お前の不敬には愛想が尽きた!と婚約破棄されましたが、これ幸い!

ちゃっぴー

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煌びやかなシャンデリアが、広間を昼間のように照らし出している。

王城で開催された婚約披露パーティー。その最高潮とも言えるタイミングで、私の婚約者は声を張り上げた。

「ノノカ・フォン・アスタール! 貴様との婚約を、今この瞬間をもって破棄することを宣言する!」

第一王子エドワード様の指が、真っ直ぐに私を指している。

その隣には、守ってあげたくなるような儚げな表情をした男爵令嬢、マリア様が寄り添っていた。

私は手に持っていた扇をゆっくりと閉じ、優雅に一礼する。

「……左様でございますか」

「なんだその反応は! もっと驚き、嘆き、許しを乞うたらどうだ!」

「いえ、驚いてはおりますわよ。ただ、エドワード様のそのポーズが少々……その、劇的すぎて、反応に困ってしまっただけで」

エドワード様は、まるで悲劇のヒーローを演じているかのように片手を胸に当て、もう片方の手を私に突き出している。

客観的に見て、かなり「痛い」構図だ。

「ふん、強がりを! 貴様がマリアに対して行ってきた数々の悪逆非道な振る舞い、すべて把握しているのだぞ!」

「悪逆非道、ですか。例えば?」

「階段から突き落とそうとしただろう! 教科書を破り、私との仲を裂こうと画策した! その醜い嫉妬心には愛想が尽きたのだ!」

私は隣に控えるマリア様をじっと見つめた。

彼女はビクッとして、エドワード様の腕にしがみつく。

「エドワード様、怖いです……っ。ノノカ様が、またそんな怖い顔で私を……」

「大丈夫だマリア。これからは僕が君を守る。この悪役令嬢になど、指一本触れさせない!」

……悪役令嬢。

なるほど、世間では私のことをそう呼ぶらしい。

確かに私は、彼に対して「そのネクタイの色は顔色を悪く見せますわよ」とか「その演説の内容は三行で済みますわね」とか、事実を淡々と述べていただけなのだが。

「エドワード様。お言葉ですが、先ほどからのご説明、少々長すぎますわ」

「何だと……っ?」

「階段の件は、彼女が自分の足をもつれさせて転びそうになったのを、私が支えようとしただけです。教科書の件は、そもそも彼女が私の机に置き忘れたものを、私が親切に整理して差し上げただけ。破れていたのは元々ではありませんか?」

「黙れ! 言い訳など聞きたくない!」

「いいえ、聞いてください。そして何より……」

私は一歩、彼らに近づいた。

周囲の貴族たちが息を呑む。

「エドワード様。今、この場には大勢の観衆がいます。そこでそのように顔を真っ赤にして怒鳴り散らすのは、あまり美しくありませんわよ」

「なっ……!」

「怒りで顔が歪むと、せっかくの整ったお顔が台無しです。マリア様も、そんな『般若』のようなお顔の殿下を支えるのは大変でしょう?」

「は、はんにゃ……!?」

マリア様が目を丸くする。

私はわざとらしく溜息をつき、扇で口元を隠した。

「婚約破棄の件、承知いたしました。ですが、公爵家としてもこの辱めをただで受け入れるわけには参りません。正式な手続きと、相応の慰謝料を請求させていただきますわね」

「い、慰謝料だと!? 悪いのは貴様なのだぞ!」

「証拠もなしに公衆の面前で令嬢の名誉を傷つけたのは、殿下の方ですわ。それに……」

私はエドワード様の顔を、まじまじと観察した。

「……正直に申し上げますと。最近、殿下の顔立ちに飽きてきていたところなんですの。もう少し、こう、彫りが深くてミステリアスな、国宝級の美形を拝みたいと思っていた矢先でしたから」

「あ、飽きた……!? この僕の美貌に、飽きたというのか!」

「はい。三行にまとめますわね」

私は指を一本ずつ立てて、突き放すように言った。

「一つ、婚約破棄は喜んでお受けします」

「二つ、慰謝料はたっぷり請求します」

「三つ、私はもっと顔の良い男を探しに行きます。……以上ですわ。すっきりしました?」

静まり返る会場。

エドワード様は、金魚のように口をパクパクさせて固まっている。

「それでは皆様、ごきげんよう。これ以上、美しくないものを見続けるのは、目に毒ですので失礼いたしますわ」

私は完璧なカーテシーを披露し、ドレスの裾を翻した。

背後でエドワード様が「追え! 不敬だぞ!」と叫んでいるのが聞こえたが、無視だ。

会場の外に出ると、夜風が心地よく頬を撫でた。

「ふう……。やっと、あの『自称・王子様』から解放されたわ」

私は夜空を見上げて、大きく伸びをした。

「さて。まずは父様に報告して、それから……。次はどんなイケメンを探そうかしら」

私の頭の中は、すでに「新生活」と「次のターゲットの顔面偏差値」のことでいっぱいだった。

この時の私は、まだ知らない。

城門の影で、一部始終を見ていた「とんでもない美形」と、数日後に再会することになるなんて。
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