雪ん子うさぎ

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36. 粉雪と演奏会とお母さんのおっぱい

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(粉雪と演奏会とお母さんのおっぱい)

「雪子、これ演奏会のチケット……」
 琴美と志穂が真理子と雪子の席までやって来た。
「全席指定だから、もうないわよ!」
 琴美が真理子の席の、その隣の椅子を持ってきて座った。
「凄い人気ねー」と言って真理子は、チケットを手に取って見て驚いた。
「これ、凄い! 隣町の文化ホールでやるの? あそこ千五百人くらい入れるんじゃないの?」
「そうよ! ちょっとしたものでしょうー、あの土佐先生が来るくらいだからねー」
 琴美は、嬉しそうに言う。
「楽曲は、ベートーヴェン、第七ね。これは定番……」
「わたしたちは、前座みたいなものだから、本命はこの町の交響楽団と指揮の土佐正司先生がメインよ。それが無料で見られるのだから、音楽好きなら行くでしょうー」
 志穂も、隣の席の椅子を持ってきて、雪子の横に座り、雪子の太股を抱いて頬擦りした。
「雪ちゃんの太股、暖かいー」
「そうなんだー、悪いわねー、私たちが三席も抑えちゃって……」
 そんな志穂には、お構いなしに雪子が言った。
「いいのよー、中高生の楽団まで見る人は少なっていうから、少しでも来てくれれば嬉しいわ!」
 あのダウンバーストの事故も、芸能界デビューの話も、話題にのぼらなくなった今日この頃、教室の中は一気に冬を迎えていた。
 しかし、まだ暖房は入っていなかった。 

「志穂! いい加減に離れなさいー」
 志穂が雪子に抱き着いているのを見て、琴美の激が飛ぶ。
「いいのよ、いいのよ、志穂、抱いてあげるから……」
「雪子、志穂を甘やかしては駄目よ! 癖になるから……」
 雪子は、志穂を仰向けにして、赤ちゃんに授乳するように抱きかかえた。
 志穂は、頬を胸に当てて、背中に手を回して、抱き着いた。
「でも、志穂、わたし、もうじきいなくなるわよ……」
「えー、 ……、わたし聴いてない!」と志穂は雪子の顔を見た。
「……、どこに行くの? 引っ越すの……?」
 琴美も心配そうに雪子を見た。
「……、そんなようなものかなー」
 雪子も、抱いている志穂の頭に頬で撫でながら呟いた。
 志穂は、雪子の胸に顔を埋めて……
「嫌だ、嫌だ、嫌だ、わたしも引っ越す!」 
「そんなことできるわけないでしょう!」
「まだ、いるから大丈夫よ!」
 雪子は、志穂の頭を撫でながら言った。
「いつ、引っ越すの?」
「雪が降るころ……」
「じゃー、演奏会には来られるわね……」
 琴美は、雪子と志穂を見ながら、寂しそうに呟いた。
「わたしは、嫌だ!」
 志穂は、まだ納得がいかないようで、雪子の制服の中に手を入れて、まくり上げて、おっぱいを出そうとした。
 それを見た琴美が、後ろから抱きかかえて雪子から引き離した。
「もー、何やっているのよー、男子が見ているでしょうー」
「あたしの、おっぱいー」と志穂。
「あんた、そんなにおっぱいが吸いたかったら、自分のお母さんのおっぱい吸えばいいじゃないのよー」
 琴美は、無理やり雪子の隣の椅子に座らせた。
「わたしのお母さんのおっぱい小さいもん! 雪子のがいいー、……」
 志穂は、そう言って、また雪子の太股を抱いて、頬擦りした。
「あらまー、じゃー琴美のおっぱいにすればー?」と雪子。
「琴美のだって、小さいもんー」
「小さいって言ったなー」と琴美は怒って見せた。
「じゃー、真理子のにしなさいよー」と雪子。
「真理子のだって小さいわよー」
「小さいって言ったなー」と、真理子も怒って見せた。
「それなら、うちに来るー、あたしのお母さんのおっぱいは大きいわよー、あたしなんか、今でもしゃぶっているものー」
 真理子の意外な信じられない発言に琴美と志穂は注目した……
「真理子、今でもおっぱい飲んでいるの?」と琴美。
「バカねー、お乳が出るわけないじゃん! お母さん離婚しちゃっているから、欲求不満にならないように、あたしが、おっぱい揉んで吸ってあげているのよ!」
「わたしも、おっぱい吸いに行ってもいい?」と志穂が嬉しそうに言う。
「もちろんよー、きっと気持ちいいって、お母さん、喜ぶからー」
「嬉しいー、わたし今日、放課後、行く……」と志穂……
「なにいってるのよ! 今日も明日も、オケの練習あるのよー」と琴美。
「それなら、演奏会終わったら、わたしの家でお泊り会しない?」
 雪子が、勇んで提案した。
「やろー、やろー、みんな浴衣を持ってくるのよー」
 真理子は嬉しそうに、はしゃぎながら言った。
「真理子、あんたパジャマでなくて、浴衣で寝ているのー?」
「そうよー、中、すっぽんぽんでねー、気持ちいいんだからー」と真理子。
「わたしも、裸で寝たいー」と志穂。
「裸じゃなくて、浴衣着ているからー」と真理子。
「でも、お楽しみは、演奏会が終わってからねー」と雪子は膝の上で寝ている志穂の頭を撫でた。

 教室から見える山々は白く、冬はそこまで来ていた。

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