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5話
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「うわっ!?」
ゴチッ
「あたっ!」
突然の美女に驚いて飛び起き、額と額がぶつかってしまう。
「す、すみませ…!?」
痛む額を抑えて咄嗟に謝るが、言い切る前に後頭部の柔らかい感触に気が付く。
エルフらしき女性を見上げる形になるこの体勢。
これは、膝枕というやつでは?
気づいた瞬間に転がるようにして距離を置く。
耐性のない思春期男子には刺激が強すぎた。
顔を赤くして動揺のあまり言葉が出ない。
さらに突然動いたせいか転がったせいか、くらくらと眩暈がする。
「あはは!驚かせてごめんね。おはよう、目が覚めてよかった。傷は治っても流れた血は戻らないだろうしもう少し安静にしたほうがいいと思うよ」
女性は傍らに立てかけてあったあの短剣を持って立ち上がり湊の前にしゃがみこむ。
綺麗な新緑の瞳に真っ直ぐ見つめられて湊はたじろいた。
「これ、すっごい短剣だね。この剣がなかったらきっと死んじゃってたよ。絶対手放さないようにね」
「え…?」
「この剣がずっと守っててくれたんだよ。私は戦えないからね、猿みたいなのが出てきたときは焦ったなあ」
猿、と言われて湊は昨晩の恐怖を思い出す。
裂かれたはずの腹はすっかり治っているが、破れたシャツと染みついた血液があれは夢ではなかったと物語っている。
「あの、傷は貴女が…?」
「ん?うん、魔法でね。血だらけで倒れてるのを見つけたときは本当に焦ったよ。奇麗に治って本当によかった」
「…助けてくれてありがとうございます。なんとお礼をすればいいか…俺、何も持ってなくて…」
「気にしなくていいよ。ただ死なせたくなかっただけだからさ」
にっと眩しく笑った彼女にどうしてか教科書を貸したあの少女が重なる。
一瞬呆けてしまうがすぐに我に返り命を救ってもらった恩人に何も返さないわけにはいかないと言い募る。
困ったように笑う女性はそれでもいらないと答える。
「え、」
湊が尚も食い下がろうと口を開く前に女性は何かに驚き立ち上がった。
そして湊に背を向けそそくさと立ち去ろうとする。
「ちょ、どうしたんですか!?」
「ああいや、こっちの事情!気にしないで!」
「待ってください!まだ話が…!」
納得できない湊は貧血でふらつきながらもよろよろと立ち上がり追いかける。
すぐに距離が開き焦った湊は足をもつれさせ転んでしまう。
流石に足を止め女性は振り返った。
心配そうに様子を伺いながらも駆け寄ることはしない。
「せめて、名前を教えてもらえませんか…?」
蹲ったまま絞り出すように呟く湊。
「…サキ、だよ。ごめんね、でもまたきっとすぐ会えるから。死なないでね、
サクラくん」
ばっと顔をあげるが彼女の姿はどこにもない。
(サキさん…。なんで俺の名前を…)
忽然と姿を消したエルフの女性、サキ。
何故こんな場所に居たのか、どうして突然消えてしまったのか。
どうして自分の名を知っていたのか。
分からないことは考えたって仕方ないと湊は立ち上がる。
(まずは森を抜けないといけないな)
彼女のまたすぐ会えるという言葉を信じて湊は歩き出した。
ゴチッ
「あたっ!」
突然の美女に驚いて飛び起き、額と額がぶつかってしまう。
「す、すみませ…!?」
痛む額を抑えて咄嗟に謝るが、言い切る前に後頭部の柔らかい感触に気が付く。
エルフらしき女性を見上げる形になるこの体勢。
これは、膝枕というやつでは?
気づいた瞬間に転がるようにして距離を置く。
耐性のない思春期男子には刺激が強すぎた。
顔を赤くして動揺のあまり言葉が出ない。
さらに突然動いたせいか転がったせいか、くらくらと眩暈がする。
「あはは!驚かせてごめんね。おはよう、目が覚めてよかった。傷は治っても流れた血は戻らないだろうしもう少し安静にしたほうがいいと思うよ」
女性は傍らに立てかけてあったあの短剣を持って立ち上がり湊の前にしゃがみこむ。
綺麗な新緑の瞳に真っ直ぐ見つめられて湊はたじろいた。
「これ、すっごい短剣だね。この剣がなかったらきっと死んじゃってたよ。絶対手放さないようにね」
「え…?」
「この剣がずっと守っててくれたんだよ。私は戦えないからね、猿みたいなのが出てきたときは焦ったなあ」
猿、と言われて湊は昨晩の恐怖を思い出す。
裂かれたはずの腹はすっかり治っているが、破れたシャツと染みついた血液があれは夢ではなかったと物語っている。
「あの、傷は貴女が…?」
「ん?うん、魔法でね。血だらけで倒れてるのを見つけたときは本当に焦ったよ。奇麗に治って本当によかった」
「…助けてくれてありがとうございます。なんとお礼をすればいいか…俺、何も持ってなくて…」
「気にしなくていいよ。ただ死なせたくなかっただけだからさ」
にっと眩しく笑った彼女にどうしてか教科書を貸したあの少女が重なる。
一瞬呆けてしまうがすぐに我に返り命を救ってもらった恩人に何も返さないわけにはいかないと言い募る。
困ったように笑う女性はそれでもいらないと答える。
「え、」
湊が尚も食い下がろうと口を開く前に女性は何かに驚き立ち上がった。
そして湊に背を向けそそくさと立ち去ろうとする。
「ちょ、どうしたんですか!?」
「ああいや、こっちの事情!気にしないで!」
「待ってください!まだ話が…!」
納得できない湊は貧血でふらつきながらもよろよろと立ち上がり追いかける。
すぐに距離が開き焦った湊は足をもつれさせ転んでしまう。
流石に足を止め女性は振り返った。
心配そうに様子を伺いながらも駆け寄ることはしない。
「せめて、名前を教えてもらえませんか…?」
蹲ったまま絞り出すように呟く湊。
「…サキ、だよ。ごめんね、でもまたきっとすぐ会えるから。死なないでね、
サクラくん」
ばっと顔をあげるが彼女の姿はどこにもない。
(サキさん…。なんで俺の名前を…)
忽然と姿を消したエルフの女性、サキ。
何故こんな場所に居たのか、どうして突然消えてしまったのか。
どうして自分の名を知っていたのか。
分からないことは考えたって仕方ないと湊は立ち上がる。
(まずは森を抜けないといけないな)
彼女のまたすぐ会えるという言葉を信じて湊は歩き出した。
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