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#06・最終話
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「妃水も、みんなも私が助ける。」
抱きしめる腕に思わず力が入る。詩織は何度も頷き、美紅の腕の中でポロポロと泣く。動くことの出来ない詩織はここで、リタイアだろう。
サイコロを握りしめ、力強く振る。私は残り、3。出てくれ。強く、願う。
「2...!?」
1と...1。あと1つだったのに。次のターン、私は確実に駒にされてしまう。それまでに誰か、ゴールしてくれれば...。1人でも、ゴールしてくれれば。
「美紅!!」
愕然とする、美紅の耳に、聞き慣れた、安心する好きな人の声がする。「翔...?」思わず、泣き出しそうになっていた美紅は顔を上げる。目の前にはいつの間にかうさぎを倒し、力強く頷く、翔歌がいた。どうして...?
そうか、『1』だ。犬の呪いが解けたんだ。よかった...。泣いてる場合じゃない!みんなを助けるんだから。
『燃えちゃうよ、燃えちゃうよ。どちらが先に、燃えちゃうの?』
駒が震える声で、言う。燃えちゃう...ってなんだろう。
ごおぉぉおお...と地響きが鳴る。外は雪が降っている、正月というのに焼けるように熱い。目の前がチカチカと眩しくなった。
火の鳥だ。不死鳥の伝説がある、死ぬ事の無い大きな鳥。妃水のいない今、私たちが火の鳥を倒すのは不可能だろう。なんでもやることが出来るであろう、魔女を選んだ詩織はリタイアしてしまった。
夢中に、剣を振るう。何度もタンスに刺さり、床にもいくつも傷がついてしまったが、もう構うもんか。とにかく、倒さなきゃ。でも、死んじゃう前にゴールしてこの双六を終わらせなきゃ...。死んだ人間は、戻れない。
「翔!!早く!次を振って!!」
美紅が剣を打ち付け、翔歌に向かってサイコロを飛ばす。カンッと飛ばされたサイコロを翔歌は掴み、すぐに振る。翔歌の残りのマス目は10だ。
出た目は...6と......4?2つ目のサイコロがまだ定まらない。ユラユラと揺れて他の目を出そうとしている。
これで変わられたら困る。私の好きな人を駒になんかさせるもんか!!
剣で不死鳥の足や嘴の攻撃を防ぎながら、もう片方の手で鞘を持ち、まだ定まらずに揺れているサイコロに当てる。サイコロはフワッと浮き上がり、また、コロコロと転がった。
4で止まってくれ!
転がるサイコロに気を取られ、少し目を離した隙に、火の鳥はその羽を大きくはためかせた。夏でも味わうことの無いような熱風を直に受け、床に叩きつけられる。
サイコロはコロコロ転がり、そのまま部屋の隅へ。目を確認することは出来ない。
サイコロが止まり、翔歌の駒が動く。美紅は熱風に目を開けることも出来ない。翔歌は詩織の手を握っている。
トントントンッッ……と、誰も喋らない静かな部屋を翔歌の駒の進む音が響く。ドキドキと心臓の音がやけにうるさい。熱く、燃やされる感覚、死ぬかもしれない恐怖で体は凍りつき、血の気が引いているのに、ドキドキと興奮で体がぐちゃぐちゃだ。
『パンパカパーンッ!!おめでとうっ。そしてありがとう……。』
翔歌の駒が、一際大きな声で叫び、感謝をつぶやく。ポンッとコルクの抜けるような音と共に、翔歌の駒は人間の姿になる。それだけじゃない。ポンポンポンッと連続でコルクが抜けるような音が立て続けに響く。箱に残っていた、使われていない駒、双六の盤の途中で止まっていた詩織と美紅の駒、そして床に転がったままだった妃水。倒れた妃水の駒、次々に人の形に戻っていく。どんどん出てくる煙がまるでドライアイスのようだ。
火の鳥はいつの間にか消えていた。熱風も止み、まだ体は動かせないものの、目を開け、状況を見ることが出来る喜びを感じる。間に合った...。みんな元通りになった。
「美紅……。ありがとな。俺のために。」
動けない美紅の体を起こしながら、翔歌は優しく、呟いた。
「私は何も……」
呟き、思わず目をそらす。
その瞬間、ズンッと翔歌の重さを感じたような気がした。顔を戻すと、翔歌の後ろに伸し掛る妃水と目が合う。ニッと気さくに笑う妃水は、わざと翔歌にグリグリと頭を押し付ける。
「翔歌~!!」
「だぁかぁら、翔歌って呼ぶなぁぁ!!!」
妃水の嬉しそうな声に、翔歌の声が響き渡る。いつの間にか参加者みんなの服は元に戻っていた。あるのはボロボロになってしまったいつも通りの正月の部屋。
駒から戻った、親戚の人たちが溢れる部屋。正直、会ったこともないような人もいる。結局親戚は全員で何人いるんだろうか。とにかく、みんな元に戻ってきた。それだけはわかる。
呪いの双六の駒は何もしゃべらないただの駒が4つ。明らかに玩具だとわかる、ゴム製だ。
正月の日、あなたは何をしてますか?
楽しい事、辛い事……。泣きたくなることもあるかもしれない。でも、乗り越えたらきっといいことがあるから、挫けても引き上げてくれる人がきっといるから、少しだけ、諦めずに前を向いてみませんか?
普段は話すことがない人と話してみたり、やったことの無いことにチャレンジするのもいいかもね。
―END―
抱きしめる腕に思わず力が入る。詩織は何度も頷き、美紅の腕の中でポロポロと泣く。動くことの出来ない詩織はここで、リタイアだろう。
サイコロを握りしめ、力強く振る。私は残り、3。出てくれ。強く、願う。
「2...!?」
1と...1。あと1つだったのに。次のターン、私は確実に駒にされてしまう。それまでに誰か、ゴールしてくれれば...。1人でも、ゴールしてくれれば。
「美紅!!」
愕然とする、美紅の耳に、聞き慣れた、安心する好きな人の声がする。「翔...?」思わず、泣き出しそうになっていた美紅は顔を上げる。目の前にはいつの間にかうさぎを倒し、力強く頷く、翔歌がいた。どうして...?
そうか、『1』だ。犬の呪いが解けたんだ。よかった...。泣いてる場合じゃない!みんなを助けるんだから。
『燃えちゃうよ、燃えちゃうよ。どちらが先に、燃えちゃうの?』
駒が震える声で、言う。燃えちゃう...ってなんだろう。
ごおぉぉおお...と地響きが鳴る。外は雪が降っている、正月というのに焼けるように熱い。目の前がチカチカと眩しくなった。
火の鳥だ。不死鳥の伝説がある、死ぬ事の無い大きな鳥。妃水のいない今、私たちが火の鳥を倒すのは不可能だろう。なんでもやることが出来るであろう、魔女を選んだ詩織はリタイアしてしまった。
夢中に、剣を振るう。何度もタンスに刺さり、床にもいくつも傷がついてしまったが、もう構うもんか。とにかく、倒さなきゃ。でも、死んじゃう前にゴールしてこの双六を終わらせなきゃ...。死んだ人間は、戻れない。
「翔!!早く!次を振って!!」
美紅が剣を打ち付け、翔歌に向かってサイコロを飛ばす。カンッと飛ばされたサイコロを翔歌は掴み、すぐに振る。翔歌の残りのマス目は10だ。
出た目は...6と......4?2つ目のサイコロがまだ定まらない。ユラユラと揺れて他の目を出そうとしている。
これで変わられたら困る。私の好きな人を駒になんかさせるもんか!!
剣で不死鳥の足や嘴の攻撃を防ぎながら、もう片方の手で鞘を持ち、まだ定まらずに揺れているサイコロに当てる。サイコロはフワッと浮き上がり、また、コロコロと転がった。
4で止まってくれ!
転がるサイコロに気を取られ、少し目を離した隙に、火の鳥はその羽を大きくはためかせた。夏でも味わうことの無いような熱風を直に受け、床に叩きつけられる。
サイコロはコロコロ転がり、そのまま部屋の隅へ。目を確認することは出来ない。
サイコロが止まり、翔歌の駒が動く。美紅は熱風に目を開けることも出来ない。翔歌は詩織の手を握っている。
トントントンッッ……と、誰も喋らない静かな部屋を翔歌の駒の進む音が響く。ドキドキと心臓の音がやけにうるさい。熱く、燃やされる感覚、死ぬかもしれない恐怖で体は凍りつき、血の気が引いているのに、ドキドキと興奮で体がぐちゃぐちゃだ。
『パンパカパーンッ!!おめでとうっ。そしてありがとう……。』
翔歌の駒が、一際大きな声で叫び、感謝をつぶやく。ポンッとコルクの抜けるような音と共に、翔歌の駒は人間の姿になる。それだけじゃない。ポンポンポンッと連続でコルクが抜けるような音が立て続けに響く。箱に残っていた、使われていない駒、双六の盤の途中で止まっていた詩織と美紅の駒、そして床に転がったままだった妃水。倒れた妃水の駒、次々に人の形に戻っていく。どんどん出てくる煙がまるでドライアイスのようだ。
火の鳥はいつの間にか消えていた。熱風も止み、まだ体は動かせないものの、目を開け、状況を見ることが出来る喜びを感じる。間に合った...。みんな元通りになった。
「美紅……。ありがとな。俺のために。」
動けない美紅の体を起こしながら、翔歌は優しく、呟いた。
「私は何も……」
呟き、思わず目をそらす。
その瞬間、ズンッと翔歌の重さを感じたような気がした。顔を戻すと、翔歌の後ろに伸し掛る妃水と目が合う。ニッと気さくに笑う妃水は、わざと翔歌にグリグリと頭を押し付ける。
「翔歌~!!」
「だぁかぁら、翔歌って呼ぶなぁぁ!!!」
妃水の嬉しそうな声に、翔歌の声が響き渡る。いつの間にか参加者みんなの服は元に戻っていた。あるのはボロボロになってしまったいつも通りの正月の部屋。
駒から戻った、親戚の人たちが溢れる部屋。正直、会ったこともないような人もいる。結局親戚は全員で何人いるんだろうか。とにかく、みんな元に戻ってきた。それだけはわかる。
呪いの双六の駒は何もしゃべらないただの駒が4つ。明らかに玩具だとわかる、ゴム製だ。
正月の日、あなたは何をしてますか?
楽しい事、辛い事……。泣きたくなることもあるかもしれない。でも、乗り越えたらきっといいことがあるから、挫けても引き上げてくれる人がきっといるから、少しだけ、諦めずに前を向いてみませんか?
普段は話すことがない人と話してみたり、やったことの無いことにチャレンジするのもいいかもね。
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