暗闇の灯

兎都ひなた

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#04

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バッサリと髪を切られてしまった。ショックよりも驚きと絶望で固まってしまう。
固まる瀬津を他所に、ジャキジャキとはさみの音は止まらず、気付いた頃にはスカートにはさみの刃が当たっていた。
「止めて……ください。」
声を振り絞った頃にはもう手遅れだった。腕を拘束され、足を踏みつけられ、羽交い締めにされながら制服がどんどん切り刻まれていく。瀬津の白い肌が覗く。
切られた制服はトイレの隅で火をつけられ、あっという間に燃えた。もう元に戻ることは無い。
「今度同じように逃げたら何度でもやってやるから。…覚えときなよ。やめてほしければ、竜木 咲夜に近づくな。いつも通り過ごしたければ私らの言うことだけ聞いてればいいんだよ。」
「じゃなきゃまたあんたひとりぼっちだよ。」
ひとりぼっち...一緒に居たところで満たされたことなんてなかった。もう死んじゃおうかな、なんて毎日思ってる。
竜木くんに近付くなと言われても...そもそも私からコンタクトをとって助けてもらったわけじゃない。助けたことに感謝はしているが、それで近付くなと言われても...私はどうしたらいいのか。
何も解決策が浮かばず、黙り込んでしまう。何度考えてみようとしても、分からないものは分からない。
「あーもう。お前ホントつまんねぇ!!」
「お前は何考えてんのか分かんねぇんだよ。ほんと道具でしかないんだな。」
「消えちゃえばいいのに!!」
目の前が遮られたかと思うと、大量の水を頭から被ってしまった。バケツで水をかけられたらしいことが、開けた視界ではっきりとわかる。
羽交い締めにされていた状態で、うつ伏せに倒れていた瀬津は、濡れた床をただ虚構のように見つめた。床に投げ捨てられているホースから水は溢れ、水たまりを作る。燃やされた瀬津の制服の切れ端は、水を被り、ただの燃えカスとなった。
予鈴が鳴り、バタバタと5人は女子トイレから出ていった。勢いよく閉められた扉の向こう側から、予鈴に慌てる生徒の足音が聞こえる。瀬津はただ、その音を別次元にいるかのような感覚で聞いていた。
どのくらい時間が経ったのだろうか。足音は消え、外からは体育の授業の声。学校内では途切れ途切れに、ポツリ...微かに聞こえる何を言っているのか分からない授業の声。
瀬津は立ち上がり、ホースの繋がった水道の水を止めた。
このままサボろう。どうせこの姿ではみんなの前に出ることは出来ない。そのまま帰ることも出来ない。放課後まで待って、ロッカーに置いてあるジャージにでも着替えよう。
トイレでただ1人、ボロボロになった制服をなるべく見ないように、瀬津は時間を潰した。どうせこのトイレは掃除が入ることもなければ、そのうち取り壊される噂のある場所だ。誰も人がいることにら気付かないだろう。
放課後になり、ガヤガヤと廊下が騒がしくなる。部活に向かう者、帰っていく者。彼女たち5人から連絡はない。
しばらくして、廊下が静かになったのを見計らい、女子トイレの扉の隙間から外を覗く。誰もいないことを確認して、廊下へ出た。...が、1歩踏み出してすぐに人がいることに気付き、勢いよく中へ戻る。心臓がバクバクと音を鳴らす。
扉のノブをしっかりと握り、開かないように気をつける。手は小刻みに震えていた。
「やっぱりここに居たか…神無月。」
出てすぐに見えた人物の声がする。影でしか認識しなかったその人物の、声を聞き、瀬津はハッと顔を上げた。
「......竜木くん?なんで残ってるの。学校…終ったよね?人もいないよね……?どうして...」
咲夜の声にホッとした自分がいることに驚く。でも、やはりなんの利益も無いような自分に、構われることに納得がいっていない。虐めの対象者に関わるなんて、今度は自分が虐められるかもしれないのに。みんなそれが嫌で避けてるのに。
「だって気になるじゃん。授業も出てないし。荷物は置きっぱなしだし。みんな帰ったのに、神無月は帰ってこないし。大丈夫だよ、今はこの階、俺しかいない。午後の授業のあと、ここ来るの見てたから…。最後の授業が終わってからここで待ってた。もし、ここじゃなかったらどうしようかと思ってたけど。居てよかった。」
確信がなかったのに、待っていてくれたの?何があったか聞かないの...?なんで咲夜はこんなに優しくしてくれるのだろう。なんでこの人はそんなに人のためになれるんだろう。
何をされても耐えていた、瀬津の目から、止めどなく涙がこぼれる。我慢することが出来ない。
「なぁ、出て来いよ。俺は何もしない。お前につらいようなことは何もしない。お前を守ってやる。…だから、出て来い。」
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