暗闇の灯

兎都ひなた

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#23

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まぁ一緒には住んでるんだけど…。これは学校にも、近所の人にも知られると面倒くさいから、となるべく話さないようにしている。
くるみは高校生モデルをしている。テレビに出ることは無いが、雑誌には載っているのを本屋さんで見た事があった。イメージ通り、モデルをしている時もキャラは今と同じように元気いっぱいで、可愛い。でも、モデルやってる時のくるみは、1つ年上のはずなのに、何故だか少しだけ子供っぽく見える。それが可愛いと評価をされているが、本人はキャラを変えていきたいと、悩んでいた。
この喫茶店のお客さんたちはほとんどがくるみ目的のファン層だ。
「そうなんだ。…ごめんね、引き止めちゃって。またシフト被ったらよろしくね!バイバイッ。」
「うん。バイバイ。」
そう言うと、手を振り、また裏口のドアへと向かう。その後ろでニタァ...とくるみが不気味な笑みを浮かべているのには気が付かない。
急いで咲夜のいる、喫茶店前に向かうべく、薄暗い小道を小走りに通り抜けた。
「ごめん,待たせちゃった?来てくれるのは嬉しいけど...寒いし、コンビニとかでよかったのに...。」
「嫌だ。ちゃんと、瀬津が出てきてすぐに会えるところに居たい。ちゃんと迎えに来たいし、疲れてる時は1番に抱き締めたいから。それに守るって決めて決めたし。何より俺がお前と居たいから。」
咲夜がいい終わったあと、自分で恥ずかしくなったのか、どんどんと顔が赤くなる。後ろを通っていく車のライトに逆光で照らされるが、耳まで赤くなってしまい、瀬津にもバレバレだ。一方、瀬津は咲夜の言葉を聞いて固まっている。
こんなこと言われたの初めてだった。『お前と居たい』だなんて。今までは嫌がられる側だったから。嬉しくて、どうしようもなくムズムズする。
「ありがとう。嬉しい。...ねぇ、だったらさ、せっかくだしゆっくり時間かけて帰ろうよ。咲夜のこと、もっと知りたい。」
「えっ…あっ、うん!」
咲夜の満面の笑みに癒される。嬉しそうな顔を見れて、心が踊る。後ろの喫茶店から覗く人物の存在など、気にも止まらない。
「何よ。やっぱり瀬津の迎えじゃん。」
喫茶店のカーテンの影から、くるみが2人を覗き、悔しそうに呟く。こんな夜中に男女が2人、仲良く笑顔で帰っていくことに、違和感を覚えた。とてもじゃないけど、付き合っていないとは思えない。
瀬津は付き合ってないなんて言ったけど。じゃあその距離感は何?あんなイケメンと…。ムカつく……。私だってモデルなのにっ!! 雑誌にも出てるし、人気だってそこそこあるのに!子供っぽいからって…ガキっぽいからって…。学校では誰も声をかけてくれない。誰かの恋愛話にも「くるみには早いよ。」と言って、入らせてもらえない。私だってちゃんとした高校生だよ!? しかも、瀬津より年上だよ?
可愛いものが好き。みんなが楽しんでくれるのが好き。でも、少しくらい、恋だってしたいのに。いつも仲間外れ。「モデル大変でしょ。」と言っては、合コンも遊びも仲間外れ。私だって...私だって......遊びたいし、好きな人と付き合いたい。瀬津ばっかりずるい…。こうなったら、奪ってやる…。
気付けば瀬津と咲夜のことを睨みつけるように、立ち去るのを見ていた。こんなのただの八つ当たりだ。そんな事はわかっている。でも、1度火のついた心は止めることが出来なかった。
「ねぇ、咲夜。大丈夫?」
「…何が?」
咲夜に掴まって自転車に乗り、後ろから声をかける瀬津。咲夜は少しの間を置いて返事をした。何処か気が抜け、心ここに在らずといった感じだ。ふと、無理をさせすぎているのではと、心配になる。
「眠いんじゃないの?私,待ってた時あくびばっかりしてたでしょ。無理してまで私なんかに構わなくてもいいんだよ?」

その言葉に顔を瀬津の方へ向ける咲夜。
「大丈夫だって。心配すんなよ。俺だって心配して欲しくてやってんじゃない。瀬津のことが心配で…好きだからやってんだから。」
「ありがとう。今、私本当に幸せ。これが幸せなんだね…。……っ咲夜!! 前!! 前見てっ!!」
大きなクラクションの音が響き渡り、目の前に大型トラックが迫ってくる。速度が落ちる気配はない。
「えっ……」
咲夜がトラックに気が付き、向かってきたトラックの方を向いた。トラックの眩しいライトに照らされた咲夜の顔が脳裏に焼き付く。
ドン!と強烈な衝撃を身体中で受けた。自転車はものすごい音をたてて、吹き飛んだ。酷い打撲に痛む身体に鞭を打つように、体を起こす。
あれ?私…生きてる?......咲夜は…!?
身体中は痛いが特にどこか折れているわけではなかった。動けることに安心し、驚きで止まってしまった思考を懸命に働かせる。自転車の前に乗っていた咲夜の姿が、目の前にないことに気付くのに、少し時間がかかってしまった。
「……っっ!!」
少し先の方で、咲夜の姿を見つけて絶句する。そこには血だらけになって横たわっている咲夜の姿があった。
動いて…ない。私を庇ったの...?だから私は平気なの?また私のせいだ。また…人を傷つけた。大切で…大事な人を傷つけてしまった…。どうしよう…。連絡…。病院に連絡……。どうしよう…どうしよう…。
頭がぐちゃぐちゃだった。上手く思考が繋がらない。ここから近い病院ってどこなんだろう...。ぶつかって来たトラックは、走り去ってしまっていた。
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