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11話
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「手荒なことしてごめんね!とにかくあそこから連れ出さなきゃって一心で!髪の毛大丈夫!?頭皮傷めたりとか…って、ああ!?く、口元切れて…お皿の破片!?ちょっと汚すだけのつもりが…!」
「…」
いびられていた侍女はぎゅっと口を結んだまま俯いた。
その様子に希乃葉はハッとする。
「もう大丈夫!お願い聞いてくれてありがとうね」
優しく背中をさすって微笑む希乃葉の言葉に俯いていた侍女は顔を上げダバ―っと涙を溢れさせ床にへたり込んだ。
「こっ、怖かったですぅ~~!!!!」
いびられていた侍女、改めナンシーが落ち着くのを待ってその間に希乃葉付の侍女エマにタオルを持ってきてもらった。
涙と汚れた口元を綺麗にしてから治癒スキルを発動させる。
「わあ、流石勇者様…!こんな高度な回復魔術を扱えるだなんて凄いですぅ…!」
「それで?どういうことか説明して頂いてもよろしいでしょうか?」
まだ警戒心の抜けないエマに苦笑いを返しどう説明したものかと頭を捻らせていると、元気を取り戻してきたナンシーが前に出て代わりに語りだした。
「ノノハ様がコウセイ様たちとお話される前にナンシーに耳打ちされたのですよ。『口を閉じてただ私に合わせて』と。直後に髪を掴まれたので絶望したのですが…そこで不思議なことが起きたのです!
ノノハ様の言葉に従い口は閉じていたのですが触れたお料理がどういうわけか消えていったのです!
コウセイ様たちはお話に夢中でいつの間にかナンシーが完食したと思われたのでしょうがナンシーは床を見つめていただけで気づいたらノノハ様に背を押され現在に至っているのですぅ!」
「消えた…とは?」
「えーと…まあそういうスキルがありまして…まだ試してみてなかったから一か八かだったんですけどね」
そう、希乃葉はサブスキルとして使えるようになった空間収納を使用し料理を収納したのだ。
結果的に意外な言動で康生たちの要望を叶え、興味をナンシーから希乃葉に移らせた。
しかしナンシーを助けたのは事実だがあの愉悦に歪んだ表情が演技であるとは到底思えず、エマは訝しむような視線を送る。
「それで…ナンシーもノノハ様付にしていただける、ということでよろしいのですか?」
もじもじと期待を込めて希乃葉を見上げるナンシーに希乃葉は穏やかに笑ってきっぱりと告げた。
「それは絶対にダメ」
固まるナンシーとエマ。
その意味を飲み込んだナンシーが再び目を潤ませながら希乃葉に詰め寄る。
「何でですぅ!?お皿を落としたのはコウセイ様のいじわるのせいであってナンシーちゃんとお仕事できますよう!?」
「あ~いや、そういう問題じゃなくてね」
どうどうとナンシーを宥めつつ希乃葉の侍女には出来ない理由を説明する。
「まず、私はあの場では誰よりも好き勝手して林くんたちにも好き勝手しなよ~と声をかけて出てきているわけです。
それで連れ出したナンシーが私付になるっていうことがどういう意味になるか分かる?」
「えっ…あっ」
「…益々調子づくというわけですね」
エマの回答に頷く。
ナンシーが希乃葉の望み通り手に入ったことになれば何をしても許されるという前例を作ることになるのだ。
「そう、だからそんな横暴は通らないって示す必要があるからナンシーは私のところに来ちゃダメ。
ナンシーの代わりはもっと熟練のメイドさんか、腕っぷしもある執事さんとかに出来ればなおよし。
問題はナンシーの移動先だけど、まだ勇者に仕える気でいる?目撃者も沢山いるし別の業務に変えてもらうことだってできるんじゃ…」
「ナンシーはこのお仕事に誇りを持っています。コウセイ様たちは怖かったですけど…でも、ノノハ様のような勇者様のお力になりたいという想いは変わりません」
力強いナンシーの答えに希乃葉は一瞬驚いて眩しそうに目を細めた。
「そっか。うん、林くんたちが特殊なだけで他の人はそんなに悪い人じゃない…と思うよ、多分」
「ふ、不安になること言わないでほしいですぅ~!」
「う~んでもどうしようか。私から交渉するわけにはいかないし、誰がいいとかもアドバイスできな―」
ガチャッ
希乃葉が言葉を言い切る前に勢いよく何者かが部屋に飛び込んで来た。
驚いて三人がその人物を見やる。
「話は聞かせてもらった!」
その人物は希乃葉に忠告をしてくれたハーフアップの女子生徒だった。
「…」
いびられていた侍女はぎゅっと口を結んだまま俯いた。
その様子に希乃葉はハッとする。
「もう大丈夫!お願い聞いてくれてありがとうね」
優しく背中をさすって微笑む希乃葉の言葉に俯いていた侍女は顔を上げダバ―っと涙を溢れさせ床にへたり込んだ。
「こっ、怖かったですぅ~~!!!!」
いびられていた侍女、改めナンシーが落ち着くのを待ってその間に希乃葉付の侍女エマにタオルを持ってきてもらった。
涙と汚れた口元を綺麗にしてから治癒スキルを発動させる。
「わあ、流石勇者様…!こんな高度な回復魔術を扱えるだなんて凄いですぅ…!」
「それで?どういうことか説明して頂いてもよろしいでしょうか?」
まだ警戒心の抜けないエマに苦笑いを返しどう説明したものかと頭を捻らせていると、元気を取り戻してきたナンシーが前に出て代わりに語りだした。
「ノノハ様がコウセイ様たちとお話される前にナンシーに耳打ちされたのですよ。『口を閉じてただ私に合わせて』と。直後に髪を掴まれたので絶望したのですが…そこで不思議なことが起きたのです!
ノノハ様の言葉に従い口は閉じていたのですが触れたお料理がどういうわけか消えていったのです!
コウセイ様たちはお話に夢中でいつの間にかナンシーが完食したと思われたのでしょうがナンシーは床を見つめていただけで気づいたらノノハ様に背を押され現在に至っているのですぅ!」
「消えた…とは?」
「えーと…まあそういうスキルがありまして…まだ試してみてなかったから一か八かだったんですけどね」
そう、希乃葉はサブスキルとして使えるようになった空間収納を使用し料理を収納したのだ。
結果的に意外な言動で康生たちの要望を叶え、興味をナンシーから希乃葉に移らせた。
しかしナンシーを助けたのは事実だがあの愉悦に歪んだ表情が演技であるとは到底思えず、エマは訝しむような視線を送る。
「それで…ナンシーもノノハ様付にしていただける、ということでよろしいのですか?」
もじもじと期待を込めて希乃葉を見上げるナンシーに希乃葉は穏やかに笑ってきっぱりと告げた。
「それは絶対にダメ」
固まるナンシーとエマ。
その意味を飲み込んだナンシーが再び目を潤ませながら希乃葉に詰め寄る。
「何でですぅ!?お皿を落としたのはコウセイ様のいじわるのせいであってナンシーちゃんとお仕事できますよう!?」
「あ~いや、そういう問題じゃなくてね」
どうどうとナンシーを宥めつつ希乃葉の侍女には出来ない理由を説明する。
「まず、私はあの場では誰よりも好き勝手して林くんたちにも好き勝手しなよ~と声をかけて出てきているわけです。
それで連れ出したナンシーが私付になるっていうことがどういう意味になるか分かる?」
「えっ…あっ」
「…益々調子づくというわけですね」
エマの回答に頷く。
ナンシーが希乃葉の望み通り手に入ったことになれば何をしても許されるという前例を作ることになるのだ。
「そう、だからそんな横暴は通らないって示す必要があるからナンシーは私のところに来ちゃダメ。
ナンシーの代わりはもっと熟練のメイドさんか、腕っぷしもある執事さんとかに出来ればなおよし。
問題はナンシーの移動先だけど、まだ勇者に仕える気でいる?目撃者も沢山いるし別の業務に変えてもらうことだってできるんじゃ…」
「ナンシーはこのお仕事に誇りを持っています。コウセイ様たちは怖かったですけど…でも、ノノハ様のような勇者様のお力になりたいという想いは変わりません」
力強いナンシーの答えに希乃葉は一瞬驚いて眩しそうに目を細めた。
「そっか。うん、林くんたちが特殊なだけで他の人はそんなに悪い人じゃない…と思うよ、多分」
「ふ、不安になること言わないでほしいですぅ~!」
「う~んでもどうしようか。私から交渉するわけにはいかないし、誰がいいとかもアドバイスできな―」
ガチャッ
希乃葉が言葉を言い切る前に勢いよく何者かが部屋に飛び込んで来た。
驚いて三人がその人物を見やる。
「話は聞かせてもらった!」
その人物は希乃葉に忠告をしてくれたハーフアップの女子生徒だった。
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