断罪!婚約破棄され、念願の「肉食生活」を求めて辺境へ

ちゃっぴー

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ベルフェゴール領、年に一度の「大収穫祭」当日。

広場の中央には、私が設計した特大の回転串が設置され、そこにはベルフェゴール領が誇る黒鉄牛の丸焼きが、黄金色の脂を滴らせながら鎮座していた。
パチパチとはぜる薪の音。
空を覆い尽くさんばかりの芳醇な肉の香り。

「ガイ様、見てください! この照り! この輝き! 今日はベルフェゴール領の歴史に、新たな脂のページが刻まれますわ!」

「ああ、そうだな。……だがパール、お前、その巨大なフォークを持って仁王立ちするのはやめろ。領民が『肉の門番』だと思って怖がってるぞ」

ガイ様が苦笑しながら、私の肩を抱いた。
平和だ。
目の前には肉があり、隣には大好きな人がいる。
これ以上の幸せが、この世にあるかしら。

そう思った瞬間だった。

「――待て! その不浄な儀式を今すぐ中止せよ!!」

広場の入り口から、耳障りな甲高い声が響き渡った。
砂埃を上げて現れたのは、これまたやつれた白馬に跨ったエドワード王子と、槍を杖代わりにしてようやく立っているような、ボロボロの兵士たちの一団だった。

「あら。エドワード殿下、またいらしたの? 今日はあいにく、もやし料理の用意はありませんわよ」

「黙れ! パール、君を救いに来た! ……そして、その背後で君を操っている野獣公爵! 今日こそ年貢の納め時だぞ!」

エドワードは、震える手で剣を抜き放ち、私とガイ様を指差した。
……けれど、彼の目は、私の顔ではなく、私の後ろで回っている「牛の丸焼き」に釘付けになっている。

「……殿下。剣先が、お肉の方に吸い寄せられていますわよ」

「なっ、ななな何を言う! これは……これは、邪悪な魔力によって私の剣が引き寄せられているだけだ!」

「いいえ、それは単なる食欲ですわ」

私は溜息をつき、一歩前に出た。

「殿下、見てご覧なさい。あなたの後ろにいる兵士様たちの顔を」

エドワードが振り返ると、そこには、戦う意欲など微塵もなく、ただただ牛の丸焼きを見つめてヨダレを垂らすゾンビのような男たちが立ち尽くしていた。

「……隊長。あれ……あれ、食べられませんか?」

「バカ言え。俺たちは……救出作戦に……。ああ、でもあの脂身、絶対うまい……」

「殿下、もういいでしょう。俺たち……降伏して、あの肉を食べたいです……」

「貴様ら! 騎士の誇りはどうした!」

エドワードが叫ぶが、空腹に誇りは勝てない。
兵士たちは、ガシャリ、ガシャリと次々に武器を捨て、ふらふらと肉の香りに引き寄せられていく。

「おい、エドワード。お前、自分の足元を見てみろ」

ガイ様が、低く凄みのある声で言った。
エドワードが足元を見ると、そこには彼が馬から落とした「もやし入りの弁当箱」が転がっていた。

「……俺のパールは、お前の言うような『操り人形』じゃねえ。彼女は、自分の意志でこの肉を焼き、自分の意志で俺の隣にいるんだ」

ガイ様が私の腰に手を回し、力強く引き寄せた。

「お前みたいな、自分の空腹さえ認められない奴に、彼女を連れて行く資格はねえよ。……悪いが、この祭りに『もやし』の居場所はねえんだ。今すぐ帰れ」

「ぐ、ぬぬぬ……! そんな、そんな……! 私は、私はパールを愛して……!」

「愛しているなら、せめて彼女が焼いた肉を、美味いと言って食えるようになってから来い」

ガイ様の一言に、エドワードはガタガタと崩れ落ちた。

「……負けた。……肉の、圧倒的な熱量に……私は……」

エドワードは、地面に転がったもやしを虚ろな目で見つめ、そのまま意識を失った。

「……あらあら。殿下ったら、せっかくのメインディッシュを前にして気絶するなんて、もったいないですわね」

私は、焼き上がったばかりの肉の塊を切り分け、ガイ様に差し出した。

「ガイ様、邪魔者は消えましたわ。……さあ、最高の部位を召し上がれ」

「ああ。……いただきます、パール」

収穫祭の火は、さらに赤々と燃え上がる。
王都の迷走軍を「胃袋」で返り討ちにした私たちは、最高の笑顔で肉を頬張った。
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