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24. 夏子と山男のヒロ
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(夏子と山男のヒロ)
「よー、ナツ……、何やってんだよ……」
「……、大きなお世話よ……、あんたなんか死んでいるじゃない」
「おかげで、でもまた、こうして逢えるじゃないか……」
「……、逢えたって嬉しくないわよ! 私は、こうして動けないんだから……」
「いいさー、動けなくても……、相変わらず奇麗だよ……」
「よしてよー、そんな歯の浮くような言葉……、もう、何もできないわ……、もう、何処にも行けない……」
「そんなことはないぞー、こうしてカタリーナに来ているんじゃないか……」
「ヒロは、雪の中のジャンダルムを見れたの……?」
「見れたよー、真っ白な白銀の世界でドーム岩だけが黒々と立っているんだ。良く晴れていたから、青と黒と白で眩しかったよ。でも、もう少しジャンダルムには雪が付いていると思ったけど、僕が見た時にはなかったよ。もう春先だったからねー」
「……、でも帰ってこられなければ、見れないのと一緒よ……、そんな自己満足、私は許さないわ……」
「……、みんなに迷惑かけたね……、それだけは、今も心が痛いよ……」
「そんな軽い言葉で、私の心は、癒されないわ……、今もヒロの冷たい、生きていたころの暖かさのない、冷え切った顔が目に浮かぶのよ……」
「……、ごめん、僕だって帰りたかった。ナツにジャンダルムの感動を伝えたかった……」
「もう、遅いわ……、どれだけ泣いたか分からないわ……」
「そうだったね……、それでナツは、山をやめたんだ……」
「……、行けるわけないでしょうー、もう、いやよ……、山を見るたびに貴方の顔が浮かぶのよ……、もう、たくさん……」
「……、僕は見ていたよ、ナツの傍で……」
「だから、私は山を嫌いな人と結婚したのよー、仕事バカで、遊んでもらえず苦労したけどね……、でも、すぐに子供ができたから、子育てに夢中だったけれどね……、男の子と女の子、……、山に登るよりも楽しかったわ……、サリーちゃんのお母さんのスー子とも仲良くなってね、このカタリーナで喋っているのが一番の楽しみになったわ……」
「……、そうだったね……、僕も見ていたよ……」
「……、でも、うそー、無理やり幸せな顔をしていた。私には、もう平凡な日常しかないじゃない……、忘れようとしても、忘れられないじゃない……、貴方と過ごした山の生活……、北穂のテント場で貴方と見た、満天の星空、視界を遮るものがないテント場だったから、すぐ傍で星がつかめそうな気になったわ……」
「僕は、星空よりも、君の方が奇麗だと思っていたけどね……」
「また、そんな歯の浮くようなことを言って……」
「でも、二人で登った山、幾つだったの……?」
「さー、数えたことないけど、ナツは、穂高よりも、白馬が好きだったね……」
「……、そうよ、あの緑の稜線が好きなのよ。白馬から見る旭岳のこんもりとした山、私はジャンダルムよりも好きよ。可愛いじゃない……」
「それに、貴方の背中を見て歩けるしね。貴方に抱かれるよりも嬉しかったわ……、鑓温泉の露天風呂も好き……、唐松まで行っても、八方池もいいじゃない……」
「僕は、ナツを抱いていた方が嬉しいけどね……」
「もうー、それも嘘ねー、貴方、私を置いて、冬山に行ったのよ……、私よりも、冬山を選んだのよ……」
「とりあえず、山岳部だからね……、君は、寒いのは嫌だって言って行かなかったんだ……」
「そうよー、夏に生まれたから、寒いのは苦手なのよー、雪の中を震えながら歩くなんて楽しくないじゃない……、白馬大雪渓は好きだけどね……、だってあれは、夏だもの……」
「……、まさか、帰ってこられないなんて、思っても見なかったからさ……」
「あたりまえでしょう、遭難しに行く人なんていないわよ……」
「……、そうなんー、……」
「バカじゃないの……、私も、私も、こんな体になるなんて思っても見なったわ……、みんなみんな、貴方のせいよー」
「僕のせい……」
「……、では、お詫びに、また二人で、あのジャンダルムを見に行こうー、僕が連れて行ってあげるよ……」
「……、こんな動けない体でも、連れて行ってくれるの……?」
「もちろんだよ……、それで、またテントで、二人で抱き合って寝ようー」
「……、貴方、抱き合うだけで、すまないから……」
「……、嬉しいだろー」
「……、嬉しいわー」
隼矢が、叫んだ……
「お姉ちゃん、お母さん笑っているよ……」
キー子もお母さんの顔を覗き込んだ……
「えー、ホンと、笑っている様に見えるね……」
私も、夏子さんの顔を覗いた……
「ホンとねー、きっと私たちの話が面白かったのよ……」
夏子さんの昔と変わらない笑顔……
「隼矢、あんたやっぱり偉いよ……」
「褒めてくれているの……?」
「褒めてあげるわよ! あんた、お母さんの気持ち分かるのね……」
「……、もちろんだよ……」
「……、私なら絶対、カタリーナに連れてこないもの……」
夏子さん、……、死んでいるわけではないのだから、笑うことだってあるよね……
カタリーナに集うお客さんは、いつも幸せを求めてやってくる。
幸せの笑顔は、カタリーナへの感謝の気持ちなのかもしれない。
私は、その至福の時を、心を込めて提供している。
「よー、ナツ……、何やってんだよ……」
「……、大きなお世話よ……、あんたなんか死んでいるじゃない」
「おかげで、でもまた、こうして逢えるじゃないか……」
「……、逢えたって嬉しくないわよ! 私は、こうして動けないんだから……」
「いいさー、動けなくても……、相変わらず奇麗だよ……」
「よしてよー、そんな歯の浮くような言葉……、もう、何もできないわ……、もう、何処にも行けない……」
「そんなことはないぞー、こうしてカタリーナに来ているんじゃないか……」
「ヒロは、雪の中のジャンダルムを見れたの……?」
「見れたよー、真っ白な白銀の世界でドーム岩だけが黒々と立っているんだ。良く晴れていたから、青と黒と白で眩しかったよ。でも、もう少しジャンダルムには雪が付いていると思ったけど、僕が見た時にはなかったよ。もう春先だったからねー」
「……、でも帰ってこられなければ、見れないのと一緒よ……、そんな自己満足、私は許さないわ……」
「……、みんなに迷惑かけたね……、それだけは、今も心が痛いよ……」
「そんな軽い言葉で、私の心は、癒されないわ……、今もヒロの冷たい、生きていたころの暖かさのない、冷え切った顔が目に浮かぶのよ……」
「……、ごめん、僕だって帰りたかった。ナツにジャンダルムの感動を伝えたかった……」
「もう、遅いわ……、どれだけ泣いたか分からないわ……」
「そうだったね……、それでナツは、山をやめたんだ……」
「……、行けるわけないでしょうー、もう、いやよ……、山を見るたびに貴方の顔が浮かぶのよ……、もう、たくさん……」
「……、僕は見ていたよ、ナツの傍で……」
「だから、私は山を嫌いな人と結婚したのよー、仕事バカで、遊んでもらえず苦労したけどね……、でも、すぐに子供ができたから、子育てに夢中だったけれどね……、男の子と女の子、……、山に登るよりも楽しかったわ……、サリーちゃんのお母さんのスー子とも仲良くなってね、このカタリーナで喋っているのが一番の楽しみになったわ……」
「……、そうだったね……、僕も見ていたよ……」
「……、でも、うそー、無理やり幸せな顔をしていた。私には、もう平凡な日常しかないじゃない……、忘れようとしても、忘れられないじゃない……、貴方と過ごした山の生活……、北穂のテント場で貴方と見た、満天の星空、視界を遮るものがないテント場だったから、すぐ傍で星がつかめそうな気になったわ……」
「僕は、星空よりも、君の方が奇麗だと思っていたけどね……」
「また、そんな歯の浮くようなことを言って……」
「でも、二人で登った山、幾つだったの……?」
「さー、数えたことないけど、ナツは、穂高よりも、白馬が好きだったね……」
「……、そうよ、あの緑の稜線が好きなのよ。白馬から見る旭岳のこんもりとした山、私はジャンダルムよりも好きよ。可愛いじゃない……」
「それに、貴方の背中を見て歩けるしね。貴方に抱かれるよりも嬉しかったわ……、鑓温泉の露天風呂も好き……、唐松まで行っても、八方池もいいじゃない……」
「僕は、ナツを抱いていた方が嬉しいけどね……」
「もうー、それも嘘ねー、貴方、私を置いて、冬山に行ったのよ……、私よりも、冬山を選んだのよ……」
「とりあえず、山岳部だからね……、君は、寒いのは嫌だって言って行かなかったんだ……」
「そうよー、夏に生まれたから、寒いのは苦手なのよー、雪の中を震えながら歩くなんて楽しくないじゃない……、白馬大雪渓は好きだけどね……、だってあれは、夏だもの……」
「……、まさか、帰ってこられないなんて、思っても見なかったからさ……」
「あたりまえでしょう、遭難しに行く人なんていないわよ……」
「……、そうなんー、……」
「バカじゃないの……、私も、私も、こんな体になるなんて思っても見なったわ……、みんなみんな、貴方のせいよー」
「僕のせい……」
「……、では、お詫びに、また二人で、あのジャンダルムを見に行こうー、僕が連れて行ってあげるよ……」
「……、こんな動けない体でも、連れて行ってくれるの……?」
「もちろんだよ……、それで、またテントで、二人で抱き合って寝ようー」
「……、貴方、抱き合うだけで、すまないから……」
「……、嬉しいだろー」
「……、嬉しいわー」
隼矢が、叫んだ……
「お姉ちゃん、お母さん笑っているよ……」
キー子もお母さんの顔を覗き込んだ……
「えー、ホンと、笑っている様に見えるね……」
私も、夏子さんの顔を覗いた……
「ホンとねー、きっと私たちの話が面白かったのよ……」
夏子さんの昔と変わらない笑顔……
「隼矢、あんたやっぱり偉いよ……」
「褒めてくれているの……?」
「褒めてあげるわよ! あんた、お母さんの気持ち分かるのね……」
「……、もちろんだよ……」
「……、私なら絶対、カタリーナに連れてこないもの……」
夏子さん、……、死んでいるわけではないのだから、笑うことだってあるよね……
カタリーナに集うお客さんは、いつも幸せを求めてやってくる。
幸せの笑顔は、カタリーナへの感謝の気持ちなのかもしれない。
私は、その至福の時を、心を込めて提供している。
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