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「いいか、ユーミア。俺は三日留守にする。絶対に、何があっても、扉を開けるなよ」
アレクセイ様が出発したのは、ギルバート殿下が去った翌日の朝だった。
近隣の領主たちが集まる会議への出席だ。
議題はもちろん、私の作った『消えない光の石』について。
周辺諸国や商会からの問い合わせが殺到し、アレクセイ様が直接説明に行かねばならなくなったのだ。
「わかってますって。私は研究に忙しいので、誰が来ても居留守を使います」
「……その『研究』が一番不安なんだが」
アレクセイ様は馬上の人となり、何度も後ろを振り返りながら去っていった。
まるで初めてのお使いに出す親のような心配ぶりだ。
「さて! 鬼(保護者)の居ぬ間に洗濯……じゃなくて、実験よ!」
私は彼が見えなくなるや否や、研究所の扉をロックし、地下室へと駆け込んだ。
「殿下が『軍を動かす』とか言ってたし、防衛システムをアップデートしなきゃ。目標、四十八時間耐久レース! 寝てる暇はないわよ!」
私は栄養ドリンク(味はドブ川だが効果は絶大)を一本空け、設計図に向かった。
この時の私は、アドレナリンが出すぎて忘れていたのだ。
人間の体には、限界というものがあることを。
***
二日目の昼下がり。
ドンドンドン!!
激しいノックの音が、静まり返った研究所に響いた。
「……ちっ。集中してる時に誰よ」
私はゴーグルをずらし、不機嫌にモニター(外部カメラの映像)を覗き込んだ。
そこに映っていたのは、黒いローブを纏った数人の男たち。
胸には『魔法省』の紋章。そして手には、物々しい杖を持っている。
(魔法省? 国の魔導研究を管理する役人たちね。……嫌な予感しかしないわ)
私はマイクのスイッチを入れた。
「はい、こちらはベルンシュタイン研究所です。現在、セールス・宗教・元婚約者のお断りキャンペーン実施中です。お引き取りください」
『ふざけるな! 我々は王立魔法省の特別査察官だ!』
先頭の男が叫んだ。
『ユーミア・ベルンシュタイン! 貴殿に「禁忌魔法の使用」および「危険兵器の製造」の容疑が掛かっている! 直ちに扉を開け、研究所内の全データを提出せよ!』
(……なるほど。これが殿下の言っていた「手」ね)
私は冷めた目でモニターを見た。
権力を笠に着て、無理やり難癖をつけて研究成果を奪う。
いかにもあのナルシストが考えそうな浅知恵だ。
「容疑? 証拠はあるんですか?」
『貴様の存在そのものが証拠だ! 開けなければ、魔法攻撃により強制突入する!』
男たちが杖を構える。
詠唱が始まった。攻撃魔法を放つつもりだ。
普通ならパニックになるところだろう。
だが、徹夜明けでテンションがおかしくなっている私は、逆に楽しくなってきてしまった。
「ほう……? 私の『城』に喧嘩を売るとは、いい度胸ね」
私はコントロールパネルに手を置いた。
「アレクセイ様には『扉を開けるな』と言われたけど、『窓から撃ち返すな』とは言われてないわよね?」
スイッチ、オン。
ガガガガガ……!
研究所の屋根が開き、そこから巨大なパラボラアンテナのような装置が出現した。
『な、なんだあれは!?』
「食らいなさい! 『強制マナーモード・フィールド発生装置』!!」
ブォォォォォォン!!
目に見えない波動が、研究所を中心に展開される。
「『ファイア・ボ……』あれっ!?」
査察官の男が杖を振るが、火が出ない。
それどころか、杖の先端からポスッと煙が出ただけだ。
「な、魔法が発動しない!? どうなっているんだ!」
「ふふん。この領域内では、魔力構成式が強制的に『シャボン玉生成魔法』に書き換わるのよ!」
私が解説すると同時に、他の男たちの杖からも、プワワ~ンと大量のシャボン玉が飛び出した。
「うわっ、なんだこれ!?」
「私の最強攻撃魔法が、虹色の泡に!?」
「きれいだなぁ……じゃなくて! 攻撃だ! 物理で扉を破れ!」
男たちが体当たりを始める。
しかし、私の研究所の扉は『対戦車用強化合金』製だ。人間がタックルしたところで、肩を脱臼するのがオチである。
「ぐあああ! か、硬い!」
「痛い! 肩が外れた!」
モニター越しの喜劇を見ながら、私はケラケラと笑った。
「無駄無駄! さあ、次はお仕置きタイムよ!」
私は別のボタンを押した。
「スプリンクラー起動! 中身は『一週間落ちない蛍光インク』よ!」
プシューーーッ!!
研究所の外壁から、派手なピンク色の液体が噴射された。
「ぎゃああああ!?」
「目が、目がぁぁ!」
黒いローブがあっという間にショッキングピンクに染まる。
魔法省の威厳もへったくれもない。
「撤退! 撤退だぁぁ!」
「覚えてろよ、魔女めぇぇ!」
ピンク色の集団は、シャボン玉にまみれながら逃げ去っていった。
「……ふぅ。雑魚ね」
私は勝ち誇って椅子にもたれかかった。
「勝った……。私の平和と、研究データは守られた……」
達成感が胸を満たす。
それと同時に、張り詰めていた糸がプツリと切れた。
「……あれ?」
急に視界が歪む。
手足に力が入らない。
心臓が早鐘を打っている。
(あ、そういえば……丸二日、何も食べてないし、寝てない……)
魔力も使い果たした。
クマ次郎の調整、結界の張り直し、そして今の迎撃システム。
私の意識は、急速に闇へと沈んでいった。
最後に聞こえたのは、激しく扉が開く音と、聞き慣れた焦った声だった。
「ユーミア!!」
***
「……ん」
目を開けると、そこは見慣れない天井だった。
いや、見慣れた私の部屋の天井だ。
でも、景色が少し違う。
温かい。
何かに包まれているような感覚。
「気がついたか」
耳元で、安堵したような低い声が聞こえた。
視線を動かすと、すぐ目の前にアレクセイ様の顔があった。
整った顔立ちが、今はひどくやつれて、眉間に深い皺が刻まれている。
「……アレクセイ、さま?」
「……馬鹿野郎」
彼は私の頭を、ぐしゃりと撫でた。
手つきは乱暴だけど、震えているのがわかった。
「帰ってきたら、研究所の前がピンク色の地獄絵図になっていて……お前が床で倒れているのを見た時、俺の寿命が十年は縮んだぞ」
「あ……」
記憶が蘇る。
そうだ、魔法省を撃退して、それから……。
「すみません……また、ご迷惑を……」
体を起こそうとしたが、力が入らない。
アレクセイ様が優しく背中を支えてくれた。
「無理をするな。魔力欠乏と、極度の疲労だ。……三日も寝ずに作業していたそうだな」
「えっと……敵が来ると思って……」
「だからといって、お前一人が無茶をする必要はない」
彼はサイドテーブルから、湯気の立つカップを取り出した。
甘いホットミルクの香り。
「飲めるか?」
「……はい」
カップを受け取ろうとしたが、手が震えて持てない。
すると、アレクセイ様はため息をつき、自分でカップを持ったまま、私の口元に運んでくれた。
「えっ」
「いいから飲め。こぼすぞ」
まさかの「飲ませてあげる」体勢。
これはいわゆる、看病イベント?
私はカァッと顔が熱くなるのを感じながら、恐る恐る一口飲んだ。
温かい液体が、冷え切った体に染み渡る。
「……おいしい」
「そうか」
アレクセイ様は、少しだけ表情を緩めた。
「……ユーミア」
「はい」
「お前は強いな。魔法省の査察官を、一人で追い払うなんて」
「あはは……まあ、科学の勝利ですね」
「だが」
彼はカップを置き、私の両肩を掴んで、真剣な瞳で私を見つめた。
「俺をもっと頼れ」
「え?」
「お前を守ると言っただろう。俺がいない時でも、俺の部下がいる。助けを呼べばいい。一人で抱え込んで、倒れるまで戦うな」
彼の瞳には、怒りよりも、深い悲しみのような色が浮かんでいた。
「倒れているお前を見た時……俺は、怖かったんだ」
「アレクセイ様……」
胸が締め付けられる。
最強の騎士団長である彼に、「怖い」なんて言葉を言わせてしまった。
私は、自分の無茶が彼をどれだけ心配させたのかを痛感した。
「……ごめんなさい。次は、ちゃんと頼ります」
「約束だぞ」
彼は私の額に、コツンと自分のおでこを当てた。
「っ!?」
近すぎる。
呼吸が止まるかと思った。
「熱は下がったか……。まだ少し高いな」
彼は純粋に熱を測っているだけのようだが、私の熱は間違いなく、今の行動のせいで再上昇していた。
「あ、あの、アレクセイ様! 近いです!」
「動くな。脈も速い。まだ安静が必要だ」
「だから、それはあなたのせいで……!」
私が抗議しようとすると、不意に部屋の扉が開いた。
「団長ー! 例のピンク色の連中ですが、全員捕獲しまし……た……」
入ってきた部下の騎士が、おでこをくっつけている私たちを見て、石のように固まった。
「…………」
「…………」
「…………し、失礼しましたァァァ!!」
バタン!!!
扉が猛烈な勢いで閉まる。
「あ」
「……誤解されたな」
アレクセイ様はバツが悪そうに離れた。
耳が赤い。
「も、もう! 責任取ってくださいよ!」
「……善処する」
「そこは否定してください!」
こうして、私の「過労によるダウン」は、周囲に「団長との熱い愛の巣ごもり」という特大の誤解を生むことになったのだった。
しかし、この平穏(?)な時間の裏で、王都のギルバート殿下は、次なる一手――いや、最終手段に打って出ようとしていた。
それは、私という存在を社会的に抹殺する、最悪のシナリオだった。
アレクセイ様が出発したのは、ギルバート殿下が去った翌日の朝だった。
近隣の領主たちが集まる会議への出席だ。
議題はもちろん、私の作った『消えない光の石』について。
周辺諸国や商会からの問い合わせが殺到し、アレクセイ様が直接説明に行かねばならなくなったのだ。
「わかってますって。私は研究に忙しいので、誰が来ても居留守を使います」
「……その『研究』が一番不安なんだが」
アレクセイ様は馬上の人となり、何度も後ろを振り返りながら去っていった。
まるで初めてのお使いに出す親のような心配ぶりだ。
「さて! 鬼(保護者)の居ぬ間に洗濯……じゃなくて、実験よ!」
私は彼が見えなくなるや否や、研究所の扉をロックし、地下室へと駆け込んだ。
「殿下が『軍を動かす』とか言ってたし、防衛システムをアップデートしなきゃ。目標、四十八時間耐久レース! 寝てる暇はないわよ!」
私は栄養ドリンク(味はドブ川だが効果は絶大)を一本空け、設計図に向かった。
この時の私は、アドレナリンが出すぎて忘れていたのだ。
人間の体には、限界というものがあることを。
***
二日目の昼下がり。
ドンドンドン!!
激しいノックの音が、静まり返った研究所に響いた。
「……ちっ。集中してる時に誰よ」
私はゴーグルをずらし、不機嫌にモニター(外部カメラの映像)を覗き込んだ。
そこに映っていたのは、黒いローブを纏った数人の男たち。
胸には『魔法省』の紋章。そして手には、物々しい杖を持っている。
(魔法省? 国の魔導研究を管理する役人たちね。……嫌な予感しかしないわ)
私はマイクのスイッチを入れた。
「はい、こちらはベルンシュタイン研究所です。現在、セールス・宗教・元婚約者のお断りキャンペーン実施中です。お引き取りください」
『ふざけるな! 我々は王立魔法省の特別査察官だ!』
先頭の男が叫んだ。
『ユーミア・ベルンシュタイン! 貴殿に「禁忌魔法の使用」および「危険兵器の製造」の容疑が掛かっている! 直ちに扉を開け、研究所内の全データを提出せよ!』
(……なるほど。これが殿下の言っていた「手」ね)
私は冷めた目でモニターを見た。
権力を笠に着て、無理やり難癖をつけて研究成果を奪う。
いかにもあのナルシストが考えそうな浅知恵だ。
「容疑? 証拠はあるんですか?」
『貴様の存在そのものが証拠だ! 開けなければ、魔法攻撃により強制突入する!』
男たちが杖を構える。
詠唱が始まった。攻撃魔法を放つつもりだ。
普通ならパニックになるところだろう。
だが、徹夜明けでテンションがおかしくなっている私は、逆に楽しくなってきてしまった。
「ほう……? 私の『城』に喧嘩を売るとは、いい度胸ね」
私はコントロールパネルに手を置いた。
「アレクセイ様には『扉を開けるな』と言われたけど、『窓から撃ち返すな』とは言われてないわよね?」
スイッチ、オン。
ガガガガガ……!
研究所の屋根が開き、そこから巨大なパラボラアンテナのような装置が出現した。
『な、なんだあれは!?』
「食らいなさい! 『強制マナーモード・フィールド発生装置』!!」
ブォォォォォォン!!
目に見えない波動が、研究所を中心に展開される。
「『ファイア・ボ……』あれっ!?」
査察官の男が杖を振るが、火が出ない。
それどころか、杖の先端からポスッと煙が出ただけだ。
「な、魔法が発動しない!? どうなっているんだ!」
「ふふん。この領域内では、魔力構成式が強制的に『シャボン玉生成魔法』に書き換わるのよ!」
私が解説すると同時に、他の男たちの杖からも、プワワ~ンと大量のシャボン玉が飛び出した。
「うわっ、なんだこれ!?」
「私の最強攻撃魔法が、虹色の泡に!?」
「きれいだなぁ……じゃなくて! 攻撃だ! 物理で扉を破れ!」
男たちが体当たりを始める。
しかし、私の研究所の扉は『対戦車用強化合金』製だ。人間がタックルしたところで、肩を脱臼するのがオチである。
「ぐあああ! か、硬い!」
「痛い! 肩が外れた!」
モニター越しの喜劇を見ながら、私はケラケラと笑った。
「無駄無駄! さあ、次はお仕置きタイムよ!」
私は別のボタンを押した。
「スプリンクラー起動! 中身は『一週間落ちない蛍光インク』よ!」
プシューーーッ!!
研究所の外壁から、派手なピンク色の液体が噴射された。
「ぎゃああああ!?」
「目が、目がぁぁ!」
黒いローブがあっという間にショッキングピンクに染まる。
魔法省の威厳もへったくれもない。
「撤退! 撤退だぁぁ!」
「覚えてろよ、魔女めぇぇ!」
ピンク色の集団は、シャボン玉にまみれながら逃げ去っていった。
「……ふぅ。雑魚ね」
私は勝ち誇って椅子にもたれかかった。
「勝った……。私の平和と、研究データは守られた……」
達成感が胸を満たす。
それと同時に、張り詰めていた糸がプツリと切れた。
「……あれ?」
急に視界が歪む。
手足に力が入らない。
心臓が早鐘を打っている。
(あ、そういえば……丸二日、何も食べてないし、寝てない……)
魔力も使い果たした。
クマ次郎の調整、結界の張り直し、そして今の迎撃システム。
私の意識は、急速に闇へと沈んでいった。
最後に聞こえたのは、激しく扉が開く音と、聞き慣れた焦った声だった。
「ユーミア!!」
***
「……ん」
目を開けると、そこは見慣れない天井だった。
いや、見慣れた私の部屋の天井だ。
でも、景色が少し違う。
温かい。
何かに包まれているような感覚。
「気がついたか」
耳元で、安堵したような低い声が聞こえた。
視線を動かすと、すぐ目の前にアレクセイ様の顔があった。
整った顔立ちが、今はひどくやつれて、眉間に深い皺が刻まれている。
「……アレクセイ、さま?」
「……馬鹿野郎」
彼は私の頭を、ぐしゃりと撫でた。
手つきは乱暴だけど、震えているのがわかった。
「帰ってきたら、研究所の前がピンク色の地獄絵図になっていて……お前が床で倒れているのを見た時、俺の寿命が十年は縮んだぞ」
「あ……」
記憶が蘇る。
そうだ、魔法省を撃退して、それから……。
「すみません……また、ご迷惑を……」
体を起こそうとしたが、力が入らない。
アレクセイ様が優しく背中を支えてくれた。
「無理をするな。魔力欠乏と、極度の疲労だ。……三日も寝ずに作業していたそうだな」
「えっと……敵が来ると思って……」
「だからといって、お前一人が無茶をする必要はない」
彼はサイドテーブルから、湯気の立つカップを取り出した。
甘いホットミルクの香り。
「飲めるか?」
「……はい」
カップを受け取ろうとしたが、手が震えて持てない。
すると、アレクセイ様はため息をつき、自分でカップを持ったまま、私の口元に運んでくれた。
「えっ」
「いいから飲め。こぼすぞ」
まさかの「飲ませてあげる」体勢。
これはいわゆる、看病イベント?
私はカァッと顔が熱くなるのを感じながら、恐る恐る一口飲んだ。
温かい液体が、冷え切った体に染み渡る。
「……おいしい」
「そうか」
アレクセイ様は、少しだけ表情を緩めた。
「……ユーミア」
「はい」
「お前は強いな。魔法省の査察官を、一人で追い払うなんて」
「あはは……まあ、科学の勝利ですね」
「だが」
彼はカップを置き、私の両肩を掴んで、真剣な瞳で私を見つめた。
「俺をもっと頼れ」
「え?」
「お前を守ると言っただろう。俺がいない時でも、俺の部下がいる。助けを呼べばいい。一人で抱え込んで、倒れるまで戦うな」
彼の瞳には、怒りよりも、深い悲しみのような色が浮かんでいた。
「倒れているお前を見た時……俺は、怖かったんだ」
「アレクセイ様……」
胸が締め付けられる。
最強の騎士団長である彼に、「怖い」なんて言葉を言わせてしまった。
私は、自分の無茶が彼をどれだけ心配させたのかを痛感した。
「……ごめんなさい。次は、ちゃんと頼ります」
「約束だぞ」
彼は私の額に、コツンと自分のおでこを当てた。
「っ!?」
近すぎる。
呼吸が止まるかと思った。
「熱は下がったか……。まだ少し高いな」
彼は純粋に熱を測っているだけのようだが、私の熱は間違いなく、今の行動のせいで再上昇していた。
「あ、あの、アレクセイ様! 近いです!」
「動くな。脈も速い。まだ安静が必要だ」
「だから、それはあなたのせいで……!」
私が抗議しようとすると、不意に部屋の扉が開いた。
「団長ー! 例のピンク色の連中ですが、全員捕獲しまし……た……」
入ってきた部下の騎士が、おでこをくっつけている私たちを見て、石のように固まった。
「…………」
「…………」
「…………し、失礼しましたァァァ!!」
バタン!!!
扉が猛烈な勢いで閉まる。
「あ」
「……誤解されたな」
アレクセイ様はバツが悪そうに離れた。
耳が赤い。
「も、もう! 責任取ってくださいよ!」
「……善処する」
「そこは否定してください!」
こうして、私の「過労によるダウン」は、周囲に「団長との熱い愛の巣ごもり」という特大の誤解を生むことになったのだった。
しかし、この平穏(?)な時間の裏で、王都のギルバート殿下は、次なる一手――いや、最終手段に打って出ようとしていた。
それは、私という存在を社会的に抹殺する、最悪のシナリオだった。
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