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26. 雨の日の二枚の裸婦
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(雨の日の二枚の裸婦)
「これで、完成にする……?」
ハナの部屋で、ルール通り、二人裸になって、記念に二人のお互いの裸婦を描くことになってから半年が過ぎようとしていた。
二人でモデルを交互にやっていたこともあって、ハナが入院したこともあって、なかなか製作が進まなかった。
それよりも、二人で抱き合ってしまう方が多かったのかもしれない。
でも、時間をかけただけ、いい絵になった。
題は『アトリエの中の裸婦』だ。
部屋のイーゼルが立ち並ぶ中で、ハナは嬉しそうに裸で立っている。
ハナの斜め後ろには、大きな立ち鏡があり、ハナの後ろ姿を映している。
しかし、この絵には仕掛けがあり、鏡に映っている後ろ姿は、私のヌードだ。
その違いは、髪型で分かる。この時、私はボムヘアーだった。
体つきも、陸上選手だった私は、肩幅も張っていて、体つきも筋肉質で、お尻も締まっている。
そして、鏡の中の私とハナが、前向きと後ろ向きで、寄り添い手を絡め合って繋いでいる様に見える。
その構図を、また、鏡に映したように左右反対にして、私のヌードと鏡に映ったハナの背中のヌードを描いた。
彼女の撫で肩と、肩まで広がった長い髪と、肌の白さと、お尻の大きさの違いで、立っている私でないことが分かる。
この二枚の絵を並べて見ていると、四人の体が交互に入り混じって、一体であるように見える。二人の愛の証なのだ。
女の子同士、何をやっても、頑張っても、赤ちゃんなんかできないのだから、せめて絵の中くらい、二人の愛を表したかったと、ハナは言う。
「いい作品になったね……、私、もうこれ以上、この作品を超える絵、描けないかもしれない……」
「何を言っているのよ……、大げさよー、ただのヌードでしょうー」
「……、そうねー、……」
「……、でも、一つ残念ねー、二人で、裸で抱き合っている絵が描けなくて……」
「……、そんな絵、要らないわー、私は、美しい絵を求めているのよ……、美しい、心と言ってもいいわ……」
「二人、裸で抱き合うことは美しくないの……?」
「美しいと言うより、官能、絶頂、お互いに気持ちの良い所を探り合う宝探し……、美しさを感じる暇ないじゃないの……」
「でも、美しくなかったら、抱きたいと思わないんじゃないの……?」
「それもそうね……、マリーローランサンは、よく二人の女の絵を描くわ……、でも、何も感じない。彼女の絵はすべて、何も感じない壁紙のような絵なのよ」
「私も知ってるわ……、その壁紙のような何も主張しない、何も感じさせないところが、彼女の絵の魅力じゃないの……? ほら、主張しすぎる絵って怖いじゃん……、絵の中に吸い込まれそうで……、特に中世の肖像画なんて、呪われそうよー」
「そうねー、絵でなくても、魂の入ったお人形なんか怖いわねー、動きそうで……、マリ―ローランサンは、それを嫌ったのかもしれないわねー」
「私たちの裸婦も、呪われそうな絵に近くない……? 生き生きしているわー」
「そう、だから、背景も写実的にしっかり描いたのよ。裸婦が強調されないように……、主題は裸婦じゃなく、二人が裸で過ごした、この部屋だから……」
「じゃー、人参や大根も床に転がしていた方がいいんじゃないの……?」
「それは駄目よ、この絵を見るたびに、興奮してきて、ウルウルしてしまうから……」
「そうよー、私なんかスーパーに買い物いって、大根と人参、見るたびにウルウルしちゃうもの……」
「いいわねー、それよりも、約束してくれない……?」
「何を……、……」
「……、もし、私たちが別れることになったら、この絵を私のところに持ってきて欲しいの……、私は二枚の絵を並べて、ここに飾って、いつまでも変わらない私たちの思い出の中で生きていきたいの……」
「そんなこと、あるわけないでしょう……、大根と人参の中よ……」
「……、でも、もし私がいなくなったら……、この絵をあなたの部屋に並べて飾っておい欲しいのよ……、私、一人では寂しいから……、私、いつもあなたの傍にいたいから……」
「もうー、そんな縁起でもないこと言わないでよ……」
「夏休みになったら、キャンプ行くんでしょうー」
「……、うー、楽しみ……、その前に、大根と人参……」
「これで、完成にする……?」
ハナの部屋で、ルール通り、二人裸になって、記念に二人のお互いの裸婦を描くことになってから半年が過ぎようとしていた。
二人でモデルを交互にやっていたこともあって、ハナが入院したこともあって、なかなか製作が進まなかった。
それよりも、二人で抱き合ってしまう方が多かったのかもしれない。
でも、時間をかけただけ、いい絵になった。
題は『アトリエの中の裸婦』だ。
部屋のイーゼルが立ち並ぶ中で、ハナは嬉しそうに裸で立っている。
ハナの斜め後ろには、大きな立ち鏡があり、ハナの後ろ姿を映している。
しかし、この絵には仕掛けがあり、鏡に映っている後ろ姿は、私のヌードだ。
その違いは、髪型で分かる。この時、私はボムヘアーだった。
体つきも、陸上選手だった私は、肩幅も張っていて、体つきも筋肉質で、お尻も締まっている。
そして、鏡の中の私とハナが、前向きと後ろ向きで、寄り添い手を絡め合って繋いでいる様に見える。
その構図を、また、鏡に映したように左右反対にして、私のヌードと鏡に映ったハナの背中のヌードを描いた。
彼女の撫で肩と、肩まで広がった長い髪と、肌の白さと、お尻の大きさの違いで、立っている私でないことが分かる。
この二枚の絵を並べて見ていると、四人の体が交互に入り混じって、一体であるように見える。二人の愛の証なのだ。
女の子同士、何をやっても、頑張っても、赤ちゃんなんかできないのだから、せめて絵の中くらい、二人の愛を表したかったと、ハナは言う。
「いい作品になったね……、私、もうこれ以上、この作品を超える絵、描けないかもしれない……」
「何を言っているのよ……、大げさよー、ただのヌードでしょうー」
「……、そうねー、……」
「……、でも、一つ残念ねー、二人で、裸で抱き合っている絵が描けなくて……」
「……、そんな絵、要らないわー、私は、美しい絵を求めているのよ……、美しい、心と言ってもいいわ……」
「二人、裸で抱き合うことは美しくないの……?」
「美しいと言うより、官能、絶頂、お互いに気持ちの良い所を探り合う宝探し……、美しさを感じる暇ないじゃないの……」
「でも、美しくなかったら、抱きたいと思わないんじゃないの……?」
「それもそうね……、マリーローランサンは、よく二人の女の絵を描くわ……、でも、何も感じない。彼女の絵はすべて、何も感じない壁紙のような絵なのよ」
「私も知ってるわ……、その壁紙のような何も主張しない、何も感じさせないところが、彼女の絵の魅力じゃないの……? ほら、主張しすぎる絵って怖いじゃん……、絵の中に吸い込まれそうで……、特に中世の肖像画なんて、呪われそうよー」
「そうねー、絵でなくても、魂の入ったお人形なんか怖いわねー、動きそうで……、マリ―ローランサンは、それを嫌ったのかもしれないわねー」
「私たちの裸婦も、呪われそうな絵に近くない……? 生き生きしているわー」
「そう、だから、背景も写実的にしっかり描いたのよ。裸婦が強調されないように……、主題は裸婦じゃなく、二人が裸で過ごした、この部屋だから……」
「じゃー、人参や大根も床に転がしていた方がいいんじゃないの……?」
「それは駄目よ、この絵を見るたびに、興奮してきて、ウルウルしてしまうから……」
「そうよー、私なんかスーパーに買い物いって、大根と人参、見るたびにウルウルしちゃうもの……」
「いいわねー、それよりも、約束してくれない……?」
「何を……、……」
「……、もし、私たちが別れることになったら、この絵を私のところに持ってきて欲しいの……、私は二枚の絵を並べて、ここに飾って、いつまでも変わらない私たちの思い出の中で生きていきたいの……」
「そんなこと、あるわけないでしょう……、大根と人参の中よ……」
「……、でも、もし私がいなくなったら……、この絵をあなたの部屋に並べて飾っておい欲しいのよ……、私、一人では寂しいから……、私、いつもあなたの傍にいたいから……」
「もうー、そんな縁起でもないこと言わないでよ……」
「夏休みになったら、キャンプ行くんでしょうー」
「……、うー、楽しみ……、その前に、大根と人参……」
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