へ向かい、エギーに情報網への侵入をしてもらい、扉の開閉をさせることから最終作戦を開始することにした。扉の開放後は、構内に入るのはこちらだけで、エギーとミアには、出入口の確保をしてもらいながら、ゼシロンという花を捜索させつつ、ランスを待ってもらう。そして、構内に侵入したこちらは、待ち構えていると思われる魔術師数十人の相手をしたあと、ミアと再会をする。
「さあ、僕に乗って」エギーが飛行体制に入った。
「監獄へは、私が案内するよ」ミアが、リップルの肩に乗った。
「よし、出発!」リップルは、エギーの背中に乗った。
ジャンが腕を組んで警備室を歩き、彼らから情報が出ないのか、と待っていた。部屋の隅では、レッグスが黙って立ち尽くしており、うまく洗脳措置ができ、ジャンの言うことを聞くようになっていた。おかげで、ほかへの被害を出さず、必要以外のことでは、黙って立つようになっている。
バズが例の賞金稼ぎの情報を持ち込んできてからというもの、しばらくしても、特に動きは見られなかった。魔界の結界に加えて、銀河連邦の科学技術も用いて、探知波を張り巡らしているものの、それがモニターに映ることがなく、侵入者が来るような雰囲気はなかった。
「第四探知機の近くで、微弱の反応がありました。ただ、落下物の反応と似ております」
「岩塩の落下かもしれないが、それ以上の反応があれば、さらに報告しろ」ジャンは、急ぐつもりはなかった。楽観できる理由としては、リップルに侵入されたとしても、特に支障はないからだ。すぐに彼を殺せるほどの対策は整っていた。問題なのは、そこではなかった。
「依然、スノー様からの連絡はありません」と魔術師の一人。「予定時間を過ぎているのですが」
現在は、時間に厳しいはずの魔女が不通になるという問題が発生していた。スノーのおかげで、人造人間の開発を魔界と連携して行えているのだが、スノーが企画放棄をしたとなれば、魔界に認められた存在になれなくなってしまうのだ。
魔界から独立したとはいえ、魔界に認められた存在にならなければ、危険な考えを持つ魔女に潰されてしまうか、反銀河連邦に侵略されてしまう可能性があった。
こちらの立場としては、外敵から攻められないだけの脅威を持っていなくてはならず、さらに拡大を図り、なにかしらの生産物を取り扱った、ほかの団体などとの契約ができるようにしておかなければならないのだ。そうでなければ、団体として維持が出来なくなってしまう。
「スノー様は、もう少し待つ」ジャンは、気長に待つことにした。「もし、魔女達が、この企画と俺達を放棄したのなら、俺が直接魔界の大臣や賢者様へ交渉をする。それでもだめなら、反銀河連邦と連携を取ってレッグスを量産し、独自の魔界を創成する。……スノー様が来たら、俺に連絡しろ」
ジャンは、部下の返事を聞くと、レッグスを連れて、監獄へと向かった。
※※※
ランスは、ベッドの上で座り込んでいた。相変わらず風が強く、静かなひと時が訪れることはなかった。そんな時に、うっすらと脳裏によぎるリップルの笑顔が、こちらの心を救ってくれていた。
「おー、いたいた」突如として、頭上から女性の声が聞こえた。「ランスちゃん?」
「え?」ランスは驚きつつも、その声のする小窓のほうへと視線を向けた。
「良かった。生きてる」小窓では、格子のあいだをすり抜けて、この部屋へと入って来る妖精の姿があった。緑色の衣装を着て、身体を黄色に光らせている。「君は、ランスちゃんだよね?」
その妖精は、こちらがランスであることを答えると、ミアと名乗ってから部屋の中央で浮遊した。これがリップルの言っていた、妖精族、というものだった。
「よ、妖精?」ランスは思わず聞いた。
「おうよ、妖精だ! 猫族でも魔界族でもなければ、怪物じゃないぞ!」とミアは気分の高い声を発した。「これで、リップルの約束の一つが叶ったね!」
妖精と会わせてあげる。確かに、これは約束してくれていた。
ただ、突然の出来事に、ランスはまだ放心状態だった。次第に冷静になってくると、リップルが救出しに来てくれたことに、期待感が溢れてきた。
「リップル? リップルが来てるの?」ランスは、ミアに近寄った。
「そうだよ! 期待どおりの男でしょー」とミアは微笑んだ。「リップルは、脱出の準備をしてる。エギーというロボットの仲間もいて、大気圏からさらにちょっと先まで簡易飛行ができる。そこまで行くよ。……さて、ここの見取り図はあるかな?」
「見つけられなかった」平常心を取り戻したランスは答えた。「この建物の南に大きな扉。北に小さな扉がある。南のほうが、連絡通路と直結してる」
「うーん。壁を破壊するのも手だねー」ミアは首を傾げた。「リップルと私なら、魔術師を相手にできるかも。正面突破とか、どう?」
「正面突破なんてダメ!」ミアは焦った。「ここにいる魔術師達は、罠を張ってる! 警備が手薄のふりをして、巨大連絡通路で待ち構えてるかも。この部屋も結界があるし」
「……わかった」ミアは背中にある透明度の高い水色の羽を羽ばたかせると、小窓へと上昇し、格子の隙間から外へと出た。「とりあえず、現状とさっきの情報をリップルに報告してくる。ここで待ってて」
「うん! 待ってる!」ランスは、小窓に顔を出して、外にいるミアに返事をした。
※※※
リップルは、エギーを立ち上がらせた。
エギーは、本来の調子を取り戻し、出会った時と同じ快調さを見せてくれた。
「リップル殿、ありがとうございます」エギーは、両腕の動きを確認しながらお礼を言った。
「この調子も、一時的なものかもしれない」リップルは辺りを見ながら返した。「すぐに、取り掛かろう」
「お待たせ!」そこで、丁度良くミアがやって来た。「ランスを見つけた。生きてる」
「良かった……」リップルは胸をなでおろすようにして安堵した。「あとは、脱出路を確保するだけだ。いよいよだね」
ミアは、ランスが囚われている建物の構造と、魔術師が罠を張っていることを、詳しく話してくれた。ランス自らが得た情報のようで、正確だった。
リップルは、作戦を立てた。皆で監獄の南に位置する大きな扉へ向かい、エギーに情報網への侵入をしてもらい、扉の開閉をさせることから最終作戦を開始することにした。扉の開放後は、構内に入るのはこちらだけで、エギーとミアには、出入口の確保をしてもらいながら、ゼシロンという花を捜索させつつ、ランスを待ってもらう。そして、構内に侵入したこちらは、待ち構えていると思われる魔術師数十人の相手をしたあと、ミアと再会をする。
「さあ、僕に乗って」エギーが飛行体制に入った。
「監獄へは、私が案内するよ」ミアが、リップルの肩に乗った。
「よし、出発!」リップルは、エギーの背中に乗った。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる