俺「重課金疲れた……」ギルメン「俺さんすごい! 次のイベントもお願いします!」

道楽時計

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第十二話 選択

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俺「また時計塔かよ……ここ、敵強くて経験値低い上に、俺も全然潜ってないんだぞ」 

女「だからっすよ!」 

俺「は?」 

女「俺さんもまだ全然潜ってないから……新鮮で、楽しいんっす! ほらほら、先行くっすよ!」 

俺「おいおい、モンスターも無視してどうするんだって!」 

女「誰も見たことのないところまで、俺さんと行きたいんっす!」 

俺「最上階も運営のおっさんは吐くほど見てると思うぞ」 

女「むぅ……なんでそう、水を差すこと言うんっすかね」 


◆◆


女「あのお化け……全然出ないっすね」 

俺「そりゃレアモンスターだしな」 

女「……むぅ」 

俺「ひょっとして、また都合よくあの布が手に入らないかって思ってたのか?」 

女「…………」 

俺「そう簡単に手に入ったら、市場があの布で溢れかえってるぞ」 

女「そりゃそうっすけど……あ! 外! 外みたいっすよ! ここが最上階……」 

俺「中間地点だよ。反対回ったところに扉あるから、そこからまた階段を登るんだ」 

女「景色! 景色を見てください! めっちゃ綺麗っすよ!」 

俺「いや、俺、前も一回来たし……」 

女「もっと! もっと上に行きましょう!」 

俺「この先敵の攻撃力上がるから、下手したら即死だぞ……。ちょっと休んでから行こうぜ」 


俺(女は……リアルを捨てたと言った。そしてそれを、俺にも強要するようなことも口にしていた) 
俺(でも女は、こっちの世界でだって周囲からはコネで入ったクレクレちゃん扱いだ) 
俺(バイトもかなり入れてるから、イン率だって他の人に比べて低い……。レベルキャップが解放される度に置いていかれ、装備やイベント情報にも疎い。純白の布を知ってたことが驚きだったくらいだ) 

俺(だったら、こいつの言う世界ってなんなんだ?) 

俺「すまないな……女、お前に謝らなくちゃいけないことが、いっぱいあるな……俺」 
俺「俺……すげぇ情けないな」 

女「そんな、気にしなくていいんっすよ俺さん!」 
女「ウチは俺さんが傍にいてくれたら、それだけで満足っすから!」 

俺「…………」 

女「でも……気にしてくれているのなら、我が儘……言ってもいいっすか?」 

俺「なんだ? なんでも言ってくれ」 

女「…………」
女「……女騎士と離婚して、一緒にこのギルドをやめてほしいんっす」 

俺「それ、は……」 

GM『でも、重課金は麻薬だぜ? 現実に思い入れのないお前は、またいつか、同じことを繰り返す』 
GM『人に囲まれたい……ちやほやされたい……機嫌を窺われたい……。いずれ気付くさ、もう俺にはこれしかないんだって、な』 

俺(あのときは否定したのに……結局、俺はあんたの言う通りなんだな……) 

俺「それは、できない……。これ以上男のような敵を作りたくないし、なにより……もう、皆を裏切りたくない」 

女「じゃあ、じゃあ……女騎士と離婚してくれるだけでもいいんっす!」 
女「あんな奴! 俺さんが課金してから、掌返したクズじゃないっすか! 俺さんも、むかつかないんっすか!」 

俺「…………」 

女「どうして……黙ってるんっすか?」 
女「なんでもいってくれって言ったのに、何も聞いてくれないんっすね……」 

俺「…………」 

女「嫌なんっすよ! 俺さんは、ウチしか信じないって言ってくれたはずなのに!」 
女「あいつが……女騎士が、デレデレと顔を赤くして横に突っ立ってるのが、嫌なんっす!」 

女「結婚してるっていうのが! 二人だけのスキルがあるっていうのが! それがずっとステータスに表示されてるのが! 嫌で嫌で仕方ないんっす!」ガシガシ 

俺「お、おい! 落ち着けよ!」 

女「落ち着けるわけっ! ないじゃないっすか!」 
女「離婚してくれないなら……全部、全部ばらします!」 

俺「な、何を言ってるんだよおい!」 

女「ウチが、ウチが課金分振り込んでたってばらします!」 
女「知ってるんっすよ! 俺さんが、前回分の金額、誤魔化してウチに伝えてたの!」 

俺「な!」 

女「気付かない振りしてあげてたのに……ぞれなのに……こんな仕打ち、あんまりっす……」ガシガシ 

俺「や、やめろって! それにほら、お前が言ったって誰も信じないかもしれないぞ? いや、白切るってつもりじゃないけど……そうなるかもしれないって……」 

女「……通帳の履歴見たら、きっと皆、信じてくれるはずっす」 

俺「…………」 

女「えへ、えへへへ……どうするっすか? 女騎士と、別れてくれますよね? ね?」 
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