お前の不敬には愛想が尽きた!と婚約破棄されましたが、これ幸い!

ちゃっぴー

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園遊会の騒動から数日。王宮内ではエドワード殿下の余罪が次々と発覚し、もはや「次期国王」の座は風前の灯火となっていた。

私はセシル様の屋敷のテラスで、彼が差し出してくれた特製ハーブティーを優雅に楽しんでいる。

「……ノノカ。マリアという娘から、貴様に面会の申し込みが来ている。どうする?」

セシル様が、不快感を隠そうともせずに一枚の安っぽい香水の匂いがする手紙を指先でつまんだ。

「あら、絶体絶命のマリア様が私に? 三行で予想しますわね」

「……聞こう」

「一つ、泣き落として私の情けを誘おうとしている」

「二つ、逆恨みで私を道連れにしようと考えている」

「三つ、単に私の美しい顔を見て、自分の敗北を再確認したい。……さて、どれかしら?」

「三つ目は貴様の自惚れな気がするが。……会うのか?」

「もちろんですわ。美しくないものが、最後にあがいて醜く散る様を観察するのも、美学の勉強になりますもの」

一時間後。屋敷の応接室に現れたマリア様は、数日前までの華やかさが嘘のようにやつれていた。

ドレスはシワだらけ、自慢の桃色の髪もパサついている。何より、化粧が涙で崩れていて見るに堪えない。

「……ノノカ様。お、お願いです……殿下を、エドワード様を助けてあげてくださいっ!」

彼女は部屋に入るなり、私の足元に縋り付いて泣き始めた。

私はそんな彼女を冷ややかに見下ろし、紅茶のカップをソーサーに戻す。

「マリア様。三行で忠告しますわね」

「……えっ?」

「一つ、その泣き顔は、あなたの顔立ちをさらに平坦に見せていますわよ」

「二つ、安物のマスカラを使っているせいか、目の周りがパンダのようになっていますわ」

「三つ、私に縋る暇があるなら、今すぐ洗顔して反省文の一枚でも書くことですわね。……美しくありませんわ」

マリア様は震えながら顔を上げ、私を睨みつけた。

「……ひどい。どうしてそんなに冷たいの!? あなたは公爵令嬢としてすべてを持っているのに、どうして私のような弱い者の幸せを奪うのよ!」

「弱い者の幸せ? 笑わせないで。あなたが奪おうとしたのは、私の婚約者ではなく『公爵家の財産と地位』でしょう?」

私は扇をパチンと閉じ、彼女の鼻先に突きつけた。

「私が冷たいのではありません。あなたが『自分を美しく見せるための努力』を、他人を蹴落とす方向に使ったのが間違いなのですわ」

「……努力? 私がどれだけ、殿下に好かれるために頑張ったか、あなたに分かるはずがないわ!」

「えぇ、分かりたくもありませんわ。殿下という『センスのない男』に合わせるために、自分の知性や気品を削ぎ落とすなんて、美容における最大のタブーですもの」

私は部屋の隅で無言の圧力を放っているセシル様を指差した。

「見てくださいな、私の隣にいるこの至宝を。彼は、私がどんなに毒を吐いても、それを受け止め、自らを高める努力を怠りません。それが真の美男子というものですわ」

セシル様が「……私はそこまで言った覚えはないが」と小声で呟いたが、無視だ。

「マリア様。あなたは殿下と一緒に、どん底まで落ちるといいわ。そこでようやく、本当の『鏡』を見る勇気が出るかもしれませんから」

「……う、うわあああああんっ!」

マリア様は、もはや言葉にもならない悲鳴を上げて部屋を飛び出していった。

静寂が戻った応接室で、セシル様が深くため息をついた。

「……相変わらず容赦ないな。少しは手加減というものを知らんのか」

「手加減? そんな中途半端なことをして、彼女がまた変な色気を出して戻ってきたら、それこそ世界の審美眼に対する裏切りですわ」

私はセシル様の隣に座り、彼の美しい指先をまじまじと眺めた。

「それより、セシル様。父様から連絡がありました。エドワード殿下の廃嫡がほぼ確定し、次の王位継承者として、あなたの名前が挙がっているそうですわよ」

「……何だと? 私はただの伯爵だぞ。王位など……」

「あら、セシル様。三行で説明しますわね」

「……またか。短く頼むぞ」

「一つ、現国王陛下はあなたの血筋と、その『誠実な美貌』を高く評価しておいでです」

「二つ、民衆は殿下のスキャンダルに飽き飽きし、新しい『目の保養』を求めています」

「三つ、そして何より……私が、あなたを王座に座らせたいと思っていますの。……最高に格好良いと思いません?」

セシル様は、私の真っ直ぐな視線に耐えかねたように顔を背けた。

「……貴様が横にいなければ、私はただの無愛想な男だ。王になどなれるはずがない」

「あら。私が横にいないなんて、そんな選択肢、私の辞書にはありませんわよ」

私は彼の耳元で、いたずらっぽく囁いた。

「覚悟してくださいませ、セシル様。あなたの美しさを世界中に知らしめるまで、私はあなたの傍を離れませんから」

セシル様の顔が、これまでで一番赤く染まった。

氷の伯爵が、ついに私の熱気に完全に溶かされた瞬間だった。
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